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第六話 繰り返す夢

「・・・これで何回目だよ」

 ポツリと愚痴(ぐち)をこぼす。

 廃墟と化したビル群が視界に入る。

 俺の記憶が確かならこの夢はもう五回目だろうか。

 後、何度同じ夢を見ればいいのだろうか。

 繰り返す毎に細部は違っていた。前に見た夢であった物がなかったり、逆に前になかった物が今回はあったり、とまるでゲームのランダムアイテムのような感じだ。

「さて、どうするかな」

 この夢の結末は知っている。だからこそ、時間内にクリアしなければならない。

 そうでなければ終わるまでこの夢は続くだろう。

「今回はどうするの?」

 綾音は相変わらずだった。こいつも色々動いてくれれば助かるのだが、NPCのように指示がなければ、自ら動かずにただ俺に着いてくるだけだった。

「もう敵のパターンは掴んだ。綾音は援護してくれ。強行突破でさっさと目的地まで行こう。」

 最初は、おっかなびっくりといった感じで敵と称される人物が現れたらその度に排除していったがそれでは間に合わなかった。

 二回目は、武器が見つからず、敵からの攻撃に遭い、負傷してタイムアップ。

 三回目は、敵のパターンが解らずに強行突破したため、綾音が捕まり、身柄を拘束され、時間切れ。

 四回目は、綾音に指示を出して敵を引きつけてもらい、その隙に先に進んだが後少しというところで、お宝に手が届くという所で目が覚めてしまった。

  序盤は特に問題はない。問題があるとすれば後半、場面が変わった後の時だ。

 以前にも見たが自分の視野の右下にタイムリミットが表示され、カウントが終わると同時に目が覚める。これだけは共通していた。

だが場所がどこかの遺跡だったり、寂れた屋敷だったり、夢を見る度にバラバラだった。今回は廃墟と化したビル群だった。そのどこかに目的の物はある。

 最初が共通しているのは、所長達が用意した舞台だからだろう。

後半から俺の意識が強くなってそれがリンクして毎回変わっているのだと推測できる。おそらく、今まで色々なゲームをしてきたからだ。

 今回の装備はアーミーナイフにハンドガン一丁だけ。綾音はサブマシンガン一丁だった。

「俺が先行して敵をおびき出すから見つけ次第やっつけてくれ」

 そう伝えると、俺は一直線に走り出す。

 ビルの一角や路地から敵が続々と現れる。

「よし、今だ!綾音!」

 と、合図を送る。それに合わせて綾音はサブマシンガンを構え敵に向かって撃った。

「わっわっわっ、はふん!止まらないよ!?」

 パララララッと小気味良い音が響き渡り、周りの敵が斃れていく。

よし、これなら行ける、と思ったのも束の間、背中に衝撃が走り、俺は地面に(たお)れた。

 サブマシンガンの弾を撃ち尽くした綾音が駆け寄ってきた。

「お前なぁ、フレンドリーファイアなんてしてんじゃねえよ」

 息も絶え絶えで言ったが

「フレンドリーファイア?」

 と、小首を傾げて一言放つのだった。




「・・・今回もクリア出来なかったか」 

 もうなんで同じ夢を見ることになったのやら、解らなくなってきた。

俺の神経もそろそろ限界がきそうだった。何度も何度も同じ夢を繰り返し見て全く疲れが取れた気がせず、寝た気がしなかった。

 二度寝を決め込もうとするが、眠る前に綾音が起きて俺の部屋に来て起こすため、眠る事は出来なかった。

 俺は夢の報告を済ませた後、ため息を吐きつつ屋上へ向かった。

 思考がまとまらなくなってきたが、どうすればいいか考えながら煙草を吸う。

「はふん、今回も残念だったね。また頑張ろうよ」

「今回はお前のせいでクリア出来なかったんだが」

 俺は怒りを抑えつつ答えた。

 女の子に銃器を扱わせるなんて普通じゃありえないか。そんなのアニメやゲームの話だ。

「いつまで続くんだろうな」

「はふん!それは私がお宝を見つけて満足するまでだよ」

 胸を張って言う。

 ・・・・・・・・・・・。

 そうだった。言いだしっぺはこいつだったか。今思い出した。

 こいつが夢でお宝探しをしたいと言って言いだしたらこちらの言う事を聞かなかくて半ば無理やりといった感じで開始された。

「ところでお前、ゲームとかしたことあんの?」

 今回の失敗を踏まえると綾音の銃器の扱いが問題だった。

そこでふと疑問に思ったことを訊く。

「ん~、ポケ○ンとかマ○オくらいかなぁ。後はパズルゲームとか」

「ホラー系はやったことないのか?」

「はふん!そんなの怖くて出来ないし、グロいシーンがダメなの」

 なるほど、やったことないのか。煙草をふかしながらしばし考えて、

「よし、なら特訓するか」

 そういうゲームをする提案した。

「えええええええぇぇぇっ!?」

 朝から元気溌剌とした声が屋上に響いた。




 膳は急げということで所長に今回の反省点として綾音に銃器の扱いを教える為に午前はゲームをする許可をもらって娯楽室に向かい、ゲームを探す。

丁度、俺がハマっていたホラーゲームが出てきた。

「よし、まずはこれからやるか」

「はふん。ホントにやらなきゃダメ?」

 綾音が不安そうに訊いてきた。

「当たり前だ。このゲームはホラー要素薄いし、難易度も低めだから初心者向けで丁度いい。解らなきゃ、アドバイスしてやるし、一緒にプレイしてやる。」

 ホラーゲームに銃器は大抵出てくる。ゲームを通して銃器の扱い方を教えればそれで問題はないだろう。

 こうして銃器を扱いながら敵を倒していくゲームの特訓が始まった。


 綾音は操作に最初は苦労してモンスターの攻撃を食らっていたが俺がサポートしつつ、ムービー中は怖かったら目を(つむ)るよう伝え、終わったら教えてやった。

 数回、救助に間に合わず、ゲームオーバーになったが。

シナリオが進む度に扱える武器が増え、その度に扱い方を教える。

綾音はハンドガン・マシンガン・アサルトライフル・グレネードランチャーなどの使い方を覚えていった。最初は混戦になるとフレンドリーファイアもしていたが徐々に上手くなっていき、ヘッドショットを決めたり、足に撃って怯ませたり出来るようになっていった。

「ここから二手に分かれるから培った実力を見せてもらおう」

 俺は手際よく敵を倒して先に進み、合流ポイントに着いて相方を待った。

「その敵は攻撃範囲が広いから焼夷手榴弾か閃光手榴弾を投げてから滅多撃ちすればいい」

 敵の攻撃パターンや攻略法を教えながら何とか合流ポイントに着いた。

「次がラスボスステージだから気を抜くなよ」

「はふん!ラジャーであります」

 二人して協力しながらラスボスを倒し、エンディングを迎えることが出来た。

「やったらできるもんだろ」

「なんか達成感が凄いよ!他のもやりたい!」

 と、言って他のゲームを探す。今度は一人プレイの物でも良いだろうと思い、次のゲームを勧めた。

「これは一人プレイだが俺もやった事あるし、やってみるか?」

「はふん!二人プレイできるやつがいい」

 一蹴(いっしゅう)されてしまった。

「はふん、これなんてどうかな?」

 さっきやった続編のゲームを勧めてきた。

「あ~、俺まだこのゲームしたことないんだよな」

「じゃあ、丁度いいじゃん。やろう!」

 再びゲームをする事となった。

今度は俺も初めての敵に戸惑ったり、ムービー中のアクションに失敗してゲームオーバーになったりしながらも繰り返しプレイして主人公達の特殊能力を活かしてそのゲームも何とかクリアした。

「今日はこのくらいにしとこうか」

 そう声をかけて、食堂に行き、ご飯にした。




 午後からは、綾音の勉強を見て過ごす。

なーさんからもらったぬいぐるみは枕の横に置いてあった。

「はふん?」

 綾音が俺の視線に気づき、目線を追った。

「ぬいぐるみね。毎日抱いて寝てるの。」

「そうか。大事に使ってやれよ」

 俺は素っ気なく返した。




 夜、屋上に行くと所長が先にいた。軽くお辞儀をして側に行き、煙草に火を点けた。

「今日はどうだったかね?」

「え、まぁゲームで銃器の扱い方も解ったようですし、勉強の方も英語以外は割とサクサク進みましたよ」

「それはなにより、だ。それよりも・・・」

 所長はこちらの顔色を窺っていた。

「い~ちゃん、大丈夫?無理してない?無問題(モウマンタイ)?」

 クネクネしながら近寄って訊いてきた。

 正直、気色悪かった。

「・・・まぁ、何とか。ただ、今回の夢をクリアできたら少し休んでも良いですか?」

「ん?それは構わんよ」

「できれば夢のデータを送るのもなしでぐっすり眠りたいんですけど。」

「それもそうだねぇ。じゃあ、クリアできたらその日は休みでゆっくりしてくれていいよ。ただし、一応ヘルメットは着用して寝てねぇ」

 所長に許可をもらった。

 今日には何としてでもクリアしてやる。

 そう決意して、部屋へと向かった。

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