第七話 夢の延長線
木々のざわめきが聞こえる。俺は意識をハッキリとさせ、周りの状況を確認する。
まずは頼りない相棒を捜す事から始まる。
武器はポケットナイフが一個だけ。俺は落ちている木の枝を拾い、先を尖らせる。
これで使い捨ての武器の出来上がりだ。
さて、そろそろ動くとするか。
ガサガサ、と茂みから音がする。毎回出てくるチュートリアル的な人の敵だろう。
接近戦に備えポケットナイフを構え、相手が出てくるのを待った。
現れたのは、人は人でも化け物と化したモンスターだった。
誤算だった。敵の種類が変わったのはおそらくゲームをした事が原因だろう。
ナイフで切りつけつつ、首筋に尖った木の枝を刺して斃す。
「よし、そしてあいつはこの先にいつもいたな」
獣道を進んでいくと開けた場所に出た。草が生い茂る中大きな岩の上で綾音は月光浴をしていた。
毎回のことながら、思わず生唾を飲んでしまう。それぐらい見蕩れてしまっていた。
黙っていれば大人びて見えるからだ。
「今回も早いね。それじゃあ、行こうか」
なんで今回は雰囲気が違うんだ?
とりあえず、綾音に同行する。
「先に言っておくけど、今回はゲームの影響かもしれないが敵が化け物になっているからより注意しろよ」
「はふん。大丈夫よ。ゲームで鍛えた腕を見せてあげるわ」
はふん、がその後のセリフを全て台無しにしていた。
一抹の不安を抱えつつも目的地へと向かう。
途中で武器を拾い、何度か敵と遭遇したがいつもよりも早く斃す事が出来た。
綾音が積極的に動いて俺の負担を減らしていたからだ。
「お前、出来るようになったんだな」
「今宵の私は一味違うのよ。試してみる?」
フフッと笑うとナイフを瞬時に俺の首筋に近づけた。
「おいおい、そんなことしてる場合かよ。さっさとこの夢をクリアして終わらない夢を終わらせようぜ」
やんわり断り、先に進むよう促した。
森を抜けると場面が切り替わり、今回はどこかの研究所のようだった。どこかの一室に居る。これもゲームの影響だろうか?
扉は開かなかったのでPCを操作してドアのロックを解除して廊下に出る。
ゲームをやった影響は悪い影響だけではなかった。
今回は割と武器を拾う事ができ、敵も手強くなってきていたが綾音と協力して斃しながら順調に進むことが出来た。
しかし通路を進んでいると中で隔壁が突然下り、綾音と分断されてしまった。
「ちっ、今回はやけに厳しくないか」
と、夢に対して難癖をつけた。
「綾音!大丈夫か?とりあえず、お互い先に進んで玄関ホールで落ち合おう」
大声で隔壁越しの綾音に伝える。
「わかったわ。お互いの無事を祈って再会を果たしましょう」
余裕そうじゃないか。これなら行けるか。
そう思い、俺は先へと進んだ。
階段を見ると二階と表示されていた。階段降り、先に進むと窓のある廊下に出る。
先に進むと突如、後ろからガラスが割れる音が聞こえてきた。ホラーゲームでありがちの展開だった。
「お約束だな。解ってんだよっ」
ハンドガンを数発撃ち込み、怯んだところをナイフで一殺した。
俺はその後もモンスターは出てきたが無難に斃して、玄関ロビーへと辿り着く事が出来た。
一方で綾音は、
「はふ~ん!来ないで~!」
私は余裕などなく、敵を斃して進むどころか逃げ回っていました。
い~ちゃんに対して虚勢を張っていただけです。
「そんなパターンはなしでしょ~!」
ホラーゲームを少しやっただけでありがちなびっくりポイントのパターンになんか慣れるわけないでしょ!
「はふん!階段発見!ここ二階なんだ。じゃあ下に降りよう」
何とか階段まで辿り着き、階段を降りていきました。
一階に降りて先に進むと窓のある廊下に出ました。
「はふん。私、知ってるもん。通ってる時に窓から敵が出るんでしょ」
窓側に意識を集中しながらサブマシンガンを構えつつ先に進みます。
突然壁が崩れ、大型の化け物が現れました。
「はっ、はっ、はふん」
私は動揺しつつも、サブマシンガンを連射しました。
しかし威力は低く、化け物が怯む様子はなかった。はふん、弾切れになっちゃった。
化け物は触手らしき物を伸ばし、私に襲いかかろうとしてきました。
私は何とか緊急回避をして慌てて先の扉の方に走って逃げる事が出来ました。
扉の先は玄関ホールでした。
「どうやら、こっちには来れないようね。はふん・・・」
少し落ち着きました。そうだ、リロードしないと。
サブマシンガンのリロードをしていると反対側の扉から誰か来ました。
私は銃を構えて相手に向かって話しました。
「動かないで」
「まさかお前の方が早く着くとは、俺もまだまだだな」
現れたのは私の相棒でした。
合流した後、俺と綾音は話し合った。
おそらくだがありがちなパターンだと地下があり、そこが怪しいのではないか、と地下へ向かう方法を探すことにした。
「しかし、ゲームしただけでそんなに強くなるもんかね」
今まで頼りなかったのに少し頼もしく感じた。
「はふん。もっと褒めてもいいのよ。私に任せておけばこんなの簡単よ」
それをもっと早く発揮して欲しかったがまぁいいだろう。
俺達はこれまたホラーゲームにありがちな謎の仕掛けを調べていた。
その仕掛けはパーツを所定の位置に動かしていくタイプのモノだったがパーツが足りていなかった。
俺はまた懐かしい仕掛けだな。とそのゲームを思い出していた。
「多分、どこかにその仕掛けに必要なパーツを探さないとな」
そう言ってパーツを探すことにした。
大抵こういうのは近くのまた何かの仕掛けを調べたら手に入るもんだが。
「はふん、あったよ~」
と、パーツをブンブンと振りながらやってきた。
「うっそだろ!お前すげえな」
思わず、素で答えてしまった。
「さぁ、ちゃっちゃと解いちゃおう」
仕掛けに挑んだ。ここで時間を取られるのはまずい、早めに解いて地下に向かわないと。
「出来たよ~。はっふん」
「マジかよ・・・」
パズルゲームはやってたって言っていたがそんな早く解けるもんなのか?
俺は呆気に取られていた。仕掛けが動き、奥へ通じる道が出来た。
とりあえず先に進めるようになったんだ。気を引き締めて行かなければ。
その先に地下へ通じるエレベーターがあった。ボタンを押す。反応がなかった。
「これまたお馴染みのパターンかよ」
動力源を探してスイッチを入れなければ。
「はふん、横に非常電源あるよ。これじゃない?」
俺はズッコケた。
ご都合主義やしませんかねぇ。まぁ、ありがたいからいいけど。
非常電源を作動してエレベーターを動かし、地下へと向かった。
「エレベーターも種類によっては上から敵が来るから注意しろよ」
注意を促したが特に何も起こらなかった。それはそれで良かったのだが少し拍子抜けした。
エレベーターから下りる。
「はふん!きっとこの先にお宝があるんだよ」
研究所でお宝って、不似合いな気もするが。
大抵こういうのは爆発オチで終わるもんだろ。この場合、夢オチだが。
ともあれ、終盤が近いことは間違いなかった。
突如警報が鳴り響き、タイムリミットが表示される。お宝をさっさと手に入れて脱出しないと。
突如天井が崩れ、何かが降ってきた。
「ふわわっ!さっきの化け物だ~!」
「お前、こいつ知ってんのか?」
「はふん。サブマシンガンが全く効かなかったんだよぉ」
「碌な知り合いじゃないな」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!」
綾音がツッコミを入れた。確かにこの展開はラスボス的な位置のやつだな。
「綾音、お前はこれを使え」
俺はアサルトライフルを渡す。これなら多少距離があっても威力はあるはず。
「今度は俺に当てるんじゃねえぞ」
と言って、駆け出す。触手が伸びて来た。俺は横に転がり、態勢をすぐに整えて秘密兵器のマグナムを構え、ヘッドショットを撃ち込んだ。撃った反動でよろける。
化け物はものともせずにすぐさま触手を伸ばしてきた。慌てて距離を取り、今度は胸に撃ち込んだ。
何事もなかったように化け物は触手を蠢かしながらゆっくりとこっちに歩きいてくる。。
「マグナムの設定、弱くなってんのかよ」
頼みの綱のロケットランチャーを発見出来なかったのが悔しいところだった。
綾音が援護に入る。
「私は穿つ。いっけぇ!光弾の刃よ!」
ただのアサルトライフルなのに何言ってんの。三点バースト式で撃ち込む。
「って、ちょ、おまっ!何で下腹部狙ってんだよ!」
確かにホラーゲームであるあるだろうけど、それプレイに余裕がある人がやる事だから!そして対してダメージ負わないから!
「お“お”お“お”お“お”ん“。」
低く呻き声を上げ、化け物は下腹部を触手で押さえ、悶えていた。
その姿を見て、俺の中のホラーゲームの常識が音を立てて崩れた気がした。
「マジかよ。ラスボスで下腹部が弱点の敵ってそんなのアリかよ!」
半ばヤケクソでマグナムを下腹部に撃ち込む。触手が邪魔をして触手が弾け飛んだ。
タイムリミットは刻々と迫っていた。後、五分を切っていた。
「今だ、撃て綾音ぇぇぇぇっ!」
「はふん♪極楽へ逝かせてあげるわ」
そのセリフは色々危ない気がしたがそんなこと言っている場合ではなく、俺も合わせて下腹部に照準を合わせて撃ち込んだ。
化け物は嬌声のような悲鳴を上げ、崩れ去った。
跡形もなく消え去り、後に残ったのは金色の球だった。
「はふ~ん!お宝ゲッチュウ!」
綾音は上機嫌でその球を手にした。
俺は想像してしまったがあえて言わないことにした。満足気な綾音を見て水を差すことになると思ったからだ。
「それより脱出するぞ!」
「うん!」
エレベーターに乗り込み一階へ向かった。残り2分を切っていた。
エレベーターが開くと敵を無視して一直線に走る。玄関ロビーに辿り着く。
俺はマグナムを構え、入口のガラスに向かって撃った。
ガラスが割れる。
「綾音、先に行け!」
綾音に先に脱出させ、敵の攻撃を避けつつ、俺も入口に向かって走り出す。
あと5・4・3・2・1
頼む間に合ってくれ!俺は何かに縋るように手を伸ばし、目を閉じて走った。
0・・・カウントが終わる。
俺は恐る恐る目を開けた。研究所の外だった。手を伸ばしたことでギリギリクリア判定になったのだろうか?
とりあえず、二人して安堵した。研究所はいきなり爆発崩壊し、俺達は吹っ飛ばされた。
こうして繰り返す夢は終わりの迎えたのだった。
「・・・終わった」
代わり映えのない天井が俺を迎えていた。
とりあえず、飯塚さんに報告に行き、再びベッドに入りゆっくり二度寝をすることにした。意外と眠りはすぐにやってきた。
「い~ちゃん、寝てるの?」
私は、彼が眠っているのを確認しました。
反応がない。どうやら眠っているようでした。
お父さんに夢の報告をした後、今日は彼を起こさないでやってくれと頼まれました。
「はふん、ありがとね。い~ちゃん」
私は唇をそっと彼の唇に触れて、部屋を出たのでした。




