第十二話 綾音に恋愛レッスン!?
「んぁ、寝てた・・・」
俺は机にうつ伏せで寝ていた。起き上がって机を見る。涎の後があった。
これは恥ずかしい。
ハンカチを取り出して机の上の涎を拭いた。
「い~ちゃん、涎垂らして寝てたの~」
綾音が声をかけてきた。あたりを見回すとどうやらどこかの学園の教室だった。
「はふん。顔にも涎の後が付いてるよ」
と、ハンカチを取り出して拭こうとしていた。
「恥ずかしいから止めろ」
俺は綾音の好意を阻止し、自分で拭いた。
「相変わらず、お似合いの二人だねぇ」
一人の女生徒が茶々を入れてきた。
・馬鹿にする。
・褒める。
・無視する
の三択が表示された。なんだこれ?とりあえず褒めておこうか。
「よお、紗妃。お前も相変わらず可愛いな」
そう言うといきなりぶん殴られた。何でそうなる。
「あんたにそういう事を言われても嬉しくないんだよ」
どうやら嫌われているのだろうか?
チャイムが鳴った。次の授業が始まる。
そもそもどうしてこうなった?俺は考えていた。確か、綾音が恋愛について教えて欲しいみたいな事を言っていたのでとりあえず恋愛ゲームをさせたのがきっかけだったか。
俺は朧気な記憶を頼りに思い出そうとしていた。
そして、実際の恋愛はどうなのかって話になって、それで夢で体験する事になったんだったっけ。
そうだ。そうだよ。今思い出した。俺は、この夢を通して彼女を作って綾音に認めてもらうんだ。・・・何か違う気がするがまぁいい。
という訳で俺の学園生活が始まった。
俺は年上のお姉さんで癒してくれるタイプがどちらかといえば好みだ。その条件で絞ってアタックしていく。
定番の保険医の先生・・・気怠い雰囲気を纏わせていた。ダメ!次。
おっとりした感じの上級生・・・いた。俺は狙いを定めてその子に話しかける。
「先輩、何してるんですか?」
気さくに話しかけた。
「えぇっと・・・貴方は?」
「あっ、俺1年の森って言います。たまたま目に入って何してるのかな?って思って声かけただけです」
嘘である。大抵は相手が気になったから声をかけただけで理由なんて探せば何とでもなるものだ。
「私は3年の氷月 愛美 と言います。ぬいぐるみ作りが好きで時間があるとこうやって作ってるんです」
「へぇ~、編みぐるみってやつですか?」
「そうですよ。貴方もやってみます?」
はい、ルート来た。これで俺も編みぐるみをして親密度を上げれば良い訳だ。
「興味はあるけどやり方知らないんで教えてください」
「良いですよ。何か作りたい物がありますか?」
「猫が好きなんで猫の編みぐるみを教えてください」
こうして、俺は先輩と過ごす日々が始まった。先輩は横に並び優しく教えてくれる。時には顔と顔が近い事もあった。もちろん、故意にやっていた。恋愛にはそういう刺激が必要なのである。
授業と授業の間の休憩時間や昼休みなど、綾音や紗妃が絡んできたが適当にあしらい、放課後は先輩と編みぐるみに勤しんだ。これで先輩ルートに入る。恋愛ゲームのお約束だな。
ただ、誤算だったのは放課後だろうと綾音が現れては邪魔をしていた。
お前は一体何がしたいんだ。恋愛を学びたいんじゃないのかよ。
しかし、こんな事でめげてはいけない。しっかりと先輩とのフラグを立てていく。
休みの日にはデートで水族館に行ったり、食事をしたり。先輩も徐々に打ち解けてきて笑顔を見せることが増えた。正直、可愛い。夢なのに本気で惚れそうだった。
しばらくして、上手く猫の編みぐるみができた。最初は下手だったが何度もやり直して作り上げたのだった。それとは内緒でもう一つ家で作っていた編みぐるみを先輩に渡す。
そして今日は先輩の誕生日だ。イベントフラグビンビンである。
「俺、愛美先輩に内緒で作ってたんですよ。今日、誕生日ですよね。良かったら受け取ってください」
「わぁ、ありがとうございます。すごく嬉しいです」
俺の頭を優しく撫でてくれた。あぁ、癒される。こういうのだよ。俺が求めていたのは。
いかんいかん。ここで気を緩めてはいけない。
「愛美先輩、大事な話があるんです」
真剣な表情で先輩の目を見て話す。
「なんですか?」
にこやかな表情で訊いてきた。
「俺、愛美先輩の事が本気で好きなんです。付き合って下さい。お願いします」
「ごめんなさい。私、お付き合いしている人がいるんです」
「なん・・・ですと」
え?今までのフラグはなんだったの?彼氏いるのにデートしてたのはなんだったの?
全部俺の勘違いってオチ?
俺は盛大に振られたのだった。
「やっぱり、い~ちゃんには私がいないとね」
綾音が姿を現した。
「はふん、私はい~ちゃんが大好きだよ」
ストーリー カレス
挿絵 募集中
アニメ化 希望
「ってなんでエンディングに入ってんだ~!」
その言葉を叫ぶと同時に目が覚めた。
大丈夫。まだ一回失敗しただけだ。次にやれば問題ない。
俺はこの経験を活かし、次の夢に託した。
「ってなんで性格が変わってるんじゃ~!」
教室内に響き渡る。生徒達がざわついていた。
紗妃はおしとやかになっていて、保険医はクールに。
癒し系の先輩はやさぐれていた。
普通性格変わるとかないだろ?そんなゲームやアニメがあったか?
俺の記憶にはなかった。想像すらしていなかった。固定観念が邪魔をしていたのか。
それともこれは綾音の仕業か?
またしても、攻略失敗となった。
俺はやっくん達と飲み会でその事を話した。盛大に笑われた。
「なっさけねえな。そんなの俺が手本を見せてやるよ」
と豪語し、なーさんは
「私にかかればそんなの朝飯前よ~」
二人揃って自信満々だった。だったら見せてもらおうじゃないか。
という訳で所長に許可をもらい、再び四人で同じ夢を見る事となった。
「うっそだろ!俺、お前のためにここまで尽くしてきたのに何でだ~!」
やっくんは玉砕したのだった。
俺は爆笑した。豪語しておいてすぐに振られるなんて。
な~さんは、紗妃に
「そんな事言っても本当は淋しかったんでしょう~。大丈夫、私が受け止めてあげるから貴女の本当の声を聞かせて~」
と、早々に紗妃を落としていた。その後も保険医、先輩と次々と落としていき、学校では、落とせない女はいないとさえ囁かれていた。
うん、凄いんだけど。違うんだ。アレは参考にならない。
「綾音。な~さんの真似だけはするなよ」
そっちの道に走らないよう注意した。
結局、な~さんの一人勝ちだった。
「あ~、楽しかったね~。学園生活なんて何年振りだろ~」
「俺はもう懲り懲りだよ。二度と見たくねえわ」
「俺は今回、客観的に見られて面白かったけどな」
「はふん。な~さん、すごいです」
それぞれの感想だった。夢の報告を終え、俺と綾音は二人を見送った。
「あっ、い~ちゃん、今日これから暇?」
声をかけられた。大ちゃんだった。
「予定ないけどなんかあるの?」
「いや、暇だったらツーリングでも一緒にどう?って思って。」
「いいよ。用意してくる」
「じゃあ入口で待ってる」
「了解」
と言って部屋に戻り、ツーリングの準備をした。駐輪場に行き、バイクのエンジンをかける。その時、綾音がヘルメットを持って走ってこっちにやってきた。
「はふん!私も一緒に行く~」
「え?お前も一緒に来るの?そのヘルメットは?」
聞き返すと
ジャーンとヘルメットを差し出した。おいおい、インカムまで付いてる。
「どうしたんだ?これ」
「お父さんが私のヘルメット買ってくれてたの。いつか一緒にツーリングしたいって」
「所長もバイクに乗ってたんかい」
「うん、ハーレー?ってのに乗ってたって言ってた」
あ~、確かにバイクに乗るとしたらアメリカンが似合いそうだな。と想像してしまった。
とりあえず入口まで行き、大ちゃんに聞いてみることにした。大ちゃんはGSX-R1000に跨っていた。返事はオッケーだった。
三人でインカムを繋ぐ。
バイクに跨り、綾音に後部座席に乗って片手を股下のベルトを掴んで、もう片方を俺のお腹で支えるよう伝えた。
とりあえず、こんにゃくを食べに行こうという事で道の駅に向かった。
流石、大型。発進でも置いていかれる。しかし、いい音させるなぁ。
いつも以上に運転に気を遣い、インカムで話をしながら走る。もちろん、ピースサインもできる余裕がある時はしっかりとやった。
「あざ~っす♪・・・大ちゃんはヤエーはしないん?」
「基本的にはしないよ。されたら返すけど」
「はふん。ヤエーって何?」
「対向のライダーに手を振ることだよ」
「俺、返答あると嬉しくてやっちゃうんだよ。返答あるとあざ~っすって言っちゃう」
「良いなぁ。楽しそう」
「綾音ちゃんも対向のバイク来たら見てみるといいよ。人によって色んな返答あるから」
「そうそう。両手上げたりとか怖くないんかな?って思うけど。後、一人の時とか歌ったりしません?」
「たまにするね」
などライダーあるある話で盛り上がりながら目的地へと向かった。
道の駅に到着すると綾音に先に降りてもらい、俺もバイクから降りる。
「はい、こんにゃく」
大ちゃんが先に買ってきてくれていた。お金を渡し、受け取る。
三人で食べた。
「ここも春だったら桜が咲いて綺麗なんだけど。もう葉桜だね」
「俺、その時期に来てバイクと一緒に桜撮ったよ」
「はふん。見たい見たい」
綾音にねだられ、携帯を取り出して見せた。
「はふ~ん。綺麗」
とても喜んでいた。
「折角だから写真を撮ろう」
大ちゃんの提案で、バイクを並べて近くにいた人に携帯で写真を撮ってもらった。
その後、どうするかの話になり、古民家カフェに行き昼食をとることにした。
向かう道中もインカムで話をしたり、ヤエーをしていた。
古民家カフェはちょっと解りにくい所だったが趣のある建物で中の雰囲気も落ち着いていて居心地が良かった。
「綾音ちゃんは携帯持ってないの?」
「うん、今度お父さんに頼んでみる。買ってもらったら写真送って欲しい。」
「俺からかよ。・・・わかったよ」
それぞれ話をしながら昼食を食べた。デザートにプリンを頼む。
「い~ちゃん、綾音ちゃん。プリンにスプーンを突き刺してみて」
大ちゃんが伝える。俺もやってみた。
「すげえ!」
「はふん!すご~い」
二人してビックリした。プリンにスプーンが突き刺さったまま立っていた。
まるで某ゲームに出てきそうな伝説の武器が地面に突き刺さってるように立っていた。
その後、しばらくゆっくりしてから帰ろうかという事になったが大ちゃんは寄る所があると行って別行動となった。
帰りは、俺と綾音の二人で話をしながら帰った。
「はふん。今日は解らない話もあったけど楽しかった」
「そうか。それなら良かった。俺の運転、怖くないか?」
ちょっと自信なさげに訊いた。
「はふん。全然大丈夫。お腹をぎゅってしてるのが安心する」
不安でなくて良かったと少し安堵した。
「ねぇ、今、この時は初デートだよね?」
突然訊いてきた。
「もう帰るだけなのにか」
それはデート呼べるのだろうか。そんな疑問が浮かぶ。
「はふん。だって今二人きりだもん。だったらデートだよ」
大ちゃん、ひょっとして変な気を回したんじゃないだろうな。と勘ぐった。
「お前がそう思うんなら、そうだろうよ」
俺は敢えてデートだとは言わなかった。そんな雰囲気じゃなかったしな。
綾音は手に力を入れてぎゅっと抱きついてきた。
研究所へ着くと二人きりのデート?は終わったのだった。
後日、携帯を買ってもらった綾音は俺に写真を送らせて待受にしていた。
更になーさんが英語を教えに来た時に色々と教えてもらい、ラインで友達になったのだった。




