第三の目3
「って、なんで俺が捕まっとるんじゃ~!」
気が付くと俺がどこかの一室で後ろ手にロープで縛られ床に座らされていた。前には綾音がコンバットスーツを身にまとい、高らかに笑っていた。
「私のい~ちゃんが欲しかったらここまでたどり着く事ね。」
マイクに向かって話す。
誰がお前の物になったというのだ。
しかし、俺が捕まったままの姿を見るのは二回目か?一回目は、箒で飛んでいる所だったが。
という事は、あの二人もどこかにいるかもしれないということか。
やっくんの方に意識を持っていった。
「なんで俺が女の子に囲まれてんだよ・・・」
魔法使いや剣士・武闘家など様々なコスプレをした女の子達に囲まれていた。若干羨ましいところはあった。
「団長!指示をお願いします。このままでは、他の者に先に手柄を奪われてしまいます」
剣士の女性が指示を仰いでもらおうと進言した。
「そんな事を言われてもなぁ・・・。俺はこの手の物はやったことねえんだよ」
やっくんは困惑していた。確かに熱血系アニメが好きなやつにこの手は厳しいと思った。突撃して戦果を上げる物が好きだからな。
なーさんの方はどうだろうか?意識をそっちに集中する。
「なんで私が男たちと共に突撃なんですか~!?」
なーさんの方は屈強な男達に囲まれていた。迷彩服にアサルトライフルを装備していた。
「上官の命令は絶対だ。目標はタワー内に囚われた人物の救出。これを最優先とす」
一人がなーさんに説明していた。
「って言われても私はどっちかって言うと指揮するタイプなのよ~」
「大丈夫だ。お前なら出来るさ。俺たちがしっかりサポートして守ってやる。安心しろ」
「・・・そんなこと言われても~」
なーさんも困惑していた。
っていうか、普通逆じゃないのだろうか?夢の設定ミスったんじゃないだろうな?
しかし、俺が第三の目で見てるとして、この状態で何か出来る事があるのだろうか?
再び、自分に意識を戻すと綾音が俺の顔に落書きをしていた。
なんてことをしやがる。俺も抵抗しろよ。声を出せ!
「やっくん!なーさん!早く助けて~!」
マイクに向かって叫んだ。
よくやった俺!褒めてやりたい。これであの二人に何とかなるか?
二人に意識を向けると二人とも火が点いたのかやる気が満ち満ちていた。
「「先に手柄を立てればアイツをギャフンと言わせられる!」」
二人して俺の救出というよりも相手をギャフンと言わせる事に燃えているようだった。
俺が囚われているタワーを中心とするならば北側にやっくん。南側になーさんといった感じだった。
このまま進軍すればタワー前で衝突するだろう。どうするんだろうか?できれば協力してほしいところではあるが。
両軍、タワー前で相まみえる事となった。
「タワー南側、魔術師混合部隊展開しています」
「なんですって?こっちは重火器しかないのよ~。通用するかどうか・・・」
「全軍突撃して撃破せよ!魔術師討伐は勲章物だぞ」
「そんな無茶な!」
なーさんの叫びは周りの兵士達の鬨の声にかき消された。
「タワー北側、重火器を装備した兵士達が編隊を組んでこちらに向かってきています。どうされますか?」
「どうされますかって言われても、んなもん、完膚なきまでに叩き潰すまでよ」
やっくんも突撃の指示を出して自分も戦火へ飛び込んでいった。
重火器の音や何かが爆発する音などが響き渡る。
「衛生兵!衛生兵!早くコイツを退避させてやってくれ!」
「畜生!俺はまだ死ぬわけにはいかないんだぁ!」
「当たらなければ・・・ウボァー」
「くっ、遠距離攻撃を防ぐのは厳しいですね」
「お姉ちゃん!私を庇って・・・そんなやだよぅ」
「私のシンフォニック・アブソリュートをくらいなさい!」
両者ともに激戦を繰り広げ負傷者まで出ている。
このままでは共倒れもありうる。
綾音はこの様子をモニターで見物し、高笑いを決めていた。
「私のい~ちゃんを求めて争うがいい。全ては私の思いのまま」
何か危ない雰囲気がしていた。
「何してるの~!こんな作戦とも呼べる物じゃないことに付き合う必要なんてないじゃない~!」
なーさんが近くの兵士に話す。
「それでも、俺達は軍隊だ。上官を信頼し、指示に従うのは当たり前だろう。うおぉぉぉっ!!」
話しかけた兵士も突撃していく。
「上官が全て正しいとは限らないじゃない。上官だって人間だもの。間違った判断をする事もあるわ。何か他に方法はないか考えないと~」
なーさんは、襲撃を免れながらタワーの壁を調べていった。
「ここ、上手く偽装しているけど中に入れるわ~」
カモフラージュされた壁を見つけ、上官に報告する。
「タワー内部に侵入できる経路を発見しました。任務内容はタワー内の囚われた人物の救出が優先ですよね。このままではこちらの被害も甚大になると思われます。牽制しつつ、数人に内部を偵察させる方がよろしいかと進言致します」
「ふむ。・・・ならば、仲村軍曹、将官を指揮官とし、内部偵察の任務を与える。数人連れて救出に当たれ。残りの者は牽制しつつ北側の死守に当たれ」
こうして、なーさんはタワー内へと侵入していった。
「敵の攻撃が緩んだ?」
前線に出ていたやっくんは何か違和感を感じ取った。
「団長、危ない!!」
剣士がやっくんを突き飛ばし、庇った。
「うぐっ。」
太ももを銃弾が掠めていった。鮮血が滴り落ちていった。
「バカ野郎!自分の身ぐらい自分で守れるのに、なんで・・・」
「貴方が失えばこの隊は機能しなくなります。本来なら前線に出ることすらありえませんのに。どうかそれを解って下さい」
苦痛に歪みながらも剣士はやっくんに説いた。
「くそ、こんな時、あいつならどうするんだろうな・・・」
「どうも敵部隊がタワー内に侵入した模様です」
「何だって!くそっ、先手を取られたか。こちら側からも侵入出来る箇所はないか調べてくれ。おそらく敵は深追いはしてこないはず。こちらも深追いはせず、けが人は後ろに下がってヒーラーの怪我の治療に当たってくれ」
魔術師が何やら魔法陣を描き、詠唱してタワーを調べていく。
「あっ、ありましたよ。タワー内に入れる場所が」
「よくやった。ありがとう。この場を死守しながら数人突入してもらうが、俺が行く。サポート出来る者はいるか?」
数人手を上げた。
「よし、なら侵入経路を確保しつつ、他の人は敵がこちら側に来ないよう迎撃してくれ。危ないと思ったら誰かと代わって戦線を維持してくれ」
そう伝えるとやっくんもタワー内へと入っていった。
少しずつではあるが戦場は膠着状態になり、銃撃音なども少なくなっていった。
俺はというと、されるがままの状態が続き、顔には色んな落書きはもちろん、何故か上半身の肌が露わに晒されていた。
綾音はモニターを見て
「ふふっ、ネズミが入り込んだようね。懲らしめてあげないと」
なんで上から目線なんだ。
そして綾音は部屋から出て行った。
タワー内部にて二人はバッタリと出逢ってしまった。戦闘が始まる。
やっくんは先頭に立ち、なーさんへと向かっていった。他の者はフォローに回っている。
なーさんはすぐさま兵士達に指示を出し、部隊を展開していった。
兵士の一人をやっくんが倒し、そのままなーさんの所に行こうとするが、伏兵が現れて邪魔をする。
その隙を突いてなーさん自身が動いた。
やっくんに攻撃を仕掛けるが魔術師の魔法防御が邪魔をし、武闘家がやっくんの後ろから攻撃を仕掛けた。
が、その攻撃も兵士の銃撃により、失敗に終わる。
「なかなかやるじゃないか。なーさんよぉ」
「やっくんこそ~。良くあの襲撃を堪えたわね~」
二人とも膠着して笑っていた。
「お前のやりそうな事は解ってたからな!」
「あんたのやりそうな事は解ってたんだから~!」
二人の声が重なる。
なるほど、似た者同士、考えが解るというかかれこれ五~六年の付き合いだもんな。
お互い手の内は解りきったという感じか。
その時、上から声が谺した。
「私も混ぜろ~~~~~!」
二人の間に大剣を振りおろし、床に斬撃を与えると同時に周りに衝撃を与える。
「ちっ、なんだ!?」
「なんなの~!?」
二人は寸前に距離を取ったが二人の部隊は吹き飛ばされた。
「はふん!ここで真打の登場!なんてね」
ドヤ顔でポーズを決める綾音。なんでノリノリなんだよ。
「てめえがい~ちゃんを捕らえたボスって訳か」
「悪いけどい~ちゃんは返してもらうわね~」
三つ巴の戦いが始まった。
だが、戦いと呼ぶには相応しくなく、まるでダンスを舞うような展開だった。三人は攻撃を交えては避け、顔は充実感に溢れていた。
やがて空間がなくなりまるで宇宙にいるように周りは星達でライトアップされていく。
見ている俺もどこかこのままずっと続けばいいとさえ、思ってしまった。
だが、夢の終わりが近づいていた。
星の一つの光が輝き、三人は包まれていった。
そうして夢は終わったのだった。
目が覚める。相変わらずの天井が俺を迎える。
「・・・なんて夢だよ、ったく」
なんてぼやきつつ、ヘルメットを外す。部屋の外に出ると二人も丁度それぞれの部屋から出てきたのだった。
「夢見心地はどうだった?」
二人に訊いてみた。
「なかなか面白かった」
「なんか楽しかったよ~」
二人は満足気に返事をした。
俺の扱いは散々だったがまぁ、前みたいに雰囲気が戻ったのは良しとしよう。
二人はそれぞれ、夢の内容を飯塚・所長へと伝えた。
俺もその後、夢の内容を伝える。
その後、二人を玄関まで送っていった。その時、綾音がゆっくりこっちに来た。
「あ~、夢で戦った子だ~。可愛い~」
なーさんは両手を胸に当て、悶えていた。
「おはよう。お前って夢の中じゃヤンチャするんだな」
と声をかけた。
「おはよう。それは夢だからね。二人がい~ちゃんのお友達?」
「友達というか、腐れ縁みたいな感じだな」
とハハッと笑い返すやっくん。
「私、品行寺 綾音って言います。お二人のお見送りに来ました」
ペコっとお辞儀をして挨拶をした。
二人も自己紹介を軽く済ませて笑顔で手を振って別れた。
その後、二人はお互い見ず嫌いしていたアニメを見て飲み会で感想を語り合い、お互いの趣味の方向性を理解したのだった。
「ねぇ、い~ちゃん。見て欲しい物があるの」
と言って俺の手を引いて行く。
俺はふとここに来た時の夢がフラッシュバックした。
あの夢は、この子だった・・・?
まさかな、と頭を振った。
綾音の部屋に連れて行かれ、一冊のメモ帳を渡された。
「中を見ても良いのか?」
前に注意したのに自分が勝手に見るのも忍なかったので、一応確認を取った。
綾音は頷く。俺はメモ帳の中を覗いた。そこに書かれていたのは
タイトル ラズベリー
アナタに優しくされると甘くなって
アナタがほかの子に見とれると酸っぱくなって
アナタを求めると熟れはじめてきて
毎日アナタを考えるとドキドキ潤って
アナタを想う蜜が徐々に溜まって
でも・・・
まだ食べさせないよ
アナタには一番最高の
甘酸っぱい果汁たっぷり
ラズベリーみたいな恋心を・・・
と、書かれていた。何とも言えず可愛らしい感じがして笑みがこぼれた。
「はふん、おかしかったかな?」
と俺の様子を見て若干不安になったのか訊いてきた。
「あぁ、いや、随分と可愛らしい詩だと思っただけ。俺はこういうのも好きだけどな」
と素直な感想を言ってメモ帳を返した。綾音も満足したのか照れくさそうに笑っていた。
こうしてまた新たな一日が始まったのだった。
「いやぁ、何とかなるもんだな。」
私は正直ホッとした。今まで二人のシンクロは徐々に上手くなっていったが四人同時にシンクロするとは。
自分で誘っておきながら、若干の不安はあった。しかしながら、これが成功したということは少なくとも複数人が同じ夢を共有するということができたということだ。この成果は大きい。
「全く、所長は無理難題を押し付けるんですから。監視するこっちの身にもなって下さい。」
「すまん、すまん。代わりに今度ご馳走するから、ねぇ。」
おどけてみたが飯塚は呆れていた。
「じゃあ、とびっきりの美味しい物を期待しておきますね。」
と笑顔で返事したのだった。




