幻のミス校メイド 2
「いやはや、どうしてお祭りの食事というのはこんなにも美味しく感じるのだろう?」
焼きそばを頬張りながら、質問を投げかける先輩。
「やはり、この雰囲気が美味しくしてくれてるんじゃないですかね?ほら、特別な感じがしますし」
とある教室で、机を何個か並べて作られたテーブルに着席した私と先輩は、買いためた生徒特製の料理たちに舌鼓を打つ。うん、大して凝った料理もしていない料理だが、美味しく感じれるのは何ともお得だ。
「ははは、見たまえ駿助くん!この玉葱なんて、端まで切れてなくてほぼ一玉だよ!いやー当たりだね、これは」
そう声をあげ、ご機嫌に箸でつまみ上げた玉葱を見せてくる先輩。そこまで大きいと火も中まで通っているか不安だな。
その後も、テーブルに並べた料理たちに楽しげにリアクションする先輩にたまに突っ込みを入れつつ、食事を済ませた。
食後にお茶を飲んで一息着いていると、先輩は手元のパンフレットを眺める。この学園祭について、行事や各クラスの出し物が記載されている、なかなか見るだけでも楽しい。
「僕の講演はこの学園祭の締めらしいんだ。最後の閉会式で、この学園祭の総評も述べて欲しいって頼まれてしまった」
パンフレットを開き、私に見せてくる先輩。見れば、閉会式のスケジュールに特別ゲストと銘打った欄に先輩の名前がある。
なるほど、総評を任させられたとなると、先輩のことだ、全クラスの出し物を見るつもりでいるかもしれない。これは、長い一日になりそうだ。
「ようし、腹も満たされ食後の休憩も取った、では行こうか!駿助くん!」
意気揚々と立ちあがり、教室から駆け出す先輩。
あっ、こら、廊下に駆け出したら危ないでしょう!
「あっ、先輩あぶな「うわっ」です...言わんこっちゃない」
廊下に姿を消したと思ったら、あっという間に先輩の大きな声が聞こえてきた。あわてて私も後を追う。
「あいたたた。ごめんよ、お嬢さん。怪我はないかい?」
出会い頭で衝突してしまったのだろうか。メイド服を着こんだ学生さんが尻餅を着いている。
「あっ、ええ。大丈夫です」
差し出した先輩の手を掴み、立ち上がるメイドさん。
クラスの出し物だろうか?色モノが多い学園祭と言う校内では、普段は見慣れないこの格好も違和感が薄れる。
「こちらこそごめんなさい、ちょっと考え事をしていて。前をよく見てませんでした」
うつむきながらそう返事を返す。ほら、先輩。恥ずかしがってますよ、あんまりジロジロ見たら可愛そうです。
「すみません、実は急いでいまして、失礼します」
そう言って逃げるように立ち去るメイドさん。去り行く後姿にたなびく髪が廊下の角に消えていった。
「もう、先輩!ああやっていきなり外に駆け出したらダメですよ?」
しっかりと注意しとかないと先輩は、またしでかすので語気を強めて注意する。
「相手に怪我がなかったから良かったものの、もし、相手に怪我させちゃったら、せっかくの学校の思い出が台無しになっちゃいますよ!」
すまなそうに、下を向く先輩。両人差し指を胸の前でツンツンしている。
「ううう、ごめんよ駿助くん。反省しているからそんなに起こらないでくれ。いやぁ、あの子にも悪いことをしてしまった」
しょんぼりと肩を落とした先輩。うん、しっかり反省しているな。失敗をするのは仕方ないが、それを繰り返さないことが大切だ。
「そうですね、大事なくてよかったです。それにしても、随分綺麗なメイド服でしたけど、どこのクラスの出し物なんでしょうね」
率直な感想を述べつつ、パンフレットに目を向ける。
クラスでメイド喫茶をやっているのが何件かあるな。
「うぅーん...ん?」
横で何かに気がついた先輩。目を向けると、床を見てそこにしゃがみこんだ。そこには何かのビラが。
「「ミス校コンテスト??」」
先輩の拾った一枚の紙には、デカデカとそう見出しが書かれていた。