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うっかり探偵  作者: はましょう
8/10

幻のミス校メイド 3

 デカデカと『ミス校コンテスト』と銘打たれたチラシを覗く私達。

 あの子が落としたものだろうか?

 宣伝用のビラの様で、そういえば校内の廊下にも貼られていたような気もする。


「おお、どうやらこのチラシにあるコンテストは、学園祭の催しの一つの様だよ?」


 パンフレットに乗っているスケジュール欄を指さす先輩。

 なるほど、そんな催しまであるのか。


「そうなんですか、僕が学生の時には無かった試みです。時代は変わるものですね。」


 素直にそんな感想が口から出た。私も学生だった頃から比べたら、随分と年を重ねたものだ。


「ははは、時代だなんて言う年じゃあないだろう。それに、どうやら今年が記念すべき第一回目。初めての試みと乗っている、なかなか活動的で結構じゃないか。」


 そう言って頷く先輩。


「駿助くんからしても、可愛らしい女子高生達をこれ幸いと眺めることができるのだ。ワクワクだろう?」


「・・・メールの件でも思ったんですけど、先輩は自分に対して何か酷い誤解をしていると思うんですけど。」


 さっきの発言で確信した私は、先輩にそう話すが。


「なに、皆まで言わずともわかっているさ!安心したまえ。さあ、それでは気を取り直して校内を回るとしようか!」


 全く何も分かっていない先輩は、意気揚々と歩きだしてしまう。

 これはもう諦めるしかないのだろうか・・・。

 私はそんな先輩の背中を追って、渋々歩きだすのであった。


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 午後になってだからか、更に人の波が大きくなっている気のする校内。

 道行く人々に逆らって歩く先輩は時折、体をぶつけた見知らぬ人に頭を下げている。余りキョロキョロせず、もうちょっと端を歩けばいいのに...。


 先輩は、進む先々で教室の中へ入り、学生達に声を掛けては出し物の内容を尋ねている。

 中でも興味を引いたのか、『リアル脱出ゲームby2年1組』という教室から脱出を試みる出し物に、


「これは探偵として入らざるを得まい。駿助くん、君はここで待っていてくれたまえ!なに、本日最速脱出記録を樹立してくるから安心するといい!!」


 などどのたまい、颯爽と室内に入ってかれこれ30分...。


「あの、すみません。この2年1組のゲームって他の方々はどれくらいで出てきてますか?」


 入口近くで呼び込みをしている男子生徒に尋ねてみる。


「あー、そうっすね~。だいたい皆15~20分くらいで出てきてますけど...。因みに、最速だったのは親子ずれのちびっ子が10分かからず出てきましたね~。」


 頬をかきながらそう説明してくれる男子。あ、そうですか。


「そうなんですか...。わかりました、ありがとう。」


 実はそんな気がしていたのでそこまで驚きはしなかったが、何だか疲れが足に来た。

 仕方がない、どうせもう少しかかるだろうから近場で座れそうなところでも探そう。


 そう思い、周りを見ると廊下の隅に休憩用のベンチを発見する。

 これ幸いと腰を下ろし、まだ先輩が中にいるであろう教室の方を横目にしながら周りを眺めて時間を潰す。


「ねぇ、聞いた?今年のミス校コンテスト、地方のテレビが撮るらしいよ?」


「え!ホント?やだ、だったら出ればテレビに映れてたじゃん~!」


「あっは!みゆってばどんだけ自信あんのよ~。この前まで顔のニキビでテンションだだ下がりしてた癖に~。」


「あ~!言ったな恵子!いいのよ、どうせミス校なんか私の出る幕はありません~!たこ焼き食べて受付してるのがお似合いです~。」


「ちょっとゆみ!それ私のたこ焼き、も~!」


 傍でミス校について話して盛り上がっている女生徒達がそんな話をしている。

 たこ焼きを取り合う二人が目端に映るが、なるほど、確かにテレビカメラを携えた人を見かけた気もする。


「それに、ミス校に応募する人なんて、自意識過剰な子とかそんなんに決まってるじゃない。」


「それな~、見た目が綺麗に出来ても中身がブスとか笑えないよね~。」


「でしょでしょ?だから私みたいな心清らかな女子は恥ずかしくて人前なんかに出られないのよ」


「え?今なんか言った?たこ焼き女子で有名なゆみさん?」


「も~、そんなの何処で有名なのよ!?初めて聞いたけど~」


 けらけら笑いあう女生徒達。

 まあ、年頃の年代だから人前に出て行くのも恥ずかしいものなのだろう。

 私だって、高校時代で大勢の前に立つような機会などほぼ無かったに等しい。

 随分昔に感じる学生時代をぼんやり思い出していると、例の教室から転がり出てくる先輩の姿が。


「うわぁ!!」


 驚いた男子生徒が声を上げる。


「記録は!?どうだった、君!何分だったのだろうか!!」


 ベストを尽くした先輩が、タイムを計測していた男子生徒に声を上げるのを発見。

 男子生徒もしどろもどろ。手元の時計を確認して口を開く。


「そ、その...。タイムアップです。30分以上は時間切れで計ってないんです...。」


 申し訳なさそうに先輩に告げる男子生徒。


「な、なんだってー!!!?!?」


 低い姿勢のまま響く声を出す先輩に、ため息をつきながら私は駆け寄っていった。



のんびりと更新していきますので、お暇な方はおつきあいください。

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