幻のミス校メイド 1
また思いついてしまいました。
ゆっくりと投稿していきますので、もしよろしければお楽しみください。
夏から秋に季節が移ろい始める中、私は先輩と共に騒がしく行き交う学生達を眺めている。
まだまだ人生の延び盛りといった十代の若人達が、訪れる人々を楽しませる。
「フランクフルトいかがですか~」
「メイド、執事喫茶は3Aです~」
「お化け屋敷~お化け屋敷はこちらです!」
ワイワイ、ガヤガヤ
私達は、高校の学園祭に訪れていた。
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時は少し遡る。
『今度、高校の学園祭の催しで講義を行う事になった。確か和戸君の出身校だったと思い出してね。どうだろう、都合が会えば一緒に行かないかい? P.S女子高生、好きだったよね?』
メールの内容をみた私は、画面を閉じため息をつく。
「はぁー」
何なのだろうか、あの内容は。先輩が催しで講義?そしてその開催会場が私の母校?
確かに私の出身校がこの近くにある。先輩の事務所も同じ学区内にあり、何度か高校時代の話をしたこともあってか、その記憶をもとに誘ってくれているのだろう。
いたって平凡な普通科のみの高校。学力偏差値も50前後。進学をする生徒と就職する生徒が半々ほど。
私が在学中の学園祭も、外部から講師を招いて講義を行っていた記憶がある。
久々に母校を尋ねるのも悪くないかもしれない。そしてあの先輩の講義だ、興味がそそられる。
私は仕事の予定を書き留めた手帳を捲りながら、携帯の返信内容を考える。丁度予定は空いていたはずだ。
『先輩へ
都合は付きそうです。学園祭の講義、お供しますよ。あの高校は結構悩める十代が真剣に講義を学ぶ校風がありました、変な議題を話さないで下さいよ?
P.S. 女子高生が好き、と言うのはいささか語弊があります。講師をするなら、もうちょっと文面を考えてください』
メールを返した俺は、本棚にあったはずの、講義文作成についてまとめた本を探しに立ち上がった。
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「いやー、賑やかだねぇ。実にいい、私自身も若返ったような気分だよ」
右手に焼きそば、左手にフランクフルトとアメリカンドックを携えた先輩が、ほくほく顔で話す。
因みに私の手には、先輩が持ち切れなかった綿あめとたこ焼きが乗っている。
「先輩、落ち着いて下さいよ。そんなに買い込んで、転んでこぼしたら大参事ですよ?」
よく転ぶ先輩が、今日も食べ物を地球にごちそうする姿が容易に想像できる。人が行き交う中だ、先輩の注意力はいつもの半分ほどだろう。
「とりあえず、何処かの教室に入っていったん食べちゃいましょう。ほら、あそこのクラスは喫茶店みたいですよ」
先輩がこれ以上買い込まないように注意しつつ、この手のふさがった状況を何とかすべく提案する。
「はっはっはっ、和戸君は心配性だねぇ。そしてさりげなく喫茶店を促してるのは、女子高生の喫茶店衣装が気になるんだね、分かるよぉ」
だめだ、この先輩全く分かっていない。しかし、これ以上の距離を歩くと危険度が更に増す。抗議を上げるよりも店に入る方を優先すべきだろう。
「あー、もうそういうことでいいですよ。さっさと入りましょう」
そういって先輩を誘導し、廊下の床に染みを作り上げる前に何とか席に着くことができた。
存外、母校の懐かしい空気が私のテンションを高めているのかもしれない。