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第十三話 い~ちゃんを知りたい

「はふん。やっぱり好きか聞いたのまずかったかなぁ~?」

 私はい~ちゃんに超えてはいけない一線を踏み込んでしまったのかな・・・。

 ぬいぐるみを抱え、少し後悔していました。

 でも、聞かなきゃ解らないし、い~ちゃんが私のことをどう思っているのか気になるし。

 い~ちゃんはどんな人がタイプなんだろう?

 悶々としていました。

 恋愛って何なんだろう?そんな疑問が湧いてきました。

「はふん、考えても仕方ないし訊いてみよう」

 思い立ったが吉日、早速い~ちゃんに恋愛について訊いてみました。

 返ってきた答えは恋愛ゲームをしてみろとゲームを勧められた。

 やってみました。イケメンらしき人達がとろけるような声で主人公を口説いたりしていました。

 クリアしましたが恋愛が解る事はなくてただ、一つの物語を読んでいるような感じでした。

「はふん。ゲームじゃ解んないよう」

 ならば次はどうするか考えました。

「お父さんに訊いてみよう」

 早速父の元に行きました。

「ん~、こればっかりは何とも言えないねぇ、母さんと知り合ったのも学生の時だったし。私が一目惚れして、なんやかんやあって付き合って結婚したからねぇ」

 学生。私は中学・高校と学生生活をしたことがありません。小学校では誰かを好きになる前に事故に遭ってしまいました。なら、どうしよう。

「はふん!」

 閃きました。私はお父さんに学生生活がしてみたいので夢の舞台を学園にして欲しいと頼み込みました。

「わかったわかった。それも経験になるだろう」

 OKをもらえました。後は、い~ちゃんだ。

 私は彼を捜しました。屋上にいて、煙草を吸いながらどこか遠い目をしていました。

「い~ちゃん。ゲームじゃ全然分かんなかったよぅ」

 苦情を言いました。彼は少し困ったように頭を掻いていました。

「はふん!だから夢で恋愛している所を見せて!」

 頼み込むと彼は、呆れた顔をしながらも渋々OKしてくれました。

 これで準備が整った。

 い~ちゃんの好みを知ることもできるし、恋愛についてもわかるかもしれない。そして学生生活というものを体験出来る。

 その日の夜、私は少しドキドキしながらぬいぐるみを抱いて夢の世界に旅立ったのでした。



 教室の一室で今は休憩時間でした。早速、い~ちゃんを捜す。いた。どうやら机にうつ伏せで寝ているようでした。

 あ、起きた。私は彼のもとへ行きました。

 彼はハンカチを取り出して慌てて机を拭いていました。

「い~ちゃん、涎垂らして寝てたの~?」

 彼はキョロキョロと辺りを見回していました。

「はふん、顔にも涎の後が付いてるよ」

 すぐにハンカチを取り出して拭いてあげようと思ったのだけど止められてしまった。

 彼は直ぐに自分で拭いていました。

「相変わらずお似合いのお二人だねぇ」

 一人の女生徒が話しかけてきました。

「よぉ、紗妃。お前も相変わらず可愛いな」

 え?ナンパ?と思ったら彼はぶん殴られ、吹っ飛んでいきました。

 紗妃と呼ばれた彼女は少し赤面しながら

「あんたにそんなこと言われても嬉しくないんだよ」

 と言って自分の席に戻りました。チャイムが鳴ったので私も自分の席に座りました。

 授業はどこか懐かしかったけど小学校みたいにワイワイといった感じではなく、みんな落ち着いて 先生の話を聞いて黒板に書かれた文字をノートに写していました。

 私はそんな経験はないのでひょっとしたら今回は彼の意識が強いのかな?と思いました。

 もしかしたらい~ちゃんの学生時代の思い出の一部かな。と想像してしまいました。

 休憩時間になると彼はすぐさま教室を出て行った。後を着けてみる事にしました。

 保健室に入ったかと思ったら今度は中庭に向かっていました。

 私は木の後ろに隠れながら様子を見ました。

 ベンチに腰掛けている女生徒に声をかけていました。

 何を話しているのか聞こえなかったけど何かをやり始めました。

 その後、授業をまた受け、お昼休みの時間になったので彼に訊いてみました。

「い~ちゃん、さっきの休憩時間どこに行っていたの?」

「どうでもいいだろ。そんなの」

 素っ気なく返されて彼は出て行きました。また後をつけました。

 前に声をかけていた女生徒と会っていました。そして再び、その人と一緒に何かをやり始めていました。

 放課後もその人と会っていました。そして次第に顔が近づいていました。

 私は何とも言えない気持ちになり、慌てて彼の近くに行きました。

「あ、あれ?い~ちゃんこんなところで何してるの?」

 彼は慌てていました。彼女に少し席を外すことを伝え、私の腕を掴み引っ張っていきました。

「はふん、ちょっとどういう事なの?」

「あのなぁ、お前が恋愛を知りたいって言ったんだろ。だから俺がこうして愛美先輩と付き合うところを見れば恋愛がどういうものか解るだろ」

 私は彼の言っていることがサッパリでした。私と恋愛体験をするんじゃないの?ひょっとして言い方間違えた?

 そんな事を考えていると

「わかったら、邪魔しないでくれ」

 私を置き去りにして彼女の元へ行ったのでした。

 その後もデートをしたりして二人とも楽しそうにしていました。彼女みたいなのがタイプなのかな。おっとりとして母性が溢れていて、胸だって大きい。

 私は自分の胸に手を当てて比べて見ました。勝ち目はどこにもありませんでした。

「はふん。いいもん、まだ未来に希望があるもん。」

 恋愛以前の問題に(つまづ)きそうでした。

 しかし、彼がどんどん彼女と親密になるほど胸が締め付けられるようでした。

「はふん、お願いだよぅ。くっつかないで~。」

 と、願いました。想いが通じたのかその願いが叶ったのか彼はどうやら振られたようでがっくりと膝をついていました。

 私はホッと息を吐いて彼の元へ行きました。

「やっぱり、い~ちゃんには私がいないとね」

 声をかけて私の想いを伝えました。

「はふん、私はい~ちゃんが大好きだよ」

 こうして夢は終わったのでした。




 二回目の夢は、登場人物が一緒でも性格が全然違っていました。彼はやる気が起きなかったのか大人しくなっていました。私は純粋に楽しく学生生活を送ることが出来ました。性格は変わったけど紗妃ちゃんと友達になれた気がしました。

数日後、彼はやっくんとな~さんを加えて夢を見ると提案してきました。それはそれで楽しそうだったので夢を見るのが待ち遠しかったです。




 やっくんは手当たり次第、口説いては振られていました。

 な~さんはまるで相手の心を見透かしたように相手によって言葉巧みに相手の心を掴んでいました。でもなんで相手が女生徒ばっかりなんだろ。

 い~ちゃんに

「綾音、な~さんの真似だけはするなよ」

 と、何故か注意されました。




 翌朝、二人を見送った後、い~ちゃんが誰かに声をかけられていました。どうやらバイクでどこかに行くようでした。

 私は慌ててお父さんの所に行きました。

「はふん、お父さん、バイクのヘルメットってある?」

「あるよぉ。昔ハーレーに乗っていてね。綾音が目覚めてからいつか一緒にツーリングに行こうと思って買っておいたんだ」

 ヘルメット出してきて渡してくれた。被ってみるとぴったりでした。

「しかし、バイクのヘルメットなんかどうする……」

 お父さんの言葉を最後まで聞かずに私は駆け出しました。

 駐輪所に彼はいました。バイクを撫でていました。バイクの事が好きなんだろうな。と思いました。

「はふん!私も一緒に行く~」

 何とか間に合いました。ヘルメットは?と聞かれたので差し出しました。何か少し驚いていました。

 彼は大ちゃん?って人にも一緒でもいいかと聞いてくれました。OKでした。

 私はバイクの乗り方の説明を受けてその通りにしました。加速する時に体が持っていかれる感覚になりましたが不思議と怖くはありませんでした。

 走っている最中の会話はほとんど意味が解らず、質問ばかりしていましたが大ちゃんが丁寧に教えてくれました。

 道の駅に着くとバイクを降りてい~ちゃんにヘルメットを渡しました。大ちゃんがこんにゃくを買ってきてくれました。醤油味でとても美味しかったです。

 桜が綺麗という話を聞いてい~ちゃんに写真を見せてもらいました、ピンク色の桜に水色のバイクがマッチしていました。

 その後は、古民家カフェという所に行きました。

 お昼ごはん代はい~ちゃんが払ってくれました。

 い~ちゃんは自分の好きな物を頼んだようでパクパク食べていました。

 デザートを頼んだ時に

「い~ちゃん、綾音ちゃん。プリンにスプーンを突き刺してみて。」

 大ちゃんが言ったので突き刺してみました。

「すげえ!」

「はふん!すご~い」

 二人して驚きました。プリンにスプーンが突き刺さったまま立っていたのです。

 まるでスプーンに根っこが生えたかのように立派に立っていました。

 その後、二人の話を主に聞いているだけで少し退屈していたけど、ふと大ちゃんの方を見ると目が合いました。彼はウインクをしました。何かあるのでしょうか?




 帰ろうと準備をしていた時に大ちゃんが寄る所があるからと別行動になりました。

 ひょっとしてさっきのウインクは気を使ってくれたのかな?

 帰りは二人で会話をしながら研究所へと向かいました。

 素っ気ない態度だけど私のことを心配してくれました。

 恋愛の事はまだピンと来なかったけど、デートは理解できました。二人きりでどこかに行くならどこでもデートになるんだ。

 その事をい~ちゃんに伝えるも、彼はデートとは言いませんでした。

 けど、この居心地の良さは立派なデートだと思うもん。それにい~ちゃんのことが少し解った気がしました。

 そう思うと嬉しくなって手に力が入り、い~ちゃんをぎゅっと抱きしめたのでした。




 その後、研究所に着くとお礼を言ってすぐに自分の部屋に戻りました。

 今の気持ちを詩にしたくてメモ帳を取り出し、書いていきました。


 タイトル 大好きな


大好きな唄を歌ったら

あなたのココロに届くかな?

大好きなことをしてる

あなたが輝いてみえる

大好きな物を食べてる

あなたが嬉しそうで

大好きなこの気持ちは

いつまでも変わることはなく

大好きなあなたに

わたしの想いは届くのかな?

大好きなあなたは

わたしのドキドキに気づいたかな?

大好きなあなたを

ずっと守ってあげたい

大好きなあなたと

ずっと一緒にいたいな

大好きなあなたへ



 私は書き終えるとメモ帳をパタンと閉じて部屋を出たのでした。

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