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うっかり探偵  作者: はましょう
9/10

幻のミス校メイド 4

「ごめんね、この人ちょっと錯乱する癖があってね。」


駆け寄った私は、先輩がすがり付く哀れな男子校生に断りを入れつつ、困ったダメ人間を引き剥がす。


「先輩、ダメじゃないですか受付の彼にまとわり着いちゃ。」


「だって、タイムオーバーだよ!?まさか僕の記録が判定すらされずに『時間切れ』の四文字で済まされちゃうんだよ?」


悲痛な面持ちで声をあげる先輩。

でも時間切れなんだから仕方がないではないか


「・・・他の人は先輩より20分は早く終えていたらしいですよ、ここまで時間がかかる想定では無かったのでしょう。」


あくまで事実を突き付ける。


「そもそも、どうしてこんなに時間が掛かったんです?学校の出し物なんですから、そんなに意地悪なゲームでは無かったのではないですか?」


流石の先輩でもこんなに中で悩み続けていた訳ではなかろう。途中で財布を落として探していたのだろうか?


「いや、脱出のほうは実に順調だったのだが、途中情報提供をしてくれる生徒役の子達と話が弾んでしまったね。」


頭をポリポリとかいて笑う先輩。

中で話した内容がよほど楽しかったのか、思いだしたようにフフフと笑みを深める。


「特に最近生徒達の間で流行っている遊びというのがだね・・・」

「あー、はい。いいですいいです、よくわかりましたんで。」


 先手を打って先輩の話を遮る。

 このまま続けさせたら、本格的にこの場で数時間立往生することとなるだろう。


「それより、さっきのチラシで見たコンテスト。そろそろ開始の時間じゃないですか?」


 別の話題で先輩の興味を引きつつ、場所を変えるように促す。


「おおお!もうそんな時間かい?こうしちゃあいられない、駿介くんは時間にルーズじゃなくて助かるよ。」


 言われて時計を確認する先輩は、そのまま踵を返して会場となる体育館の方へと向く。


「よし!それでは向かおうか!まだ見ぬ美女を求めて、いざ出発だ!」


 元気よく宣言する先輩、ちょっと声が大きいですよ!

 しかし最後の総評にこのようなイベントが大きく影響することは間違いないだろう、なればこそ、見逃すわけにはいかない。ああ、いかないとも。


 そして歩きだす先輩と、それを追う私。

 両者とも、足取りは軽く、すっかり校内の浮かれた雰囲気に感化された様だった。


-------------------------------------------------------------------------------------

 体育館会場内は正に超満員。人々の熱気が立ち込めるなか、皆コンテストの開始を今か今かと待ちわびている。

 横にいらっしゃる先輩も会場の空気に飲まれたのか、落ち着きなくキョロキョロとしている。


「まだかな!?ねぇ、駿助くん!開始まで後5分は切ったよね!?」


 待ちきれない様子で私に時間を確認する先輩。


「ええ、もう開始予定のの15時ですよ。だから少し落ち着きましょうよ。」


 時計を確認する私も、そろそろだろうとステージの方へと目を向ける。

 幕の下りたステージ、会場の視線がそちらに集中している。


 しかし、待てども待てども幕は開かない。

 どうしたのだろうか?

 そして時間が過ぎること15時5分。体育館のスピーカーから女生徒の声が響く。


「ほ、本日予定されている...ミス校コンッ..コンテストですが、ト、トラブルの発生により開始時間が遅れ..変更されます。大変申し訳ありませんが、開始時刻を15時さんじゅ.....16時と変更させていただきます。繰り返します...」


 響くアナウンス。

 それを聞きざわめく場内、不平を漏らす先輩。


「なんだよぅ、開始が遅れるのかい?というか、トラブルだって?一体どうしたんだろう。」


「そうですね、開始が遅れる様な事が裏で起こったんでしょうが...。一応16時とは言っていましたが、そのトラブルが収まらなければ開催も怪しかったりするのでは?」


 スピーカーから聞こえた女生徒のアナウンスだが、大分慌てている様子であった。

 トラブルとやらが深刻なものでは無ければいいのだが。


「トラブルが続けばか...うむ、やはり僕たちはこの時の為にこの学園祭に呼ばれたのかもな。だろう!?駿助くん!」

 

 得心を得たかのように、腕をグッと顔の前に持ってくる先輩。

 ・・・これは。


「先輩、一体なんの話ですか?」


 一応彼がどういった事を考えているのか、わからなかったので確認をとる。


「なに、探偵と言えば事件に巻き込まれるものだ。そしてすぐそばで事件(トラブル)が起きたというではないか!これは僕たちが行って解決してしまえばいいのさ!」


 ズバリと断言した先輩、私が呆れて固まっているのを見向きもせず、人混みを掻き分けてステージ裏へと回る入口の方へ進んでいく。


 我に返った私も慌てて後を追う為、目の前の人だかりに意を決して向かっていったのである。

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