奇妙な時計 2
「…何故? その質問を君がするのか、自分だけだと思っていたのならばそれははなはだ失礼な思い上がりというものだ」
無言がその問いを肯定していた
「”奇妙な時計” それが君の”カタチ”か」
「初めては、どんな気分だった。高揚したか、怯えたか、それとも感動でもしたのかな、自分が選ばれたのかもしれないという事実に」近づいてくる男に、女はその奇妙な時計をお護りのように握りしめた。
「これは、必要な邂逅だ。だから、なにも怯える必要は無い。そう、君には僕が必要で、僕には君が必要なのだから」
「だが、その関係を構築する為には代償が必要だ。なにかを手に入れるのにはそれに見合った代償が必要だろう」
覆い被さる影から、恥も外聞も無く、女は、そこから逃亡した。
「やれやれ、逃亡は無駄だと言うことは、自身が一番知っているだろうに」
じっくりと獲物を嬲る時間を堪能し男は言った。
「そう、その目が良い。もはや逃がれられない自分の運命を理解したその目だ良い。幾人が君の前でその瞳をさらしたのかは知らない、しかし、悲鳴を上げないというのは美徳だ。ここから先は、才能の問題だ」
男との距離が近づき、男の腕が伸ばされ、その無骨な指先が、その切りそろえられた爪先が、ずぶずぶずぶずぶとその瞳に突き刺さる、祈るように両手を差しだし、そうして、彼女は歓喜とともに気づいてしまった。自身が選ばれた事に、そうして彼女は自身の神に出逢ってしまった。
ずううっと、ずううっと思っていたのだ、この才能は、こんな、自身の都合の為だけに使われるだけのものでは無いと。




