幻のミス校メイド 5
お久しぶりの更新となります。
少々前話より文字数が多くなってしまいました。
それでは、事態の進展をお楽しみください。
突撃する先輩を追う。
人垣を掻き分け、まるで猪のように突っ込んでいく。
そして入り込んだのは舞台横の小さな扉。
表に申し訳程度に「関係者以外立ち入り禁止」の紙が貼ってはあるが…。
「たのもー!!」
全く意に介さないのがこの先輩。
扉をくぐって開口一番、出てくる言葉は何故か道場破り風。
室内にいた何名かの学生達も、突然の出来事にこちらを向いて固まっていた。
「事件があるところに探偵あり!だが私が来たからにはもう安心だぞ?皆さん、落ち着いて事情を説明して下さい。」
声高らかに告げる先輩。
テンションは常に振り切り気味の先輩だけれども、今はいつにもましてハイになっている。
なんでまたこんな高まってるのだろうか…?
あっ!?まさか変なものでも拾って食べたのか?
「むーん…駿助くん、見たまへ。彼らの恐怖に強ばってしまったあの表情を。これはとんでもない事件がこの場で起こってしまったようだ。」
室内の学生達を眺めて唸る先輩。
いえ、こわばってるのは先輩が…。
「はっ!?これは・・・何やら布が切り裂かれている?」
目ざとくも、学生たちが囲んでいた中心に何かを発見した先輩はグイグイ進んでいく。
そんな先輩の行動を阻むことのできるのは、恐らく私しかいないだろう。
「先輩、暴走してます。ちょっと落ち着いて下さい!」
肩を掴んで止めに掛かる。
いつもほわっとしている先輩は、こんな時に限ってパワフルで、思わず引きずられそうになるのを何とか踏ん張って堪える。
努力の甲斐あって、先輩を猪突から牛歩程度にまでは抑え込む。
「ほら!周りの子達も怖がっていますし、少しは大人の余裕というものを見せて下さい。」
自分で言っていて何だが、大人の余裕という言葉には余り縁のない先輩だ。
とどめる効果は薄いのかもしれないが、今は何でも試さなくては。
「・・・余裕?ふむ。」
私の言葉が耳に入ったのか、あれほど強くかかって居た引力が収まる。
そして周囲を観察し始めた先輩。
急なテンションの落差に戸惑う学生の面々。
「あー、お騒がせしてゴメンなさい。自分たちは今日の来賓として招かれた探偵所の者です。えーと、どなたか責任者の方はいらっしゃいますか?」
何とか私たちの身分を示して事情を聞こうと試みる。
始めは私と先輩の様子を恐る恐る見ていた学生たちも、互いに目を合わせてヒソヒソと話し出した。
・・・警戒は解けたのかな?いや、まだちょっと引かれているかな。
そんな周りの様子に肩を落としていると、周囲の学生から一人、私の前に人が出てくる。
ワイシャツ姿のメガネがよく似合う青年。
腕章に実行委員会と書かれている様子から、この催しの責任者だろうか。
「コンテスト実行委員の鹿伏です。探偵さんとおっしゃいましたが、本当でしょうか?」
随分と大人びいた子だ。
丁寧にこちらを伺いつつも、周囲のざわめきを抑えるように皆に合図をしている。
彼なら話を聞いても問題なさそうだ。この場の空気を変えるためにも、さっそくこの状況を質問してみる。
「そうです。自分はこちらの先輩の助手みたいなものなんですけどね。…鹿伏さん、この散らばった衣類、一体何があったのかお聞かせ願えますか?」
真っ先に聞くのは、この室内に集められたボロボロの布達について。
先輩もしゃがみ込んで何枚か手にとっている。
「あれは、今回のコンテストで参加者が着る予定だった衣装です。コンテスト開始前に、衣装を確認した生徒が発見しました。…本当に、ひどいことをする奴が居たもんです。」
鹿伏君が憤りをあらわにする。
「幸い怪我人が出たりはしませんでしだが…今思えば、もっとこの控え室の警備にも気を回すべきでした。目玉だった衣装審査や水着審査を行えないのは、催しとしてかなり痛手になります。」
鹿伏君の言葉を受け悔しそうにする周りの面々。
衣装を用意したり、コンテストを盛り上げる為にしてきた努力が踏み躙られたのだ、無理もない。
「皆さんは、犯人に心当たりは…?」
見渡しているが、皆浮かない表情。
鹿伏君も頭を振り、誰にも思い当たることが無い様子。
・・・だが、
「・・・あの僕、たぶん参加者の人だと思うんですけど、いくらか前に控室に入っていく女の人を見ました。」
「あっ、あの時の子か?」
声が上がる。
一人の男子がおずおずと手を上げている。
それを聞いた隣の男子も、追って声を上げた。
「ふむふむ・・・その、『たぶん』っていうのは、どうしてなのかな?遠目で見て参加者だろうとは思ったんだよね?」
二人を見て質問を投げかける先輩。
粗方の衣装を目に通したのか、しゃがみ込んでいた姿勢から立ち上がる。
「ええと、顔を見る前に控室に入って行ってしまったので。その時はコイツと二人でステージの配置を相談してたんで、すぐその話に戻ってしまったんです。」
「そうそう・・・。衣装を着た後姿だったので、早めに来て化粧でもすんのかなって思って特に気にしなかったんっすよ。俺らは舞台の配置にちょっと手を加えようとしてて、そのあとその子が出てきたかどうかまでは記憶に無くって・・・。なんか、すみませんっ。」
申し訳なさそうに謝る二人。
だが、どうやらその参加者らしき人物が怪しいというので間違いないだろう。
「鹿伏くん。衣装が無事な状態を最後に確認したのは誰なのかな?それと、始めにこの破れた衣装を見つけた人もだ。」
手に持った布きれを振り、鹿伏君に尋ねる先輩。
・・・何故わざわざ破れかけの水着を持っているのか。
「最後・・・かわかりませんが、衣装を確認したのは私だと思います。そして、破れた衣装を発見したのは・・・穴見という男子です。おーい穴見!」
ふりかざす水着を見ても華麗にスルーした鹿伏君。先輩の質問に答えつつ周りに人混みからある人物を手で招く。
鹿伏君に呼ばれた男子が、人垣のなかからひょこりと顔を出して近づいてきた。
見た所同い年の男子生徒よりかわ背が低い、もじもじとした様子で初対面の私たちに少し緊張しているようだ。
「はい・・・穴見です。えっと・・・、開始前に参加者の皆さんに衣装を渡すために確認しに入ったんです。そしたら部屋の中でこの衣装たちを見つけました・・・。すぐに外に出て、傍にステージ担当の二人が居たので、彼らに話して来てもらって・・・というのが僕の見つけた時の状況です。」
発見時の状況を思いだそうとしているのか、おどおどとしながらも丁寧に状況を説明してくれる。
途中、話に出てきたステージ担当の二人も、うんうんと頷き穴見君の説明に補足してくれる。
「そうなんです、穴見に『大変だよ!!』って呼ばれて、一緒に控室に入ったんです。」
「そうそう、それで俺達も衣装がボロボロなのに気が付いて・・・けど、室内には他に誰もいなかったんすよ!」
そう言って先輩と私に、当時の状況を身振り手振りも踏まえて説明しようとする二人。
必死な二人の証言を頷きながらも手で制し、先輩がまた一つ彼らに尋ねる。
「あぁ、室内に誰もいないのはわかった。所で、二人が見た参加者らしき人というのは衣装を既に来たままでこの部屋にはいたのだろう?どんな服装だったのだい?」
先輩の質問に言葉を止め、互いに目を合わせて頷き合う二人。
「「メイド服でした。」」
同タイミングで話す二人。
出てきた証言は、これまた印象的な衣装を指す言葉だった。




