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第二十一話 妖怪ハンター爆誕

 暗闇で何も見えない。

 突然目の前にスポットライトが入り、タキシード姿の男性が立っていた。シルクハットを取り、深々とお辞儀をした。

「私は夢前案内人。あなたが見たい夢を案内する為に来ました。さぁ、あなたの本当に望む夢を私に教えて下さい。そしてあなたがどうするのか私に見届けさせて下さい」

「~~~~~~~」

「解りました。それでは、ご案内しましょう。着いて来て下さい」




「っていうのはどうかねぇ?」

「何アホな事を言ってるんですか」

 炎天下の中、屋上で所長と二人で煙草を吸っていた。

「いいアイデアだと思うんだけどねぇ」

「大体、夢を見たらいきなりその場所になるんだから、そんなの無理に決まってるじゃないですか」

 俺は馬鹿らしいと思いつつも、所長の話に付き合っていた。

「それじゃあ、現実で話を聞いて、共感して案内しているって事なのかねぇ」

「でも舞台は所長達が電気信号で送ってるんでしょ。案内もクソもあったもんじゃないですよ」

「夢がないねぇ。そういうロマンを求めるのも大事よ。無いモノを人は求めるものなんだ」

「・・・そういうもんですかね」

「という訳で、今からとある人物に逢って話を聞いてもらうよ」

「何がという訳なんですか」

 ぼやきつつ、所長の後を追った。




 会議室に入ると一人の女性が座っていた。20代前半だろうか?質素な服装に茶色のセミロングでメガネ姿という見た目をしていた。

 俺は対面に座った。

「そんじゃ、後は二人で話して決めてねぇ」

 何を決めろというのだろうか。所長はさっさと出て行ってしまった。

「あの、私。ここの清掃員をしている田村 眞深(まみ)って言います。い~ちゃんさんの噂は聞いています」

 一体、どんな噂なんだろうか?と少し不安になったがあだ名にさん付けで呼ばれるのはくすぐったかった。

「あの、い~ちゃんで結構ですので。それで、話というのは?」

「はい。実は、夢をよく見るんですが、何度か同じ夢を見る事がたまにあるんです」

 確かにそれなら俺もあるな。まぁ、ここに来てからは意図的に見せられたりもしたが。

「その夢で私は妖怪に斃される夢でその後、酷い目に遭って。このままじゃ精神がどうにかなりそうで、それでい~ちゃんになら何とかしてもらえるんじゃないかと思って、所長にお願いしたんです」

 なるほど、よほど怖い夢を見たんだな。このままだと、彼女も精神を病んで鬱になるかもしれない。俺に彼女を救える自信はないが勇気を振り絞って藁をも縋る気持ちで来てくれたんだろう。

「なので、お願いします。私と一緒に妖怪を退治して欲しいんです」

 彼女は頭を下げて懇願(こんがん)した。

「解りました。力になれるかは判りませんし、もしかしたら同じ夢を共有できるかも判りませんよ。それでもいいならお受けします」

「本当ですか!ありがとうございます!」

「お礼ならその妖怪を退治してからでいいですよ」

 もしかしたら所長は彼女のデータを取っている可能性もある。後で訊いてみるか。

「それより、眞深さん、夢を見た後に妖怪を退治したりするゲームしたりやアニメ見たりとかしなかったんですか?」

「家が厳しくてゲームもアニメもダメで勉強ばっかりの毎日で、服装もチェックされて、このような質素な服しかダメで、違う服を買っても見つかったら捨てられて、両親に反抗する形で髪を染めたんですけど。それも文句を言われて」

 なるほど、それでなんか違和感のある服装だったのね。

「それはストレスが溜まりますね。眞深さんは家を出たいと思ったことはないんですか?」

「それは思ってます。だからここでバイトしながらお金を貯めているんです。もう少しで貯まりそうなんですけど」

 自立心はあるのか。けど、自立する前にストレスで心が悲鳴を上げてるんだな、多分。

 だからせめて夢で鬱憤を晴らしたいってところかな。気持ちは解らんでもない。

 そして、夢の内容を詳しく教えてもらった。




 夜、屋上で煙草を吸う。所長が来た。俺は所長に訊いてみた。

「所長、あの子の夢のデータって、取ってるんですか?」

「んぁ?いいや、取ってないよぉ。彼女から話を聞いたのは昨日だし、昨日は違う夢を見たようだからねぇ」

 という事は、彼女がその夢を見るまで付き合う事になるのか。少し骨が折れそうな気がした。

 初日はシンクロするかを試した。シンクロすることはあったが夢は目的の夢ではなかった。その夢が見られたのは三日後の事だった。




「これがその夢なのか?」

 空は暗雲で包まれていて俺達は今、鬱蒼(うっそう)とした森の中にいた。

「そうです。そしてこれが私の形代です」

 と、形代を渡される。黒髪の日本人形だった。どこか綾音に似ている気がする。

「この形代が私の身代わりになってくれるのですが徐々に燃えていき、燃え尽きると形代となった巫女が亡くなり、私は何もできずに妖怪に酷い目に遭わされるんです」

 彼女は悲しげに語った。

 綾音もおそらく同じ夢を見ているのだろう。そして綾音に似ている人形。もしかしたら、その巫女とやらになっているのかもしれない。だとしたら、燃え尽きる前に何としてでもその禍神とやらを斃さなければ。例え、夢だろうが失うのはゴメンだ。

「なるほど、大体は聞いてた話と一緒のようだな」

 茂みから何かが飛び出してきた。餓鬼だった。大抵、序盤に出てくる敵だな、と思ったが油断してはいけない。

 もし、この夢がハードだったら油断するとボッコボコにされ、死ぬだろう。

 俺は小太刀を両手にそれぞれ構え、攻撃する。あっけなく(たお)れた。

「それでこの後、どうするんだ?」

禍神(まがかみ)と呼ばれる大妖怪がいるのですが、それを斃すのが目的なんです」

「解った。その大妖怪はどこに?」

「森を抜けて荒れ果てた大地にいるんです。とても大きくて怖くて」

「気をしっかり持て。そうじゃないと斃せるもんも斃せなくなるぞ」

「そ、そうですね」

 俺達は、森を進んでいく。今度は亡霊達が現れた。

 俺は、小太刀で攻撃するも全く効いていなかった。

「実体がないモノには物理は効かないんです。気を使うんです!」

 彼女は護符を取り出し、亡霊に投げつけ燃やしていく。

 気を使う・・・。俺は意識して小太刀に気を込める。青白く鈍い光を纏った。

「こうか!?」

 小太刀を振るう。剣筋が気の刃となって飛んでいき、亡霊を斃した。

「なるほどね。こういう事か」

 しかし、彼女は巫術(ふじゅつ)のようなモノが使えるのね。

「その力があればその大妖怪も斃せるんじゃないのか?」

「それが、全く効かなかったんです」

 ポツリと言った。おそらく、それは彼女が恐怖と捉えているからだろう。かつての俺がそうだったように。

「そうか。なら良い言葉を教えてやる。自分を変えるのは今、この時だ。そして想いは力になる。」

 俺が綾音に教えられた事、その言葉を彼女に送った。三十路になって年の離れた子に教えられるとは、と少し思ったが。

「解りました。頑張ります」

 人形を見ると足が燃え尽きていた。




 次の瞬間、俺達は荒れ果てた大地にいた。レム睡眠からノンレム睡眠に変わり、再びレム睡眠に入ったからだろう。

 巨大な咆哮(ほうこう)と共にそれはやってきた。

 五メートルはあろうかという大きさで鬼のようだった。

 その姿を見た瞬間、彼女が震えだした。おそらく、以前の夢を思い出したのだろう。

「おい、しっかりしろ!今回は俺もいる。援護はしてやる。けど、斃せるのは眞深さん、貴女自身なんだ!自分は変われると信じて、斃せると強く想い、願え!そしてその力を奴にぶつけるんだ!」

 俺は肩を揺さぶって説得する。彼女は何とか正気に戻った。

「はあぁぁっ!喰らえぇっ!」

 俺はありったけの気を込めた小太刀で禍神に立ち向かった。が、あまり効いていない。

 禍神がブレスを吐いた。真っ黒い息がこちらに向かってくる。

 俺は、小太刀を振って剣気で吹き飛ばす。

「見た通りだろ。俺じゃ、奴は斃せない。眞深さんにかかってるんだ」

 おそらく、禍神と呼ばれる妖怪はストレスの権化(ごんげ)だろう。だから、彼女はやられていたんだ。

 ちらりと人形の方を見た。もう腕が焼け落ち、胸まで燃えていた。

「私自身が変わる。・・・変わりたい」

 ポツリと彼女は言った。

「俺だって、もし、この形代が綾音なら絶対に守ってみせたいんだ!」

 俺は守りたいと強く想い、小太刀に込めた。小太刀は黄色に輝いた。

「これが俺の想いの強さだ。大丈夫、眞深さんにもできるよ」

 彼女はコクリと頷くと、意識を集中した。

「私は、変わるんだ。そして、アナタを斃して自由になる!」

 彼女は護符を数枚取り出し、想いを込めた。護符が煌々(こうこう)と輝く。

「時間がない、一発勝負だ。これで決めるぞ」

 俺達はありったけの力をやつにぶつけた。人形は顔まで燃えていた。

「斃れろぉぉぉっ!」

 彼女がありったけの声を出して叫ぶ。二つの閃光(せんこう)が禍神を貫いた。

 禍神と呼ばれるモノはゆっくりと斃れ、消え去った。暗雲も徐々に晴れてきた。

 しかし、人形は燃え尽きた。

「眞深さん、巫女さんがいるのはどこだ!?」

 慌てて問いただした。

「その先のお堂の中ですけど」

 俺は急いでそのお堂に向かった。

 お堂はこじんまりとしていた。息を切らしながらも中に入る。目に入ったのは綾音が倒れている姿だった。

「嘘・・・だろ?綾音?おい、綾音。起きろよ!頼れって言ってたじゃねえか」

 体を揺すぶったが反応はなかった。

「何でだよ。・・・やっと、やっとお前の、お前の事を、好きに、なれると、思ったのに」

 俺は泣いていた。涙が頬を伝い、綾音の顔に落ちた。

 その時、綾音は目をパチっと開き、

「い~ちゃん、本当に好きになってくれるの!?」

 いきなり抱きついてきた。

 ・・・コイツ、死んだふりをしていたのか。涙が引っ込んだ。

 俺はわなわなと怒りを(あらわ)にし、引き離して

「何死んだふりしてんだ、このバカ!」

 バシっと綾音の額にチョップをした

「はふん!痛い・・・。」

その様子を見ていた眞深さんは安心したかのように微笑んでいたのだった。




「・・・あ~、もう台無しだよ」

 俺はむくりと起き上がった。部屋の外に出て彼女が出てくるのを待った。

「良い夢だったか?」

「はい、なんかスッキリして生まれ変わったみたいです」

 と、笑った。

 その後、彼女にひとり暮らしのアドバイスをしてあげた。ついでにお薦めの妖怪退治のアニメなども伝えた。




 夢の報告を終えた後、いつものように屋上に煙草を吸いに行った。綾音が先に来ていた。

「はふん、い~ちゃんに告白されちゃった」

 頬を緩ませながら言ってきた。

「変な夢でも見てたんじゃねえの。俺は言ってねえ」

 とぼけて煙草に火を点けて、ニコチンを肺に入れるのだった。

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