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リコール  作者: 別当勉
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リコール対応の進め方を決めるために、MOM(モバイル・オーデイオ・マーケティング本部)の全部長が大会議室に集合。リコールにむかって臨戦態勢がとられる。

*11日(水)19時。部長会


リコール対応の進め方を決めるために、MOM(モバイル・オーデイオ・マーケティング本部)の全部長が大会議室に集合した。冒頭に、常務の松本から米沢事業所で進められている発火原因調査の経過報告があり、強制条件ではあるが発火が再現され不良の原因の発見に近づいているとの説明があった。

「強制条件であっても、本来は商品から絶対に火が出るようなことがない設計になっている。にもかかわらず出火するという不具合品が出るということは、安全設計に問題があるか設計通りに作られていないということだ。これだけでもリコールの決断をしなくてはいけないと思っている。リコールの目的は、我々の商品がお客様の生命や財産に危険が生じることを事前に防ぐということだ。お客様自身や財産に危害が及ぶことは絶対に防がなくてはならない。それは、社会に貢献し利益を得ている企業として絶対守らなければならない責任だ。企業はその責任を果たさない限り事業の継続を許されない。しかし、仮にその責任を果たしても今まで通りに事業を進めることは約束されないというのがリコールだと思って欲しい。十二分の責任を果たして漸く信頼を保てる。そして社会からお客様から事業の継続を認めてもらえる。当社で始めてのリコールで、当然私も初めて取り組むことになるわけだけど、リコールというのはそういうものだと理解している。皆には部員を率先し心して取り組んでもらいたい。ただ、私の目標は、『雨降って地固まる』或いは『災い転じて福となす』となるような結果を目指したい。みんな!頼むよ!・・・芦田がどういうように取り組むかについて案を説明するので、各部の業務の様々なケースを想定して検討してまとめあげた上で実行して欲しい。宜しく頼むよ!・・・じゃあ、芦田!説明してくれ!」

「今日の午後、PRSの危機管理室広田室長と当本部担当の第5営業局小中原シニアマネージャーに来てもらい、うちからは、私と青木と森繁が入って実行課題と実行計画について『アスリートX充電クレードルのリコールに進め方』というタイトルでまとめてみた。そのコピーとPRSのリコール対応基本マニュアルを配る。その内容も確認しながら検討を進めたい・・・まず、なぜリコールをするかは、今常務が話したとおりで、では実際の進め方については、どのような方針で、どのようなスケジュールで、誰が、どのような手順でどのような業務品質で行うかということをまとめてみた・・・まず、基本方針だけど、原因が解明され対象商品が特定されないと、どの商品で何が起きるからリコールするということが言えない。商品が特定されないままだと同じ設計方針の商品の全てが対象になってしまう。『同種の・・・』なんてお客さんにはわからないから、当社のモバイル系のオーディオ商品の全てが対象だなんて思われることになって混乱する・・・ただ、先ほどの常務の説明にもあったように、米沢からの第2報では、強制試験の症例に傾向があるということなので対象が限定されると私は思うが、数量も同時に明確になる。数量によってリコールの仕事量も見えてくる。今はそれも見えない状況であるが、リコールの発表はひとまず5月18日(水)としたい。石塚社長の方針は、『お客様に危害が及ぶ可能性があるのであれば最短の日程で実行するように』ということだ。最短の日程というのは、尽くした上で、準備不足によってお客様を混乱させ別の迷惑を掛けることがないように最短で準備ができる日程ということだ。つまり、社告の準備を整えるための物理的日程が最短ということになり、その日程内で対象商品を何としても特定しなくてはならない。しかし、これも矛盾があり、本当は何事も対象商品が確定しないと決められないのだけど、それを待っていたら日程がどんどん先にいくのが見えている。無理を承知で切った貼ったをしながら進めていこうと思う。この日程にはめることが出来なければ、関連商品全てということになる。石塚社長の方針でそうすることになる。無茶だと思う向きもあるが、これはそれでもやった方が良いのは、M電気の温風ファンヒーターのリコールを見てもあきらかで、最初に全数回収していたら20億円で済んだところが事故が多発して社告をTV新聞で繰り返し結局200億円の費用が掛かって信用を回復できたかどうかって結果になった。何よりもお客様が何人か亡くなっている。それは、企業として経営として、それに担当者して耐えられないと思う。石塚社長は、お客様や社会に対する責任がもちろん一番だけど社員にそんな思いはさせたくないという気持ちも強いんだ。だから、そんな強行日程でもやれって言っている。その社長の思いをぜひわかって対応して欲しい・・・米沢からの報告では対象機種とロットが絞れそうな感じだが、それも今のところ楽観的希望で明確な見通しはたっていない・・・米沢は必死でやってくれるだろうけど実際の状況はそうだ。そんな状況だからその目処がつくまでは、山野製のアスリートZのクレードル全部が対象となる場合と機種及びロットが限定される場合の二通りを想定しながら進めて欲しい。幸いなことに、国内向けだけだ。前置きが長くなったけれど、日程管理で一番融通が利かないのは広報の印刷物の原稿だと思う。リコールの進め方が決まらないと原稿も作れない。従って、その提出期限の日程の中でそれぞれの課題の進め方を明らかにしていかなくてはいけない。

その日程を睨みながら各課題を進めて欲しい・・・では、各課題について順番に確認していこう。それぞれの課題の責任者は君達部長にお願いしたい。順に説明していくのでおかしなところや提案があればその都度言ってくれ。議論しながら進めていこう・・・まず、組織についてだけど、今プロジェクターで組織図を映すので見て欲しい・・・リコール業務の指示報告判断を明確にするためにMOM内で統括するところを明確にしておきたい。それでリコール推進室を設置する・・・室長は、松本常務がされる・・・」

「常務が直々の担当ですか?」

「ああ、そうしようと思う。私がやると言わないと石塚社長が自分がやると言い出しかねない。社長じゃみんなもやりにくいし機動的な対応もちょっとしんどいだろう。だいいち社長の手間を取らして全社的経営課題に影響が出ても困る。もちろんリコールも重要な経営課題だけど・・・そういうわけで、私がリコール推進室を担当するので宜しく頼む。名刺にも『リコール推進室担当』というように明記するつもりだ」

「推進管理は私がやる。業務の内容は、常務の補佐で、このリコールの情報を一元管理したい。各課題のスケジュール管理、進捗管理、課題間の連携の管理を行ってリコール推進全体のPDCAを行いたいと思う」

「常務と取締役の二人で対応ですか?・・・でも発火に至る不良ですからそれ相当の企業姿勢を示さなくてはならないですよね?」

「そうなんだ。リコール室長も、最初は副社長にお願いしようかと思ったが、事業の現場をわかっている私がやるべきだと思ったんだ。企業姿勢を示す、とか、世間体から言えば副社長にやってもらうほうがいいんけどね」

「事業本部の責任者と事業の責任者二人で対応することで世間の理解を得ようと思う」

「でも、芦田さんだって手足がいるでしょう?」

「担当者はどうします」

「事業管理部から2名出してもらう。この2名は専任で、先程言った各課題の進捗管理を行う。他の課題については、現業の担当課題の関連課題として兼任で進めてもらいたい・・・次に、『業務管理担当』は、業務管理部の青木にやってもらいたい。ここは、リコールに関わる費用とドキュメントの管理を含めた記録の管理を主に担当してもらう。広報関係の費用、回収費用、事故対応の費用、ユーザー窓口対応など費用管理が主になると思う。事故が発生した場合はPL保険を使うことになるが、この管理が結構大変らしい。保険会社とやりとりをして保険の適用範囲や鑑定作業、そして保険金の支払い手続きのプロセスの確認をする。その手続きの中で、例えば、適用条件、証明書とか領収書や特別な書類の必要性の確認をし必要なものの取得や管理といったこと・・・だと思う。何れにしても、担当課題の内容は、組織表の中で明確に定義しようと思う。この組織表は、リコール推進室で作成する。『業務管理担当』には事業管理部から4名割り当ててもらいたい」

「PL保険・・・製造物責任保険については、当社が掛けている保険の範囲、内容というのはどういうものなんでしょう?結構複雑だって聞いたことがあるのですが・・・事故の補償、広報費用、回収費用も保険で出るのでしょうか?」

「・・・この件は、青木さんに説明してもらおう」

「ええ、わかりました・・・しかし、PL保険ってのは複雑で、特約の種類や保険金額が色々で、商品カテゴリーによって過去にリコールをした実績が多いか少ないかにもよるし、販売数量にもよって契約条件や補償条件が様々なんです。また、商品が引き起こすであろう事故の大きさによっても違う。契約をしていながら言うのもなんですが、今回改めて確認して不正確なところもあるというか、保険を使うのも初めてなので、明日保険会社に来てもらって正確に教えてもらい詳細を教えてもらおうと思っています・・・それで、今説明できることについて話しをさせてもらうと・・・保険金は、MOM扱いの国内商品で年間10億円がリミットで、この保険金の使用は事故による被害者への補償に限られています。従って、回収に関わる費用は入っていません。回収費用の特約をつけると掛け金が一気に上がるので、事故発生の可能性は少ないとの判断からつけなかったのです。これは、保険会社のアドバイスもありまして、高い掛け金を払って元がとれるのはリコールが多い自動車関係ということです。当社は、これまでリコールの実績がなかったので、突発的な事故で製造者の責任が問われた場合を想定しての保険と考え、回収費用の特約まではつけなかったのです。こういうことが起きるのであれば特約を付けとけば良かったというのは不謹慎というか、変な話ですけど・・・」

「年間10億円って言うのはどういう風に考えればよいのですか?」

「1年毎の更新の契約だから、この契約期間に起きた事故に対してリミット10億円が支払われる」

「事故が継続して発生したらその年の保険金で支払われる?」

「そうじゃないんです。今回の事故で一件なんだ。仮に、発火事故が数年に渡って何件も起きても、アスリートZの充電クレードルの不良事故で1件なんです・・・さらに今年の契約期間内に別の商品で事故が起きた場合でも合わせて10億円まで保険金が支払われるということなんです・・・今の私の理解ではこういうことですが、明日東京日本海上火災に正確に教えてもらい確認しておきます」

「オーケー・・・じゃあ次の課題は、関係行政機関への事前報告と届け出。これは、推進管理担当の私のところでやろうと思う」

「関係行政機関っていうのは、経済産業省ですか?」

「そうなんだけど、製品安全課、消費者相談室、電気機器課といったように幾つもの局や課に個別に報告しなくてはいけないようなんだ。それに、消防庁予防課、事故発生地の地方官庁や市町村の役所、それに消防機関と結構な数なんだ・・・」

「それ大変ですねえ・・・縦の連絡ですむというわけではないのですね」

「ああ。中央官庁は俺がやるけど、地方は手分けしたいと思う」

「役所の対応っていうのか、心証は、こういう時どうなんですか?企業に対しては厳しいものなんですか?」

「PRSの説明では、隠したりせず正直に説明し、企業として反省していることも説明して、まじめに誠意を持って対応する計画を話せば、細かいことは言われないし厳しい指導はされないということだけど・・・広報の協力もして貰えるらしい」

「厳しい指導をされるとどうなるのですか?」

「社告の内容や回数、使うメデイア・・・特に、費用的には負担になるテレビコマーシャルを沢山やるべきだといった指導が来るらしい」

「ああ、なるほど・・・」

「・・・広報協力って、どんなことをしてくれるのですか?」

「うん。例えば、NHKのニュースで取り上げられるようにNHKに口添えしてくれるとか・・・消防の関係は、全国の消防署へ連絡や回覧をしてくれるらしい」

「なるほどねえ・・・」

「次の課題にいこうか!・・・広報担当は、販売促進部の伊東部長にやってもらう。プレス発表、新聞社告に関する手配と流通告知の印刷物の作成を含めてお願いする。プレス発表は、リリースを配るだけというわけにはいかない。記者会見を行う。どういう形で記者会見をやるかは、管理本部の広報部に相談して連携しなくてはいけない。石塚社長は、記者会見には自分が出ると言っているから、常務、私、技術サイドからは有川が出て記者からの質問に答える体制を整えて望まなくてはならない。司会は、広報部の宮田部長にお願いすることになる。メデイアの反応はわからないが、テレビカメラが入ることになるとニュースに出る。そうすると、消費者の反応は早くて、一気に問い合わせがくるからその対応も考えなくてはならない・・・新聞社告は、その翌日の朝刊ということになる。社会面に掲載することになる。全国紙、主要地方紙に掲載する。社告は、新聞だけでなく、各種雑誌、インターネット、車内広告といったメデイアでも実施するつもりだけど、それぞれの有効性を確認して実施したい。社告によって入るお客様からの問い合わせは、ここだけではなく販社、代理店、販売店、関係機関、関係各社、消防、消費者センター、電気電子工業会、社内各部署に来るので事前にきちんとした情報を配布して準備しておかなくてはならない。その担当も漏れのないように決めるが、その情報を間違いなく伝えるための印刷物の手配がある。配布物は、プレスリリースのプレスキットが基本となるであろうが、カバーシートを配布先別に付けて内容を少し修正して配ることになると思う。あと店頭や公共施設に貼ってもらう社告ポスターの作成もある・・・とにかく、印刷物は、配布先を明確にして、原稿作成、印刷手配、部数、納期、納品方法などを上手く管理して進めてもらうのだが、不良原因が明確になった段階、或いは明確にならないけどリコールする際の方針が決まったあと、プレス発表と社告のスケジュールを睨みながら一方で各方面への事前の情報伝達のスケジュールにも配慮して手配を進めるという、かなり際どい作業になる。PRSも手伝ってくれるが、結構差配が難しいと思う。伊東チームに頑張ってもらいたい。頼むよ!」

「ええ、かなりきわどいことが多そうですがやるしかないでしょう!」

「販売促進部からどれくらい割り当てる?」

「・・・ちょっと考えてみます。通常業務と平行してやらなくてはなりません・・・結構タフな課題ですが、まあ、うちのみんな徹夜もいといませんから!」

「・・・じゃあ次は、サービス担当について・・・やってもらう業務は、まずはコールセンターの運営で、担当は、石本のサービス部にお願いする」

「了解!」

「専用のフリーダイヤルを設定してコールセンターを設ける。このコールセンターの対応は、リコール専用フリーダイヤルに入る問い合わせだけでなく、各事業部の通常のフリーダイヤルやお客様相談センターそして代表電話や社内各部署へ入ってくるリコールの問い合わせについても転送できるようにして対応することにしたい。あと、電話だけでなくネットでのホームページへの問い合わせもコールセンターで対応して欲しい」

「何回線位必要ですかねえ?」

「わからないなあ。回収対象の数量にもよるんだろうけど・・・」

「回線数によってコールセンターの規模が決まりますから、場所、回線工事、電話やPCの数量の確定と設置、オペレーターの手配と教育、応対マニュアル・・・準備するのはそんなとこでしょうか?」

「これも難しい課題になりそうだね!」

「コールセンターで受けたあとの他の担当との連携の手順も決め手おかなくてはならないんじゃないの?例えば、販売店からの問い合わせやユーザーさんからでも販売店に絡む問い合わせの場合、代理店や販売店の営業フォローがいるでしょう。そんな内容であれば営業担当に連絡してフォローしなくてはいけないし、或いは、交換品の手配や配送の追跡を求められた場合は物流の担当に確認しなくてはいけない・・・」

「そうですねえ。オペレーターに営業判断は期待できないから、受けた内容のあとの対応をマニュアル化してオペレーターが判断できなくてはいけない。あらかじめ、どのような問い合わせが来るか想定してマニュアル化した上で、想定以外のことが起こったら、マニュアルに加えると同時に毎朝の朝礼で連絡してオペレーターに徹底するといいと思う・・・この想定外の問い合わせ内容については、我々も共有したほうが良いので、リコールのデーターベースにも掲示するけど、MAMの全社員にメールで配信する。全社に関わることは全社一斉配信する」

「情報の管理、データーベース化、メール連絡は、リコール推進室が担当ですか?」

「ああ、そうしようと思う。どんなことになるか、実際はリコールを開始しないとわからないが、こういった打ち合わせを持って情報を共有する余裕は持てないと思うんだ。随時メールでリコール情報を発信すると共にデーターベースで状況を確認できるようにしようと思う」

「コールセンターの場所は何処にしますか?」

「100人ってレベルですか?」

「対象数量次第だろうけど、PRSのアドバイスでは販売履歴のない商品で10万台を超える場合は200回線は必要で、テレビ報道が入った場合は瞬間的には回線がパンクするケースも考えられるということだ」

「東京に設置しなくてはいけないのですか?場所ということでしたら、米沢工場の体育館ってのもあるでしょうが、米沢で人を集められるでしょうか?」

「山形大の学生?」

「うん。でも、MOM内での連携を考えると、こちらの方がいいんだけど・・・」

「上の大会議室を幾つか使わせてもらうか、近くの部屋を借りるの対応になると思っている。石本!これも含めてサービスで検討して準備くれる?」

「了解しました」

「あとサービス担当には、当社地方支店、Xサービスとその地方窓口への連絡もお願い!現地法人へは情報を一元化して海外事業管理部から連絡してもらったほうが良いと思うので推進室から依頼しておくよ!」

「はい、お願いします」

「販社、代理店、協力業者、業界団体へは、それぞれ日常の担当部署が対応すること。そして、その連絡先は、業務担当の青木へリポートして欲しい。何処の誰へ何時何を連絡配布したかを管理して情報の伝達で抜け落ちのないようにしたい・・・次の課題は、流通対応担当についてだが、当然国内販売部に担当してもらう・・・藤井!頼むな!」

「了解!」

「課題は、バイヤーや店主に状況を説明し販売店の店頭での告知と回収の協力を得られるよう、国内販社や代理店を統括して進める。営業課題の一つとして推進して欲しい。取引先や状況によっては同行もしなくてはいけない状況もあると思う」

「・・・販売店によって対応もいろいろあるでしょう。こういった企業のピンチに協力するのも小売の使命と考えてくれるお店や法人もあるでしょう。一方で、手数を掛けさせて商売の影響するじゃないかとか、不良品の販売の片棒を担がせてお客からの信用をなくすと言ってクレームするお店もあるでしょう・・・でも、まあ、それは事実ですから、こちらは伏して頼むしかないと思います」

「そんな場合は、やはり本社から同行して、頭下げて、その上で、お店に手間を掛けさせない・・・つまり、お客さんからの問い合わせがあったり商品が持ち込まれた時にお店に手間を掛けさせないような当社の体制の説明をしてご理解をお願いする・・・それしかないと思います」

「メーカーとして責任を感じている・・・お店に負担を掛けないように必死にやるから協力して欲しいという態度ですかね・・・」

「感情的には、メーカーが全て泥をかぶり汗をかく・・・という態度を見せることですね」

「具体的な対応はどうなる?」

「お店の窓口での顧客対応から考えると、サービス窓口とオーデイオ売り場のレジは多分全てが窓口となると考えたほうがいいでしょう。一般家電売り場やパソコンコーナーのレジには持っていく人は結構いると思います。電話での問い合わせや売り場へ直接商品を持ち込んでの問い合わせがあると思います。店員の皆さんがきちんと対応できるように、対象商品、不具合の原因、回収か交換か修理かといった窓口応対の方針、手続きの手順は伝票管理に至るまできちんとお知らせする必要があると思います。きちんとお知らせしても窓口全てに徹底させることは難しいでしょう。どうしても販社、代理店や我々に問い合わせが入ってくると思います。本社に入ったお店からの問い合わせは全て我々で対応させて頂きます」

「営業担当は多分店周りで出払ってしまうことになるだろう。残っている女性陣だけで大丈夫?」

「うちの部は全員営業をモットーに仕事をしています。誰が応対しても問題ありません!」

「いや、それはわかっているよ。数の問題をいっている。一斉に問い合わせが着たら大変だよ!」

「販社や代理店も頑張って対応するだろうけど、応対が滞って、店としたら、それなら本社に問い合わせてみようかと・・・で、リコール窓口の電話番号はわかっているからそこへ掛けて営業にまわしてくれという風になるんじゃあないかな・・・コールセンターの回線がビジーで電話がつながらなかったり要領を得なかったりすると、営業にまわってくるころはクレームになっていたりすると対応は時間掛かるし、更に他のお客を待たしてそれもクレームになる悪循環になったりすると本当に大変だよ!」

「ええ、お店への案内の徹底、販社や代理店での対応の徹底、コールセンターでの応対とうちの部への連携の徹底・・・これをきちんとしても問題が起こる可能性があります。そういうことを想定しながら進めます。最後は、営業対応です。クレーム対応は本社営業の重要な仕事だと思っています。うちの奴らもそれは心得ています」

「ユーザーからのクレーム対応はどうする?コールセンターに入ってくる場合、店頭から回ってくる場合があると思うが、一時的に集中して対応が混乱して二次クレームに発展することになっては営業上も問題だろう?」

「ええ、ユーザークレームは難しいです。我々では対応できない時はサービス部の皆さんに手伝ってもらいたいし、それでも足りなかったら、他の部の皆さんにも手伝ってもらいたいのです・・・やはり、当社の社員で応対願いたいのです。派遣のオペレーターもきちんと対応できるように教育して頂けるでしょうが、やはり臨機応変な応対となると社員でないと・・・」

「そりゃそうだな。応対の問題でこじれて報道機関や政府機関に連絡されて、その対応に追わて課題を増やすことになっても困る。ユーザークレームは特記事項に入れておこう」

「大手アカウントには、この対応の依頼を本部担当に説明の上依頼し売り場やサービス窓口に下ろしてもらった上で更に現場に説明と回収の協力をお願いすることが必要になってくると思います。本部から末端の現場まで徹底できるアカウントと現場の担当者が結構うるさくって頭を下げて回らなければならないお店もあります。つまり、商品本部のチーフバイヤーやバイヤーに説明し了解をもらったあと各現場を廻るということになります。販社、代理店と協力して進めることになりますが、事情の説明と頭を下げるのは当社の社員でないとまずいアカウントがあって、その場合人手が足りないということになるかも知れません。その時は、皆さんにお願いしてもよいでしょうか?」

「ああいいよ。でも、皆、国内営業の経験はあるから出来るだろうけど、名刺はいいの?例えば、海外担当が名刺を出して頭下げたんじゃダメだっていうことはない?」

「ええ、問題ないと思います。緊急事態で手分けして対応しているってことと、本社の情報を持ってきたということで理解してもらえるでしょう・・・普通は『大変だよねえ』ってことになるでしょうし、販社の営業も代理店の営業もそれぐらいの関係は出来ています。ただ、中にちょっとうるさ型の人がいますので、それは我々営業の方で対応します」

「手が足りないときは、俺でも芦田でも使ってくれ・・・遠慮するな!」

「ああ、何時でも声を掛けてくれ!」

「有難う御座います・・・それで、次に印刷物ですが・・・PSRにアドバイスを頂き、ざっと必要なものを考えてみました。店頭ポスターは先ほど広報課題で出ましたが、店頭や公共機関の窓口で配るチラシも必要です。店頭で店員にいちいち説明する手間を取らせるわけにはいきませんし消費者への情報が不正確になります・・・店頭での応対マニュアルが売り場の数だけ必要です。リストとして25000店ありますから、30000枚は必要でしょう。あと、法人の経営者と個人店主への公式書面、バイヤーへも公式書面。これは、不良品を発生させたことに対するお詫びと対応についての依頼を入れたものが必要と考えます。文面は営業で考えます・・・流通対応のための印刷物の手配は、そんなとこでしょうか」

「それだけのことを通常営業と掛け持ちで出来る?大丈夫?」

「他の部だってそうでしょう?だいいち、往訪して話す相手は同じですから・・・往訪回数は増えますが・・・それに、リコールの話をしながら『注文が欲しい』とは居えませんが・・・でも、うちの連中は言うかなあ・・・リコールは徹底対応、しかし、他の商品は品質には全く問題ないので『これまで通り扱ってください』というのが基本スタンスです。当然ですが・・・そうしないと反対にブランドに対する不信感をなすがままにすることになります。常務!そうですよね!」

「ああ、そうだな。そのスタンス大事だよなあ。『今回は、万に一つの間違いがあって迷惑を掛けているが、その間違いに対する対応はこれまで頂いた信用に応えるべく精一杯努力するので、これからも変わらぬ取引をぜひお願いしたい』という気持ちで応対しないといけない。藤井の言う通りだ。その態度でいかないとリコールの対応に対しても『大丈夫かなな』『きちんと対応するのかなあ』という不安を抱かせることになる」

「流通対応の件はオーケー。じゃあ、次の課題に行こう!・・・海外流通の対応。これは、海外販売部の森重に担当してもらう・・・幸いにもこの機種は海外に出していないけど、平行輸出や個人持ちで出回っている可能性はある。回収責任はないだろうけど告知はしなくてはいけない・・・どうだろう?森重!」

「はい。アスリートZが海外展開していないのは防水性のサービス対応の課題があるからですが、早く海外展開しようと検討している段階です。海外デイストリビューションの中では販売されていませんが、芦田さんがおっしゃるように平行輸出や国内から個人持ちで持ち出されたものはあると思います。時々修理や付属品の問い合わせがありますが、状況を正確には把握していません。アジアが多いです。数についてはどの程度か検討がつきません。数百なのか数千なのか一万を超えるのか・・・」

「個人持ちは知れているけど業者に平行で輸出されていたら数は膨れるよね」

「ええ、ジョギングに使用できるということで一部輸出業者が扱っているようです」

「結構な数量なの?」

「電源が100v仕様でユニバーサルにしていないので台湾と北米が可能ですが、市場で見ている限りは台湾でたまに見かけるぐらいです。出ているとしても500個とか1000個の単位でそんなに頻繁ではないと思います」

「じゃあ殆どが個人持ちですね?」

「そうだと思う・・・」

「海外での使用はサービス対象外でしょうが、PLの場合でもそのように言えるのでしょうか?どうでしょう?」

「日本国内での使用を保証書に明記してあるのは、性能仕様が日本国内での使用環境が前提であるというの修理サービスの海外での窓口はないのでサービス対応は現地では受けられませんよって断っているということです」

「そのサービスの範囲は、修理だけでなく情報サービスも含むってこともあるのじゃないでしょうか?」

「保証書で言っているのは修理だけど、情報の提供も保証できないってことは常識だよねえ・・・」

「そうだけど、正直なところ『国外での使用に関してはフォロー出来ないよ』ってことなんで、修理や不良交換の窓口も使用方法についての問い合わせ窓口もないよってことが言いたいわけで・・・しかし、リコールまでは想定していなかったなあ」

「社告をする義務もないし、また全世界社告なんてことは非現実的だけど・・・」

「そういう事故を起こしたら、企業はそうせざるを得ない」

「リコール事故って怖いよね!事業、いや、企業の根幹を揺るがす」

「だから品質って大切なんだよ!」

「・・・話を戻すと・・・万一事故が発生したり、或いは、現地のサービス窓口に不良品が持ち込まれた場合はどうするの?」

「製造物責任はないと思います。こちらの予定していない使用環境で使われたのですから。修理もお知らせも出来ないわけで・・・」

「でも、責任はなくても当社の商品で事故が起きて『持ち出したお客さんが悪い』とはなかなか言いにくいよなあ」

「本当に責任はないの?」

「米国なんてPLにはうるさいからなあ」

「青木!それ法務に確認してくれる?」

「了解しました」

「で、取扱い説明書は7カ国仕様?」

「いいえ、日本語と英語です」

「英語?」

「国内在住の外国人の購入使用が前提ですが、正直言って、観光客のお土産で海外へ持ち帰って個人使用もあるかなあというのもちょっとあって英語を入れてあります」

「免税店での販売も促進していますし・・・」

「そうだよねえ・・・」

「じゃあ、情報は現地にも徹底させなくてはならない。当社現地法人、デイストリビューターには国内でリコールをすることを通知してサービス窓口なんかに持ち込まれた場合に備えてもらわなくてはならない。それで、その供えをどうするかだ。もし持ち込まれたら対応をどうするかを想定して告知しなくてはならない」

「大体どういう告知をする?」

「ホームページでの告知が限度でしょう?」

「現地で取り扱っている店がわかっているのなら個別に知らせる・・・平行で出されている数から言って店の数は知れているでしょうし、現場の営業は、平行で入れてきたものを扱っている店ぐらいは知っているでしょうから・・・」

「現実的な対応だよね!」

「ホームページにはどういう風に載せる?」

「保証書通り国内向け商品なのでサービス対象外と言う」

「単純な不良であれば言えるけど、リコールの場合も言えるでしょうか?」

「載せ方、表現には気をつけなければならないよね」

「表現としたら、アスリートZを今国内でリコールしていること。この商品は国内での使用を前提とした仕様の商品で保証対応も国内に限定されていること。しかし、日本で購入して使用しているとか、ギフトで貰って使用しているお客様がいたら注意して確認して欲しいこと・・・こういうスタンスで如何でしょう。一部の店で取り扱っているかも知れないって言うと平行輸出を認めてしまうので問題でしょう・・・それでいかに対応するかということですが」

「対象品をわざわざ持ってきてくれたお客さんには、どうします。良品交換するか?返金するか?同等の海外モデルへの交換をお願いするかになるんじゃないの?」

「アスリートコンセプトの海外モデルはまだないんだよね!ランニング時の使用を想定して対振動性が高く、雨や体温による防水防滴対応したコンセプトの商品は他にないんだけど・・・」

「国内専用モデルって言っているのでそれを渡すわけにはいかないだろう?」

「若干高めの商品でご納得頂くしかないんじゃないの?」

「どうしてもだめだって言われたら?現金を返すか、個別に交換対応するのかなあ・・・でも良品なら使用しても実質問題ない?」

「仕様上品質保証上は、良品の場合、本当は問題ないんだろう?」

「ええ、100ボルト~110ボルトの電源の国なら問題ないし、USB電源を使用している場合は全く問題ないんです。ただ、トランスで降圧して使われる場合、まあ普通大丈夫でしょうが、途上国ではどんなトランスが使われるかわからないので何とも言えないです」

「それに、物理的に使用できるできないって問題だけでなく、当社の出先の窓口でお渡しするのは総合的なアフターセールスサービスのポリシーにやはり反します」

「でも・・・とにかく使用を中止していただかなくてはならないし、問い合わせをしてくれたお客さんには納得いく対応をしなくてはいけない」

「何とか、現地で販売している商品の代替品か返金を交渉するってことだな!」

「アスリート仕様を要求されたら・・・個別対応ってことですね!」

「そうですね!そうしましょう」

「事故の場合はどうする」

「保証書に国内仕様を明記してあるからって言いたいけど、各国のPL法や判例によってメーカー責任の扱いが違うんじゃないか?・・・これは法務部に確認しよう!」

「じゃあ、海外対応についてまとめると、100V販売地区の海外関係の告知は本社と現地法人とデイストリビューターのホームページで行う。加えて、現地営業に平行輸出入の現状を確認する。米国と台湾が要注意。回収促進を第一に対応のポリシーを明確化する。

該当市場のPL法について法務部に確認。この辺を森重がしきる!・・・いいかな!」

「了解しました!」

「・・・」

「次は、物流か?」

「ええ、そうです」

「物流課題は、これも当然のことだけど、ロジステイックス部の富田にやってもらう・・・物流課題は、不良品の回収と良品の提供の手配を中心にその前後の物流管理を行うこと・・・

該当品をお持ちのお客様のところへ引き取り回収し同時に交換品をお渡しする・・・このように出来ればいいが交換品を即用意できるかわからないだろう。これも対象商品が確定しないと作業の内容が明確にならないので手配も出来ず難しいが、仮に充電クレードルだけの交換であれば、良品を東京の物流センターに集結して一括管理した方がいいと思うんだ。交換品は山野の深セン工場で製造することになるのであろうが、米沢の当社で品質確認を再度やった方がいいと思う・・・間に山野の米沢で品質検査する必要はない。山野での検査を2度する必要はない。従って、山野深センで製造、香港で船積み、うちの米沢に入荷、検査して物流センターに入荷という流れになる。製造スケジュール、船積みスケジュール、通関、検査作業、その管理を一気通貫で管理した方が納期管理し易いと思う。山野香港のフォワーダーも日本商船だろ?」

「ええそうです。芦田さんが仰るとおり山野の本社を介在させずうちが直でやった方が情報が早くて間違いがないと思います。伝言ゲームは危ないです」

「製造日程から東京物流センターの納期と数量までを管理する一方で、回収需要を見ながら出荷の手配を掛ける・・・リコールの数量にもよるけど結構きわどい作業になるねえ」

「米沢から直接発送というのはどうでしょう?」

「いや、米沢は販社や代理店への直送は時々やるけどユーザー宅への直送はクレーム調査品以外はやったことがない。販社や代理店の支店、大手量販の店舗、ユーザー宅など多くの出荷先に大量の荷物をさばくのは難しいだろう。梱包材もないし、梱包する人手も別途手配になるし、大量の小口発送の管理も難しいと思う。混乱して2次クレームになるより、輸送と梱包で2日余分に掛かるけど東京物流センターで一元管理するほうがいいと思うよ」

「交換品の需要が一気にきたりすると、個人宅発送は基本的にやらないから物流センターと言えども大変ですね」

「注文残を抱えながら入荷待ちの状態が続くので入出荷管理をきちんとしなくてはいけない。データー上の管理は彼らもプロだから問題ないと思う。しかし、交換品が欠品した場合の返品の管理は大変だと思う。検品して対商品の確認したあとどのように管理するかが問題だ!」

「一時的に数量が増えたら結構なスペースがいるでしょうねえ・・・」

「保管状態にこだわらなかったら、廃棄前提で管理すればいいでしょう。そうするとスペースの問題はそう深刻ではないと思います」

「返品すべてを品質管理で確認するわけにはいかないから、症状が顕著なものを抜いて、あとは一定期間後に廃棄することを前提に管理するのが現実的でしょうね!」

「青木!PL上、経理上それで問題ないか確認しておいて!」

「了解しました」

「早く回収したいけど交換品がないジレンマ状態ですねえ」

「これはお客さんにとっては3つの不便を掛けることになる。引き取り回収の受け渡し、交換品の受け取り、そしてその間に充電が出来なくてアスリートZが使えない不便・・・」

「引き取り回収と交換品のお届けの間がどれ位かにもよるが、クレームするお客様には本体在庫品のクレードルを抜いて対応するしかないだろうなあ・・・」

「でも、そうするとお客さんの対応で差が出ますねえ」

「ああ。それは問題なんだが、一般のお客様には事情を理解頂いてお待ちいただくしかない。本体在庫にも限りあるから、回収数がどれ位かわからないが全てに対応が出来ることはないと思う。一日も欠かさず使わなくてはいけないお客様には緊急ということで対応するんだろうなあ・・・」

「そういった特別対応の状況を見ながら、交換品の入荷、回収品の入荷、交換品の出火、在庫の管理をする・・・物流課題をまとめるとそういうことになります」

「引き取り回収は宅配業者がやるのですよねえ・・・ユーザーは梱包してくれますかねえ?」

「いや、そうじゃないだろう。お客様はそのまま宅配業者に手渡しすればいいんじゃないの?」

「藤井!説明してくれる?」

「はい。引き取り回収の手順ですが、まずはコールセンターで集計したリストに基づき手配を掛けます。回収と交換を同時に一度でしたいところですが、交換品の生産が追い着かない場合は、コールセンターや店頭で受け付けた時にその旨をユーザーに説明しなくてはなりません。とにかく事故の可能性のある商品の回収を優先します。回収が遅れている間に使用されて事故になったんでは何のためのリコールかわかりません・・・宅配業者が訪ねて回収品を受け取る。もし、交換品が間に合っていればその場で手渡す。間に合っていない時は、当社の回収の案内を入れた手紙をお渡しする。その手紙には、改めて協力に対する感謝と交換品が改めて配達されることとその日程の見込み、そして当社問い合わせ先

・・・コールセンターですが、そういったことが明記された手紙をお渡しします。出来れば、宅配業者やお店の担当者が、交換品の配達については改めて当社から連絡があることを伝えて頂くと丁寧で良いのですが・・・宅配業者はエアパッキン付きのパックに入れて東京物流センターへ送る。そして、お店は通常の不良返品のルートでセンターへ返品することになります。ユーザーには交換品の出荷日程が確定したら連絡を入れた上で配達の手配を掛ける。以上のような手順です」

「宅配業者は、どこですか?」

「大和、佐川、郵パック、日通です。地方へ行くと路線によっては得意不得意があるようで一社でまとめて対応というわけにはいかないのです」

「物流センターでの管理のポイントは?」

「回収品のロットを確認した上で商品の状態を見て、品質管理に回して確認するか廃棄に回すかの判断をしなくてはいけない・・・まあ、そんなことはないと思うけど、交換品の良品と混入しないよう管理しなくてはいけない」

「出入りが小口で頻繁で大量になると思うけれど管理をしっかりやって、手際よく確実にやってね!」

「了解しました」

「人の配置はどうする?物流部とセンターの担当者は何人付けるの?」

「物流センターとはこれから相談しようと思いますが、当部は、交換品の手配と入荷管理で1人、回収と交換品の手配はエリア毎に担当を置こうと思います。北日本2人、関東5人、中部北陸2人、近畿3人、中国四国2人、九州沖縄で2人、回収品の入荷と在庫管理で1人・・・で合わせて18人です」

「18人じゃあ物流部で間に合わないじゃない?場合によっては更に人数が必要なことだってあるんじゃあない?幾らシステム管理しているといっても短期に大量の出荷手配が必要な時は増員が必要だろう?その時はどうする?」

「ええ、応援はMAM部内でお願いしたいです。派遣社員でもいいかとも思いましたが、製造とコールセンターと物流センターとの連携を上手くやりたいので社員で対応したいと思います」

「ああ、それはそうしよう。状況を見ながら必要なときは推進室の青木に連絡してくれ。その時の全体の状況をみて調整しよう」

「了解しました」

「・・・次は、製造手配か?・・・製造の手配担当は商品調達部安川!」

「はい!やることは、交換する良品と通常品の製造手配ですよね」

「ああそうだ。しかし、これも不良の原因が解明されて良品の仕様が制定されるのと回収対象が明確にならないとやりづらいよなあ・・・考える基準はクレードルの交換対応を前提に考えて欲しい。基本的には回収対象数量分を生産するということだけど、短期間で100%回収なんてあり得ないだろうから回収状況を見ながら手配を掛けることになるだろう。一番大変なのは、最初の社告後殺到する問い合わせに対してどの程度の数量を見積もって手配を掛けるかということじゃあないかなあ・・・」

「交換品が揃うのを待ってからリコールをしたのではその間の事故の発生が懸念される。従ってリコールを優先する・・・そうですよね常務?」

「そう、とにかくお客様の安全を優先する!」

「だから、交換品の準備を片方で進めながらリコールをするということか・・・」

「最初の社告でどの位の反応がありますかねえ?その読みが難しい。対象数量が大きければ、おそらく少なく見積もっても生産キャパを超えてしまう。山野の深セン工場で対応できないからといって山野の米沢工場やウチの米沢で対応しようすれば、それはそれで大変だ。生産キャパがあって同性能部品が調達できたとしても変動要因になるからその手続きを踏まなくてはならない。実際、製造準備に時間がかかるので現実的じゃないですよね。現実的なのは、山野の深センにはフル稼働で生産してもらって、米沢の品質検査の処理状況を見ながら東京物流センターへの納期を確定していくということですかね。確実で安全です。無理をして混乱させると別の問題が発生します・・・それで、回収状況を見ながら、フル生産でも足りない時は、ラインの拡張の手配を考える。反対に落ち着いてきたら、在庫を見ながら手配を調整していく・・・何れにしても、山野本社の製造手配、山野香港、山野深セン、ウチの米沢の品質管理、そして藤井さんの物流につながる連携を上手くして進めなくてはなりませんね!」

「シンプルなサプライチェーンマネージメントがいいよね!急ごしらえだから・・・難しい複雑なものでは滞るよね!」

「ああそうだと思うよ。そのように心掛けてくれ。頼む・・・最後に平尾のところの商品企画部だけど・・・商品企画部には、回収対象商品のバリューチェーンに関わることは全て把握して欲しい・・・業務管理の青木と同じだけど・・・その上で個別課題で商品に関わる点について補佐してもらいたい。いつもの商品企画者の動きと同じように・・・わかっているだろうけど確認すると、官公庁への報告やプレスへの説明の同行、プレスキット、コールセンターの応対マニュアル、流通向けパンフレットなどの広報原稿の作成、営業が大手取引先のキーマンへ説明する際の同行・・・もちろん、営業担当は説明出来るだろうが、商品企画者が商品について説明するということの意味もある・・・わかるだろうけど・・・ご納得頂けずクレームになるようなお客さんへの説明。そして、本来の業務の不具合の対策の商品企画。その他、リコール作業全般で今割り振った担当業務に入らないないような課題が出てきたら、青木部長の業務管理とともに柔軟に対応してもらいたい・・・それと、平尾には推進管理担当の私の補佐もお願いしたい。結局、商品企画部には、各担当が頑張って対応してくれてもまかないきれずに溢れて出た課題の対応をお願いしたい。雑用っていうんじゃなくて、友軍的に何でもやってもらうことになって大変だけど、バリューチェーン全般に渡って理解できる商品企画に動いてもらって各担当間の潤滑をしてもらいたい

「了解しました。今回、みんなには大変な手数を掛けることになると思いますが、この原因は商品企画のミスですから我々は何だってやります!」

「おい平尾!芦田はそんなこと言っていないよ!俺が最初に言ったように、こういったことが起きるのは、個別の部署とか担当の誰かの責任ということじゃあないんじゃあないか

?・・・もちろん起こった原因はどこかにあってそれに関わった部署や担当は必ずいるわけだけど、じゃあその部署や担当だけの責任かというと、こういったことはそういうことだけでは起きないんじゃないか?その原因の端緒が、商品企画のプロセスの中での見逃しであったとして、そのミスを挽回する責任は組織にある。組織の全員にある。組織っていうのは商品企画部ではなくて事業に関わる組織だから単体の事業部でもなく会社だ!・・・米沢の有川にも言われただろう?・・・聞いたよ!・・・商品企画の責任だからではなく平尾には精一杯働いてもらう。それが商品企画の役回りだからだ。我々がお客様の提供したいバリューは商品を媒体として提供する。そのバリューを運ぶ商品を企画して作って届けるバリューチェーン全般に関わって仕事している商品企画の責任者として、この危機に一肌も二肌も脱いでもらう。そういう理由で精一杯働いてもらう。いいな!」

「はい!・・・常務、有難うございます・・・」

「・・・」

「どう、それぞれの部門の役割りに問題ないか?今の段階で何か抜けていることはないか

?」

「専用の部屋は設けますか?」

「フットワークを要求される俺と平尾の二人が便利なように27階の第3会議室に『リコール推進室』を設けようと思う。松本さんには悪いけどワンフロアー行き来してもらうことになりますが・・・いいですよね!」

「俺はいいさ。文句あるわけない!」


 松本は、役員の専用個室以外に、オーデイオ事業部の3つのマーケテイング部、MOM(モバイル・オーデイオ・マーケティング部)HAM(ホーム・オーデイオ・マーケティング部)PAM(プロ・オーデイオ・マーケティング部)のそれぞれのフロア―に自分の席を持っており、報告は自らその席に行き受けていた。MOMは3フロア―に分かれていたが、その真中の国内販売、海外販売、販売促進部隊がいる26階に席を設けていた。


「今決めたこと、それぞれ明日から取り掛かってくれるのだろうけど、私と芦田は経済産業省に行きリコールを前提に動いている事の報告に行こうと思う。原因が特定されない段階で報告し指導されるのも厳しいところがあるけど、社告の直前に報告して『対応が遅い』と叱られてもまずい。社長に懇意にしている次官に話しをしてもらって、局長か審議官に話を通してもらった上で担当課長に会おうと思う」

「明日早々に出張に出るものはいる?」

「国内販売は、販社と代理店に説明に行こうと思います」

「商品企画は、私が出掛けます。米沢の杉山部長とサンハウスの本部、大阪守口店と博多店に往訪し、出来ればユーザーさんのお宅まで行って現場を確認して来ようと思います。それと、遠藤が家電工業会に行きリコールのプロセスの確認をします」

「ああ、それと・・・俺は、芦田と経済産業省へ行ったあと米沢へ行ってみようと思う。米沢事業所の連中も頑張ってくれているようだし、リコールに取り組む姿勢と方針について、石塚社長の気持ちを含めて話しておこうと思う。この体制も合わせて説明しておく。青木!組織体制と担当の表が出来たらコピーをくれる?最終のつばさで出掛けるので夕方に渡してくれると助かる。データーは有川にメールで送っておいてくれる?・・・じゃあみんな!本当にご苦労だけど、頼むな!」

「了解!」「はい」「シュア―」



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