戦場での財宝とは有能な上官と信頼できる伝説の武器である
初投稿です
戦争ものではありますが、ファンタジー色が強めになります。
ざわりと首筋の毛が逆立つ感覚、首筋に向けてフッと血の気が下がる感覚。
時折ヒュッと風切り音がする度に、死が近づくような感覚がする。
この世はまるで地獄だと…そんな表現を聞いたことなどいくらもあった。
だが、地獄と言うのは存外こんな所だろう。
隣では一言も発しなくなった戦友。
数分前に「戦場で弾丸は臆病なやつをめがけて飛んでくるんだ」とのたまい、前方の塹壕に援護に行った戦友は、小銃の弾丸ではなく、艦砲射撃の着弾による爆発によってこちらの塹壕に戻ってきた。一部だけだが。
塹壕から用心深く前を見る。
前を見てしまった事で、若干の後悔と、本当にため息が出た。
そこには、海岸に広がる青い海、白い砂浜-ソレを埋め尽くすように強襲揚陸艇から敵の連合軍兵士、それに付随して、戦車が砂を巻き上げ前進する様子が見えた。水平線より手前には、見えるだけでも十数隻の敵艦隊が見えた。
気持ちが折れそうにはなるが、なんとか狙いをつけて撃つ、撃ちながら思う、圧倒的に物量が違いすぎる。
「艦砲くるぞ!」
慌てて頭を下げて、塹壕に隠れ、弾を込めなおす。
風切り音がした。爆音が響き少し耳鳴りがする。
爆発で巻き上げられた土や石そんなものが鉄帽にあたりうるさいが、そんな事はどうでも良くなった。
続けざまに風切り音と爆発…
この塹壕が、敵艦砲の散布界に入っていると言う事実。
その事実だけで絶望感が襲ってくる。
あぁ、ついに俺もあいつらの所に…、
そう思った時だ。
ドゴンッと、臓腑に響く重い音とともに、敵兵がわめいているのが聞こえた。
再度塹壕から恐る恐る顔を出す。
一人の帝国兵が砂浜を超えてきた戦車を、掌底で大破横転させていた。
戦車の履帯は外れ、車体は大きく凹む、まるでもう興味が無いとばかりに、次へ、次へ、次へ
連合の敵さんも勇猛だ、小銃を構え、同士打ちも恐れず撃ちまくる。
あぁ、俺は生き残れる。まだ生きて国に帰れる。心底そう安堵した。
そこには、一万をゆうに超える敵兵を前に、塹壕にも入らず、身をさらけ出し、戦う一人の帝国軍人が居た。