僕の小さな大冒険 8話
船長が大仰に両手を広げると海賊の船員達は口々に歌った。
「愚かな子供に死の制裁を♪、夜寝ない悪い子には、永遠の眠りを♪」
月明かりに照らされて、歌声に包まれる船長は、鳥肌が立つくらい恰好よかった。
「恐ろしい、フック船長にも慈悲はある。さあ、名も無きロストチャイルド。最後に何か願いがあるかな?」
「本が読みたい」
なんで、そんなこと言ったのか自分でも分からなかった。
でも、ネバーランドへ辿り着く途中で、本を読む人達を見たからなのかな?
「ほほー、遊ぶ事しか知らないバカなロストチャイルドが本を読みたいだと!?」
海賊達からバカにした笑い声が降って来たんだ。
くそー、バカにしているけどこの中のほとんどの海賊は、本なんか読んだ事ないのに。
「いいだろう、最後の願いだ。ついてこい」
僕は、船長室へ連れて行かれた。
「さぁ、どれがいい?」
船長室の壁一面の本棚に、びっしり本が並んでいる。
僕は、自分の状況も忘れて心が踊ったんだ。
「ぜ、全部、読んでみたい」
船長は、なぜか嬉しそうだった。
「でも、僕・・・文字が読めないんです・・・」
「覚える気があるか?」
「もちろんです!」
僕は、すがりつくように船長を見上げた。
なぜか、船長は笑顔だったな。
忘れられない。
「よかろう、我が輩が、文字も礼儀作法も教えてやろう」
「ありがとう」
本当は、敵であるはずの船長が僕に喜びを教えてくれた。
それからしばらく僕は船長から沢山の事を教わった。
文字や文学、数学。航海術に礼儀作法、剣術まで教えてくれた。
まるで、自分の全てを伝えるように。
それは、とても厳しくて優しくて。
僕は、自分が何者か忘れてしまうくらい。
終りは、突然やって来た。




