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あの日見た流星  作者: カルバリン
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第10話


『……これを大事に持っててね…イリス』


きっと、イリスの為に……


「…っ!!お母さん!!!」


「おわ!?」


飛び起きたと同時に驚いた声が聞こえた。


「…ここは?」


周りを見ても知らない場所…


「…いきなり起き上がるからびっくりしたぞ。一応処置は済んでるから安静にしてればすぐに動けるように……って…あぁ、状況が分からんのか。ここはソルシエールの医務室で俺はザック、このソルシエールに配属された船医だ」


言われてみたら薬品の匂いがするし目の前の…ザックと名乗った男性も白衣を着ている。


「…イリスです、助けて頂いたみたいで…ありがとうございます」


「助かったのは俺達の…まぁそれより目が覚めたってのを報告しなきゃならんから暫くは安静にしてると良い、艦長が話を聞きたいらしいからな」


「分かりました……それより…私の友人達は…?」


「ん?ああ、あの子達ならフロイト技師と居ると思うぞ、後から連絡しておくよ」


「良かった…ありがとうございます」


そういって部屋からザックが出ていったのでイリスはベッドに横になった。


やっぱりあれは夢じゃない…か。


オストローデンが襲撃されてあのAFで戦ったのは間違いない…


「なんで今になってあのAFがあの場所にあったのかな…」


お母さんのAF…ファントム。お母さんが行方不明になってからはどこかで研究するために保管してるってお父さんから昔教えてもらった。

それから後はフロイトさんがあの時語っていたように軍の偉い人の指示で色々なパーツ等を勝手に使っていたという事だった。


今になって聞かされればそれはあんまりな話だと思うけど仕方ない事かもしれない、どのみち当時の私にはどうしようもない訳だし。


ベッドに横になりながら考えていると扉がノックされた。


「…失礼するよ」


入ってきたのは軍服を着た女の人とフロイトさんだった。


「イリス君、怪我の具合はどうだね??」


「はい、治療が良かったみたいで動かしてもあまり痛みも無いので…特には問題無さそうです」


「それは良かった!撃たれた後そのまま戦闘して意識を失った時は慌てたが…」


「フロイト技師、とりあえず自己紹介をしたいのだが??」


「あぁ、すまない艦長。…こちらはこのソルシエール級高速戦闘艦の艦長でジークリンデ大佐だ。イリス君や君の友人達を一応(・・)収容してくれたのだ礼を言っておくと良い」


「一応とは酷い言い種だなフロイト技師。私は軍人としてやるべき事を果たしたまでさ」


「…私は納得はしていないがね。戦争とは我々大人がやるべきであって…」


尚も続けようとするフロイトをジークリンデは鋭く睨む。


「フロイト技師、そこまでだ。私達は軍に所属している以上上の決定には従うしかないのだよ、それが如何に不服な命令でもね」


険悪な空気が場を支配する中、イリスは…


「…あ、あのぅ…お話の途中ですがジークリンデ艦長、で良いですか?色々とお聞きしたいのですけど…」


「あ、あぁすまないね。イリス君を放置して話す事では無かった、とりあえず私からイリス君に幾つか話があるんだが…」


さっきのフロイトさんとのやり取りを聞いていると嫌な予感しかしないけれど…


「君の友人達だけど…彼らが乗っていたのは統合軍が開発した最新型のアサルトフレームで、このソルシエールへと配備される予定でここオストローデンに運ばれて来ていたんだが…君の友人達がそれを勝手に起動、強奪したんだよ」


確かに見たこと無いAFだった…AF強奪はかなり重い罪になるって習ったけれど


「…上層部には私から進言して彼らの罪を軽くしてもらえる様にはなったが…罪を無くす事は出来ないんだ。それをすると法の意味が無いからね」


どうしよう…私のせいでアリア達が…


「あぁ、だが軍の上層部も今回の事情を省みて彼らの処遇に対しては一つの提案を示した」


「…どんな内容ですか」


「彼らを一時的にこのソルシエールで働かせるという形になったのさ」


曰くこのソルシエールはオストローデン襲撃でクルーが足りない。

レムレースを勝手に起動したとはいえ動かした上でAFを一機撃破した事に軍の上層部は注目、それを考慮した上層部はならば動かす事が出来るパイロットとして罪を償って貰う…と正式に命令が下った。


「彼らの処遇は決まったのだけど…問題はイリス君なんだよ」


「…私、ですか?」


「君に関しては何の罪も犯してないのだが私としてはこれから開始される任務にレムレース1機では心許ない。だがレムレースに今搭載されているAFは2機…君が乗っていたファントムが戦力として使えれば…と思ってね」


ジークリンデ艦長が言いたい事はつまり私にファントムで戦えって事だ…それに恐らくアリア達をこの艦で仕事をさせるのもそういう事なんだと思う。


「…分かりました、どのみち拒否は出来ないんでしょう?」


「…ふふ、そう怖い顔をしないでくれ。この件に関しては彼らが犯した罪を最大限軽くする為に必要な事なんだよ、その辺りを理解してほしい」


「………」


「すっかり嫌われたみたいだね。まぁ良い、後はフロイト技師に任せる」


そういってジークリンデは部屋から出ていった。


「すまない。彼女も悪い人間ではないんだ、あれでも随分食い下がって罪を軽くしてくれたらしいからな」


「いえ…気にしてませんから…それにわたしも助けて頂いたので」


「そう言って貰えると助かる。…さて、では本題に入ろう。私はファントムが何故起動したのかを調べたい、あの機体を動かした以上イリス君は起動キーを持っているのだろう?私に協力してもらえると助かるが…どうかね?」


起動キーなんて持ってないんだけど…


あ…もしかして!


「これですか?お母さんから昔貰ったペンダントなんですけど…」


首から下げていたペンダントを外して渡す。


「これは…ロケットにしては変な形だが…」


ペンダントの蓋を開けると中には写真が入っていて幼い頃のイリスを抱いたリースが写っていた。


「リース少尉…いやもう階級で呼ぶ意味はないか、リースさんの娘…というのは間違いないみたいだね」


その後も暫く調べていたフロイトが一つため息を吐く


「…起動キーはこれで間違いないだろう。珍しい仕様だがエントリー式じゃないとは…全くもって興味深い」


「フロイトさんは母とどういった関係なんですか??」


「む…そういえば話して無かったな。リースさんとは…『艦内各員に通達!所属不明機体接近中につきソルシエールは警戒体制へ移行!繰り返す…』…不味いぞ!レムレースの修理は終わってないのだというのに!」


また、戦闘に…?


「…イリス君、君は安静にしていなさい。このソルシエールは戦闘艦、そう簡単には落とせない」


「でも…」


「大丈夫だ、いいね?イリス君に何かあればダリウス中佐になんと言われるか…」


フロイトが出ていって閉まった扉を眺めるイリス


「大丈夫かな…」


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