試合とこれから
胸がドキドキする。昼とも、遠藤さんを待っている時とも違うドキドキだ。
この1ヵ月、飽きっぽい俺でも少しは頑張れたんだ。
その努力を否定されたくない。勝ってやる。絶対に。
「試合は1本勝負。先に相手に一発入れた方の勝ちね」
「うん、それでいこう」
「ヒーリングがあるから本気でかかってきてもいいよ。私は手加減するけど」
ヒーリング使えるのか...というか、天然で煽ってきてるのかこの人は。自分の煽り耐性の無さに呆れるほどイライラしてるぞ今。
「じゃあ武本君の合図で始めようか、いつでもいいよ」
「分かった。...3,2,1,始め!」
まずは周りの石を浮かせて...あれ?
「どうしたの?早く来てよ」
「いや、体が」
全然動かない。指一本でさえも。
いや、PSIなら使える!行くぞ!
...あれ?浮かせた石が動かない。
「はい、終わり♪」
遠藤さんはそう言って俺にデコピンを食らわしてきた。
嘘でしょ...もう終わったのか?
「分かった?ある程度力が拮抗してないと、超能力者同士だったら戦いにならないの。今みたいにね」
「俺の体と俺が浮かせた石を全部固定したの?」
「うん、そんなに難しい事じゃないよ」
文字通り手も足も出なかった...
こんなにも離れてたのか...めちゃくちゃ悔しい。
「つまり超能力者でも弱ければただの邪魔、ってことですかね」
「邪魔とは言わないけど、使えない駒は要らないって支部長も言ってるから」
辛辣ですね。俺もう涙目になってきてるよ絶対。
「まあ、今回は君が危険思想を持ってないか確認しに来ただけだし。また強くなったら言ってよ。スカウトしに行くから」
じゃあね、と言って遠藤さんは帰って行った。
時刻は6時30分、俺に残ったのは多少の疲労と大きな虚無感だけだった。
─
「ただいまー」
「おかえり、先風呂入る?」
「いや、飯食う」
さて、これからどうしよう。いったいどれだけ努力すればあれほどになれるんだ?どう努力すればいいんだ?
問題が山積みだ。とりあえず今日は飯食って寝よう。
「そう言えばさ、俊」
「なに?母さん」
「もしかして、超能力使えるようになった?」
..................え?




