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第十五話 憧れのファンタジーストーリー!?

「・・・あれ?」

 辺りを見回す。昨日見た夢と町並みが少し違うような・・・。俺は大ちゃん達を捜した。

 騎士の姿だから直ぐに見つかった。

「大ちゃん!」

 呼びかける

「良かった。見つかった」

 大ちゃんもどうやら俺を捜していた様だった。

「町並みが変わってたから、捜すついでに少し聞き込みもしたんだけど。一応、昨日の夢の続きっぽいね。この町の名前もリーゼルで、ギルドを覗いてみたらクエストはクリアしてたみたい。」

「そうか。まぁ、夢の細部が違うのはよくある事だからその辺は気にしなくてもいいと思うよ」

「解った」

「はふん!やっと見つかった!」

 上から声がした。綾音は空から降りてきた。ともあれ、パーティーは揃った訳だ。

「じゃあ、お城へ行ってみよう。丁度、招集を受けた後みたいだから」

 これまた都合のいい話だ。大ちゃん、よっぽど続きが見たかったんだな。かくいう、俺も気にはなっていたけど。

 俺達は城へと向かった。

 謁見(えっけん)の間に案内され、入ると大勢の人がいた。職業も戦士・武闘家・僧侶・魔法使いなど様々だった。みんなパーティーを組んでいるのだろう。

 周りの人達は俺たちの姿を見て嘲笑(あざわら)っていた。

「見ろよ。アイツのパーティー、奴隷がいるぞ」

「どれどれ、ホントだ。あんな役立たずなクラスなんかパーティーに入れて意味あんのかよ」

 笑いたきゃ、笑うがいいさ。俺は、特に気にすることなく胸を張って歩いて並んだ。

 王が玉座から立ち上がる。

「ようこそ、魔王討伐志願者達よ。我々は今窮地に陥っておる。そなたらの中には家族や友・かけがないのモノを失った者もいるだろう。その中に(たぎ)る想いを込めて魔王討伐の反攻作戦に参加して、憎き魔王を打ち倒してもらいたい。そしてこの世界に真の平和を取り戻してほしい」

 一斉に(とき)の声を上げる。そして各パーティーは勇んで城を後にした。

「んじゃ、俺たちも行くか」

 二人に声をかけて城を出た。

「情報によると、城の兵士達が周辺のモンスター討伐に出ているらしい。だから僕達はそのまま魔王の城まで行って討伐する」

 なるほど。途中のボスとかはもうすっとばして、直接魔王との決戦ね。

「んじゃ、いっちょ派手に行きますか。ってか魔王の城ってどこなん?」

「ここから北に行った所らしい。詳しい事は行ってみないと解らないけど」

「はふん、なんかワクワクするね」

 俺達は町を出て、北へ向かった。道中、兵士達がモンスターと戦っているのも見えた。

 森に入ると今度は、モンスターの死骸が転がっていた。他のパーティーが斃したのだろう。

「こりゃ、結構楽にたどり着けそうだな」

「そうだね。だといいけど」

「はふん、早く行かないと他のパーティーに魔王討伐されるかも」

 大ちゃんが自分で魔王を斃すと思っているなら、それは大丈夫だろう。

 森を抜けると荒れ果てた大地が俺達を迎えた。他のパーティーが巨大な人型モンスターと戦っていた。その奥に城が見えた。

「もしかしたら城の中にもあんな敵がいるかもしれない」

 大ちゃんは他のパーティーが戦っている巨人の動きをよく観察していた。

パーティー側が優勢に戦っていたのでこっちが援護する必要はなさそうだな。

 俺達は城に向かった。

『ようこそ、魔王城へ お土産あります』

 そんな立看板が門前に掲げられていた。馬鹿にしているんだろうか。

 城内へと入る。ここでも、数体のモンスターの死骸が転がっていた。

 突如、猿のようなモンスター達が襲いかかってきた。

「くっ」

 大ちゃんが俺を庇って盾で攻撃を防いだ。

「綾音ちゃん。雷系の魔法は使える?出来るならやって」

「はふん!任せて」

 小さい暗雲を呼び出して猿の上に誘導する。そこから雷が降り注いだ。猿は痺れて動けずにいた。その隙に大ちゃんと俺で斃していった。

 謁見の間にたどり着いた。中に入ると数パーティーが巨人族と戦っていた。

 俺達も戦いに参加する。戦力としては、五分五分だった。

 そこに魔王が現れ、玉座に座り、観戦していた。

 大ちゃんは巨人の攻撃を見切り、足首の靭帯(じんたい)を狙って剣で一閃(いっせん)した。巨人が倒れる。その隙に首に棍棒で意識を絶たせた。

 しかし、魔王が指をバチンと鳴らすと、悪魔系モンスター達が続々と現れる。

「お前達はなかなかやるがしょせんそこまでだ。その程度で終わりだ。そして我の世界統一は目前だ。そこでお前たちの世界の半分が欲しいという者はいるか?」

 これもお決まりのパターンだった。魔王が情けをかけ、こちら側に引き込もうとする展開。俺はすかさず魔王に取り入った。

「魔王様!私は奴隷の身分であります!そんな私にも世界の半分を頂けるのでしょうか?」

「もちろん、良いだろう。貴様にやろうではないか」

「そしてできれば闇の力で私に力を与えてくれませんか!?」

「なかなか強欲なやつよ。気に入った!我が力を分け与えてやろうではないか。そしてこやつらを始末せよ」

 魔王は杖を(かざ)し、何かを唱えた。

 闇の力が俺に降り注ぐ。体中から力が湧いてくる。

「ふ、ふっふっふ。ありがとうよ、魔王よ。望み通りこいつらを始末しますね」

 俺はニヤリとして棍棒を構える。

「はふん!い~ちゃん、私達を裏切るの!?」

 綾音の言葉にはあえて反応しない。

 大ちゃんも剣を構え、様子を窺っていた。

 悪魔型のモンスター達も()れ~、とはやし立てる。

 油断が出来た!俺はすぐさま(ひるがえ)り、次々と悪魔型モンスターをぶっ飛ばして(たお)す。

「貴様、我を裏切る気か!?」

「裏切る?何言ってるんですかぁ?最初から味方になったつもりはないんですけどぉ~。わざわざ、力を分け与えてもらっちゃって、あざ~っす!」

 俺は魔王をおちょくり、魔王を逆上させた。

「ならばキサマら全員、(ちり)も残さず消してくれよう!」

 こうして魔王との決戦の火蓋(ひぶた)を切った。

「大ちゃん、今の俺の力は闇の力だ。魔王に通じるか判らない。魔王の攻撃は防ぐから後は頼んだ」

「全く、大した役者だよ、い~ちゃん。危うく(だま)される所だった」

「すまん。こうでもしないと俺は強くなれそうになかったんでね」

「はふん、良かったよぅ」

 綾音は少し泣きそうだった。

「あぁもう、泣くな綾音!本番はこれからだ。ありったけの極上の魔法を頼む」

 綾音は詠唱し始める。魔法使いは詠唱中、無抵抗になる。そこで俺の出番だ。奴の力は闇。俺の今の力も闇。なら攻撃を防ぐくらいは出来る。

「こしゃくな」

 魔王は杖を再び翳し、杖から漆黒の闇の塊を放った。俺も真似して同じ物を放つ。力は拮抗していた。だが、じょじょに押され始めていた。

 ・・・まだか綾音。もう、だいぶキツイ。全身の筋肉が悲鳴を上げ始めている。

紅蓮(ぐれん)の炎よ、()の者を全て灰と化せ!プロミネンス・ドラグーン!」

 魔法陣から大型の龍が現れ、炎を吐いた。魔王が炎に包まれる。

「ぐうぅぅ!だが、この程度でワシを殺れると思うな!」

 魔王が杖をひと振りし、炎をなぎ払った。その隙を大ちゃんは見逃さなかった。

「喰らえ、秘剣技!極楽梅花!」

 大ちゃんの剣が光輝く。おそらく剣に自分のもてる全ての力を託したのだろう。

 切った所が光り輝いていく。乱舞は続き、終わったところで見事な光の梅の花の模様が浮かび上がっていた。

「最終秘奥義!衰運錯乱!」

 大ちゃんが一突きすると、光り輝いていた梅の花の花弁がはらりと散っていった。

「貴様の強さは間違った強さだ。滅びろ。」

 格好良く剣を鞘に収めた。魔王は跡形もなく、消え去っていた。

「はふん!やったね。い~ちゃん」

 綾音が抱きついてきた。俺はヘロヘロで受け止めるので精一杯だった。

 魔王が斃された今、俺の闇の力もなくなっていた。

「やったな。大ちゃん」

 となんとか腕を上げて拳を交えたのだった。

 城へ凱旋(がいせん)した。王から賛辞と褒美をもらう。

 町では祭りが開かれていて俺達は町の人達と共にはしゃぎ楽しんだのだった。




「・・・何とかなるもんだな」

 俺は起き上がり、部屋の外に出て大ちゃんが出てくのを待った。

「今度はハッピーエンドってね」

「あぁ、最高の夢をありがとう。い~ちゃん」

 そして朝から二人で笑いあった。




 その後、大ちゃんの話を聞いた他の職員達も見たい夢があるといって試したが俺はその人達と関わりがなかったせいなのか、その人が見たい夢の舞台は見られてもその人が現れる事はなかった。

 朝、屋上で煙草を吸う。所長も一緒だ。もう、屋上が俺と所長の社交場と言っても過言ではないのかもしれない。

「な~んで、上手くいかないのかねぇ」

「そりゃ、ほとんど関わったことない人達だからじゃないですかね」

「どゆ事~?」

 所長がおちゃらけて訊いてきた。

「共感ができてないから、じゃないですか。大ちゃんとは、この前のBBQでバイク談義の話で盛り上がってお酒が入ってたせいもあるかもしれませんが気が合って、その後一緒にツーリングもしましたし」

「なるほどねぇ、共感か」

「前の職場で教わったことなんですけど。大切なのは利用者に共感することだ。共感とは、相手の視線で見て、相手の言葉を聞いたり、相手が行動をするのを観察したりして物事を考え、相手の心を感じることだって」

「こりゃ、オンラインゲームみたいに見知らぬ人との夢の共感は難しいということかぁ」

 所長は少しげんなりしていたが、フッと顔を上げると

「じゃあ、なんで娘と同じ夢を見られたんだろうねぇ」

 ニンマリとして訊いてきた。

「別にそんなのどうでもいいじゃないですか」

 俺は顔を逸らし、煙草を吹かすのだった。

「しっかし、このままじゃ夢先案内人は失格だねぇ」

「しょうがないでしょ。まともに話をした事ない人達だったんですし、どっちかというと人見知りするタイプだからそういうの苦手なんですよ。相手から話してくれて答えるのは良いですけど。」

「こうなったら、い~ちゃんと仲良くなりましょう会でも開こうかねぇ」

「絶対に止めて下さいね!」

 俺は念を押して拒否したのだった。

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