火災事故が発生。現場からX社商品が見つかった・・・急がれるリコールの告知。その準備
(22)火災事故の発生とリコール発表準備
5月19日(木)
平尾は、朝一番、9時30分のフライトで帰国し、夕刻に汐留の社に戻った。
「平尾!ご苦労さん。疲れていないか」
「ええ大丈夫ですよ。豊田さんはじめ、米沢の皆が精力的に対応してくれていますから・
・・・私はラガーですから疲れません」
「しかし、芦田さん・・・いよいよ明日記者発表ですね」
「うん・・・ただ、ちょっとまずいことが起こってね・・・」
「何です?・・・火災事故・・・起きましたか?」
「そうなんだ。一昨日、昨日と立て続けに発生したのだけど、既に5件がうちの充電クレードルじゃないかって言うんだ」
「被害は大きいのですか?」
「幸いにも人災には無いのだけど・・・一昨日の事故は、一軒屋を半焼しているし、昨日はマンションの洗面台付近を燃やして、煤が家中に回ってひどい状態らしい。過去の5件のうち一件は、8部屋のアパート1棟全焼しているらしい・・・あとの4件は、洗面台や勉強机、食卓台、オーデイオボードを焦がした程度らしいんだけどやはり煤がひどいらしい」
「本当ですか?・・・しかし、どうやって判明したのですか?」
「一昨日と昨日の2件は、お客様相談センターにお客様自身から直接連絡があった。全焼の1件は、消防科学研究所からの連絡があって、原因が特定できていないけど、火元の住民が、充電クレードルで充電中だったって言っているらしい・・・他の4件は、リコール実施の案内を店にしている中で、店対応していたことが発覚した」
「商品交換したのにうちのサービス情報に掛からなかったのですか?」
「そうなんだ・・・」
「7件ですか・・・私がお会いした大阪と福岡の2件を入れて9件・・・潜在的にはもっとあるということですよね」
「ああ・・・事故の情報が入ってくるので、リコール発表を明日まで待たず今日やろうかと思ったよ・・・手配は何とでもなったんだけど・・・資料の日付が明日でも、緊急で一日繰り上げたって言えば問題ない・・・しかし、7件の内容を確認していて今晩報告がまとまるはずだし・・・出来れば予定通りの準備で、正確に発表したいし・・・ただ、この一晩に事故が発生しないことを祈るばかりだよ・・・事故が発生したら危機対応を問われる・・・常務も、それでいいのか悩んでいる
・・・」
「・・・何時わかったんですか?」
「全焼のアパートに関しては、今朝、消防から連絡があって、しばらくして、半焼のお客様とマンションのお客様がお客様相談センターに連絡してきた・・・昼前に直感的に判断していれば、緊急記者会見も出来たけど、事実も確認しないで発表するわけにはいかなかったしなあ」
「そうですよねえ・・・で、7件は、今確認中ですか?」
「うん。現場に言ってもらっている。半焼のほうには、石本部長。マンションには、青木部長、消防には、平尾のところの遠藤に言ってもらっている。あとは、それぞれの、空く地の営業担当に、店と、出来ればお客様のところに行ってもらっている」
「お客様には、明日のリコール発表の件も事前に説明するわけですね」
「そうしないとまずいだろう」
「ええ・・・しかし、記者発表は厳しくなりますね」
「社長には?」
「伝えた・・・常務が、自分が対応しましょうかって一応言ったんだけど、石塚社長は、尚更自分が記者発表しなくてはいけないだろうって・・・それはそうなんだろうけど、事業責任者の常務か、副社長ではダメなのかなあ・・・石塚さん的にはダメだろうけど・・・」
「社長の性分ではダメでしょうねえ。それだけに、きちんとキメないといけないですね・・・記者の質問から記者を守るって言うのではなくて、トップが責任をもって対応すると言明し、整然とリコールを行って、商品を回収して事故を防ぐ・・・これが、我々の責任果たし方ですね・・・」
「そうだよなあ・・・出張帰りで悪いけど、19時から明日の確認会議を事業部全員にするので出張中の進捗内容を確認しておいてくれないか・・・」
「了解しました・・・魂込めてリコールをするのですね・・・」
「そうだよね」
「それでは、明日のリコール発表について、その手順を確認したいと思う。最初に石塚社長から、この取り組みについての方針を話してもらいます・・・社長、宜しくお願いします」
「皆ごくろうさん。既に報告を聞いていると思うが、出火の件数が7件増えて9件になっている。そのうち火災事故に至っているのは3件で、アパート一棟の全焼、家屋一軒全焼、マンションの洗面室半焼に至っている。幸いというのが言葉として適切ではないが、人身事故には至っていない。しかし、リコール発表前で既にこのような状況だということは、既に発生した事故が潜在している可能性も大きいし、今後発生する事故が潜在している可能性はさらに大きいというわけだ。これは、当事業、当社にとって完全な危機である。そのことは、既に松本から説明もあったであろうし、諸君自身も認識していると思うが、危機であることを深く自覚して対応して欲しい。とにかく早期回収に全力を注ぐこと。回収に協力してくれるお客様、取引先を尊重すること。万一事故の発生が判明したら、被害のお客様には誠心誠意対応すること・・・この危機に対応するには、問題を正面から見据えて絶対に逃げないこと。小手先の対応はしないことだ。正面から向かいあうことだ。お客様への安全を確保し、万一安全を確保出来ていなかった事実があれば、その修復に全力を注ぐこと。これが出来て初めて事業の存続が許されることになる。さらに、事業の存続が許されるなら、今後二度とこのようなことが起きることのなく、お客様の生活を豊かにする事業運営を継続できるように、今抱えている事業課題を遅滞なく高い質で実現できるように危機対応と平行して進めることだ。これは大変パワーのいることだけど、それが出来ないと、仮にこの危機を乗り切っても、また新たにお客様に迷惑を掛ける次の危機を招くことになってしまう。従って、ただでさえ難しい課題を2つ同時に進めるということは2倍働かなくてはいけない。私は、2倍働く。だから皆も2倍働いて欲しい。これは、私のお願いだ。皆、頼むよ・・・松本から何かあるか」
「いえ。社長の言うように、私も2倍働くことを約束する。だから、皆も頼む・・・芦田
!明日の手順を説明してくれるか・・・」
「はい・・・それでは、手元に配った資料を見ながら説明を聞いて欲しい・・・まず、10時、松本常務と私が経済産業省商務情報局製品安全課に出向き、正式に製品回収の届け出を行う。既に、状況は、担当の稲本課長と石毛になる課長補佐には報告してあるので、届けを受け付けてもらい、再度回収の手順を説明することになると思います・・・この届け出が終了後、私が連絡しますので、販売促進の広報担当が、伊東部長の指示で経済産業省記者クラブにプレスリリースを行います。また、同時に電気工業会と電子工業会に連絡を入れます。リリース資料は添付の通りです。記者からの質問の問い合わせは、リリースに明記されている2本の直通電話で対応しますが、問い合わせが殺到した場合は、対応できる広報担当にまわして下さい。記者への情報は正確を期したいので必ず広報担当で対応するようにして下さい。広報担当が手一杯の時は、問い合わせ先を確認して、折り返し連絡するように広報担当にメモとともに依頼してください。各メデイアの当社担当を含めて、管理本部の広報へ問い合わせしてくる記者への対応は、広報部にお願いしてあります。営業担当は、代理店や大手販売店にプレス発表をすることと内容をお伝えしてあると思いますが、改めてプレスリリース資料をお渡しして、リリースした事実と内容を正式に正確にお伝えして協力をお願いすること徹底して下さい。プレスリリースコピーは、販売促進の担当に依頼して下さい。記者会見は、15時より、パレスホテルで行います。最近、企業の不祥事に対する厳しい報道姿勢が続いていますので、テレビカメラが入って厳しい質問が出ることが予想されます。体制は、司会は、広報部の宮田部長が行い、石塚社長、松本常務と私芦田が立ちます。演壇は設けません。謝罪をするのに高いところから頭を下げるわけにはいきません。冒頭、宮田部長より火災に至る可能性のある不良品を販売したことに対する謝罪と該当商品の回収の協力のお願いについて記者会見させて頂く旨を発声して頂きます。最初に、石塚社長より、リコールを届け出たこと、該当商品の説明、該当品の危険性、回収の数量、回収の協力要請、不良品を出したことの当社の責任、万一事故に遭われた方への補償対応、そして全社一丸となって徹底対応することを表明する一方、社会に迷惑を掛けることの謝罪をして頂きます。続いて、不良の内容、危険性についての技術的内容について、米沢のMA技術部統括部長の有川さんに説明頂きます。プレスリリース資料には、簡単な図式を入れてありますが、もう少し詳細なものも含めてプロジェクターを使って説明します。内容は、部品変更したトランスの巻線が耐久性の問題から短絡し回路上を過電流が流れヒューズ抵抗が短絡する。その際の火花により、これまたウレタンからエポキシに部材変更したポッテイング材が炭化しそこがバイパス回路を形成し再度過電流が流れ過熱することによってエポキシのポッテイング材がガス化し基盤とポッテイング材の隙間にガスがたまっていく。そのガスがその隙間に溜まりきれなくなり回路基盤との隙間が開き外気に触れた瞬間にバイパス回路のスパークが火種となってポッテイング材とクレードルのケースを突き破りガスを放出しながら発火が20秒程度続くといったメカニズムを有川統括部長にわかり易く説明してもらう。このメカニズムぬついては、皆もユーザー様、取引様から説明を求められることが多くなると思うので正確に把握しておいて欲しい。わからないことがあれば、平尾のところの商品企画担当がわかっているので問い合わせして確認して欲しい。次いで、松本常務より、そういった不良商品の出荷に至った当社の生産管理についての説明と謝罪を行って頂きます。特に、本体とは別に充電クレードルは、開発と設計は当社が主導で、製造は山野電機に委託しているという事実が記者の関心事になると思います。つまり、設計と製造の管理責任の所在についてです。これは、当社のブランドを付けて販売しているので製造者責任という点では当社の責任であることをはっきり表明します。万一にも、委託先下請け先の問題として責任回避をしているような受け取られ方をしないようにはっきりと表明してもらいます。記者から、その辺のことについて誘導的な質問や突っ込んだ質問があれば、委託先との製造契約の問題があれば、当事者間のこととして対応することになるが、当社の商品で起きた問題はすべ当社の責任で対応することを強調します。この辺のことは、大会社が下請けに責任を押し付けたり、責任回避をして下請けいじめをしているというような書き方をされると困りますから・・・製造委託商品について触れないでいいのかも知れないと思いましたが、何処で作っているのかについて明確にしないでいて後に委託とわかったときに、自社製造でないことを隠していたとか、自社製造でないものに自社ブランドを付けて販売しているといったような書かれ方をしてもまずい・・・OEM、ODM、製造委託を知らない経済記者はいないと思うが、このところの企業不祥事の記事の書かれ方を見ているとこの辺のところにも気をつけなくてはいけないと思います。必要なこと必要なだけ誤解を生まないように誠実に正確に説明発表する・・・常務お願いします」
「了解!」
「回収の体制については、私が説明します。社告は、新聞雑誌媒体社告、当社ホームページ、店頭ポスター、店頭チラシで行い、フリーダイヤルで対応する旨を説明します。回収は、当社委託業者、宅急便業者ですが、がお客様宅へ出向き、代替商品と交換に引き取ります。代替の充電クレードルは、在庫だけではもちろん足らないので生産します。これは、山野の中国工場で生産しますが、米沢の豊田部長が指揮をとって、うちの生産管理と品質管理によって生産します。今回問題不具合に至った生産管理上の問題があったので、変動と考え再度量産認定を行って生産を再開した。その商品は、しばらくの間、米沢で全数検査を行った上で横浜の物流センターに入荷され回収品との交換のため出火される。この生産スケジュールは、初ロット1000個が23日の月曜日の午前中に横浜物流センターに入り夕方出火可能となります。その後は、デイリーで3000個入荷が続き、12万個まで継続生産を予定しています。この方針は、今回の我々のリコールと状況が似ている電気シェーバーの回収実績では、対象商品の80%が1年目に良品交換して回収され、そのあとは、回収ペースがぐっと落ちるとのことであったので、12万個以上の作り込みは、回収状況を見ながら対応することにします。回収状況が早ければ増産しなくてはいけないし、遅ければ、過剰生産で長年在庫すれば再度品質問題が出てくる。従って、回収状況をみながら生産に対応していくことになります。その間、米沢の担当者には山野のシンセン工場に常駐してもらいます。明日金曜日に記者会見しそれが報道された瞬間から問い合わせや交換依頼が入り出すと思う。夕方のニュースで報道されるほどニュース性があるかどうかだけど、PRSの予想であるが、最近の企業の不祥事続きの中では、ニュース性は高く、記者会見にはテレビカメラが入り、夕方のニュース、7時のNHKニュース、9時以降11時まで、NHKや民放のニュースや報道番組では放映される確立は高いとのことです。その場合のフリーダイヤルやホームページへの問い合わせはちょっとすさまじいものになると予想されます。そして翌朝は、新聞社告を見ての問い合わせ、テレビとラジオのニュースは、5時から始まります・・・加えて、当社支店、サービスセンター、販売店、取引先への問い合わせ・・・これを上手く管理して進めなくてはいけない。ここでの対応が悪いと2次クレームとなります。この対応について説明します・・・問い合わせの受け付けは、全てそこに添付した受付票で管理します。フリーダイヤルに掛かってきた電話とホームページへの問い合わせは、リコールコールセンターで受け付け、この受付票に記入してオペレーターがデーターベースに登録します。問い合わせは、他社の過去の実績では、コールセンターのフリーダイヤルへの問い合わせに集中するようです。体制は、東京に100回線、米沢に100回線の合計200回線用意してあります。本日は、記者会見以降21時まで、明日以降しばらくは、8時から21時まで対応します。時間外は、テープで受付翌日朝一番にコールセンターから電話を入れます。全ての問い合わせについては、該当商品をお持ちの方もそうでない方も問い合わせて頂いた方全員データーベースに入力します。・・・200回線を用意していますが、一時的には恐らく足らないと思います。東京と米沢ともに回線設備とオペレーターの確保からこれが名一杯でした。回線をオーバーした場合、MAMの社内電話に流れるようになっています。MAMの回線でも受けられない場合は、テープで回線が一杯の旨の案内が流れます。そうなると、大代表や支店、各地サービスセンター、さらに管理本部、HAM、PAMの電話を調べて掛けてくるお客様がいます。そういった場合は、社員が受けてこの受付票に記入してもらいます。特に、我々MAMにはあふれた電話が掛かってくる可能性が大きいと思います。NHKのニュースが放送された直後や明日の朝刊が配られたあと午前中の問い合わせはちょっと予測がつきません。応対は落ち着いて対応するように・・・応対手順と標準的な応対方法は、受付票に書いてあります。その手順にそって説明します。コールセンターのオペレーターの皆さんにも同じ内容を説明しましたし、他部門の社員の対応が必要な場合に備えて、イントラネットにも掲載しておきますが、MAMでの対応は多分必須ですのでここで確認しておきます・・・電話を受けたら、まずは、落ち着いて話を聞くことを基本として下さい。特に興奮してクレームされているお客様には、落ち着いて話を聞くことが大事です。万一にも相手の話をさえぎってこちらの聞きたいことを要求することが無いように気をつけて下さい。記入する際は、受け付け時間を必ず記入してください。まず商品が該当品かどうかを、手順に従って確認して下さい。代替品の発送は、受け付け順に手配します。まず、『お電話有難う御座います。大変お手数ですが、お持ちの商品を電話口までお持ち頂けますでしょうか・・・では、商品の底面を確認頂けますでしょうか・・・そこに当社の社名、品番、製造番号が刻印されていると思います・・・』という手順で商品名、品番、製造番号を手順の書いてある通り確認して下さい。該当品でない場合は、該当品でないことと安全のお使いになれることをお伝えし、お問い合わせ頂いたことの御礼を述べて、今後も当社商品を末永くお使い頂くことをお願いしクロージングとして下さい。該当品である場合は、先ずは、発火の可能性があることをお伝えし、直ちに私用を中止し以降絶対に使わないようにお願いしてください。それから、該当品を引き取らせて代替品と交換させていただくようお願いして下さい。『交換させて頂きたいので宜しくお願いします』と言った申し出をして下さい。これは、お客様の中には、不良品を買回収して問題を隠蔽するのではないかといった懸念を持つ方もいて、原因と責任を明確にするまでは回収には応じないという考えをお持ちになるかたが居られるからです。あくまで当社は、隠蔽する氣などなく、原因も発表し責任もとる方針であること。そしてお客様の安全とご不便を解消するために、不具合品を回収させて頂き代替品と交換させていただくという趣旨を、雰囲気から感じられるような応対をお願いします・・・お客様に回収と交換をご了承頂けたら、回収方法について説明して下さい。住所やお名前等を確認するのは最後にして下さい。個人情報については敏感になっていますので、心証を害して態度を変えられることのないように気をつけて下さい。次いで、回収方法を説明して下さい。最初に、当社指定業者がお宅に出向き、該当品を回収させて頂き代替品をお渡しする方法、或いは購入店かお近くの販売店にお持ちいただき交換する方法の2つの方法をお選び頂くようにして下さい。販売店に関しては、大体の大手量販店の名前を挙げて対応できることを説明して下さい。引き取りの了解を得られましたら、住所、お名前、電話、引き取りの日時は、改めて連絡させて頂きご都合を確認させて頂いた上で引き取りにお伺する旨を説明して電話をクロージングして下さい。代替の商品には、当社からのお詫びのメッセージを入れてセットアップしてあります。また、回収当初からしばらくは、代替品が追いつかないので引き取りと同時に代替品をお渡しできない状態が続くと思います。その場合は、別途¥1000の音楽ギフト券入りのメッセージをお渡しします。このギフト券は、加盟の店でCD等ソフトの購入に使えます。また、メッセージには、USB充電での対応のお願いと注意についても書いてあります・・・ということで、代替品をお待たせするお詫びとしてお渡しします・・・それから、厳しくクレームされる方・・・不具合品をお持ちの方もそうでない方でも、責任者の説明を聞きたいというお客様に対しては、コールセンターの対応も同じにしていますが、サービス担当に回して下さい。石本部長の方で対応していただきます。基本的には、課長で対応し、それでも厳しいお客様には石本部長をはじめMAMの全部長で対応致します・・・というわけで、受付票は、コールセンターで書かれたもの、ホームページに受け付けたもの、当社社員が本社、支店、販社、サービスセンターで受け付けたもの、また、代理店、販社で受け付けたものは、該当品を『持っているか持っていない』を問わず全て青木部長の業務管理担当でデーターベース化した上で、回収交換手配や、問い合わせ履歴、クレーム交渉の管理をします。次に、『火が吹いた』とか『火災事故があった』という申し出があった場合ですが、コールセンター、ホームページ、当社内及び販社の本社支店、販売店、販売代理店取引先へ連絡があった場合は、そして皆さんが受けた場合も全てお客様の連絡先を確認した上でリコール推進室の業務管理担当の青木部長の担当者に連絡が入れ、選任の課長が折り返し電話を入れることになっています。ることになっています・・・対応の基本は、先ずは、『お怪我はありませんでしたか?』と確認した上で、事故の状況を確認して問い合わせ先を確認した上で選任の担当者が折り返し電話を入れることを説明して下さい。その後の対応は、業務管理とサービス課長4人で組んだお客様補償担当が当ることになります。担当は、業務から、赤松課長、金子課長。サービスから所課長と杉山課長。この4人を青木部長がまとめて対応に当ることを基本とします。事故の発生件数については全く予想がつかないので4人で十分かと言えば今のとところわからないというのが正直なところです。今のところ既に9件発生しています。多発して4人では対応出来ないときは、MAMの課長で増強して対応することにします。この担当には、『お客様補償担当』の名刺を持って個々のお客様に対応してもらいます。その対応について概略を説明しますと、事故のお客様には、電話でお怪我のないことと事故の概要を確認した上で、先ずは訪問したい旨をお伝えし訪問日時を決めて訪問してもらいます。お客様によっては、怒り心頭で猛烈にクレームされる方も居られると思いますが、それは、当然で、生命が危険にさらされ、財産が損傷し、生活空間が荒れ、時間も手間も掛かることを我々の不手際で強いられるわけですから・・・そのことを理解して根気強く話をお聞きし訪問する日時を決めて対応願います。一般のクレームと同じで、電話では強行でもお会いすれば理解を得られるはずで、当社が起こした問題は、当社がきっちり対応するという姿勢を示せば少し落ち着いて当社の対応をご理解頂けるはずです。そのためにも、お客様に選任で対応するという安心感を与えるためにも『お客様補償担当』の組織と名刺は必要かと思います。社内組織的には、現業の担当と2重の業務となりますが、課長の皆には宜しくお願いしたい・・・大きな事故については、別途注意して欲しい。当然ながら、お客様に負わした被害は金額的にも精神的にも大きいので、対応は難しくなる。どうしても感情的になられがちなので落ち着いて対応して欲しい。補償は、PL保険で支払うことになります。その場合、製造物賠償責任法の規定にそって事故の損害を鑑定し賠償することになりますが、そうすると損失物の耐用年数から原価償却され、評価額についてとても被害者が受け入れられる額ではなかったり、或いは、思い出の写真や骨董品で金額を認定しづらいものが出てきてどうしても感情的になってしまう。或いは、精神的なダメージなども、過去の判例にそって認定するとどうしても被害者の受け入れられない補償内容や金額となってしまう。従って、客観的な被害額を示してから示談となるそうだが、この辺の交渉が一番難しいらしい。これは、当社の法務部の担当者でも経験がないのでわからない。日本東京海上火災の担当者にフォローしてもらわなくてはいけないが、この対応は、社長と常務と話しあったのですが、法務課題として対応するのではなく営業課題として対応したいと思います。従って、基本的には、青木部長のところの業務管理での対応を基本に、事故の発生件数が多い場合は、そちらで管理しながら被害者のお客様選任担当に課長の皆さんになって頂き対応してもらいたいと思っています。ただ、実際の事故の発生件数や内容がわからないので、状況を見ながら対応については修正したいと思いますが、被害者のお客様が不安に思われたりすることがないようにすることを心掛けることを第一とします。選任対応する課長の皆さんには、対応の基本手順について別途日本東京海上火災の担当者からの説明を受けて頂きますが、皆さんにも概要をわかって頂いた方が良いと思いますので説明しておきます・・・先ず、先程申しましたように、怪我の有無を確認して頂き、アポイントをとって訪問して下さい。訪問は、二人で行って下さい。一人での訪問は、誠意がないという方も居られるでしょうし、興奮される方も居られる。二人だと何かと対応できます・・・次に、心から謝罪し、補償は、当社が誠意を持って対応することをお伝え下さい。軽微な事故の場合でも、対応手順を間違えないように、それに保険の手続きのこともありますから、必ず日本東京海上火災の担当者の指示を仰いで下さい。手順としては、事故の被害について明確にすることになります。建物の損害は、鑑定士に評価してもらうことになります。その他消失物は、被害者に書き出してもらうことになりますが、これは、下着一枚に至るまでリストアップして頂きます。難しいのは、骨董品、アルバム、記念品や思い出の品です。骨董品は、鑑定書のあるもので別途写真が残っていたり、友人知人の証言で所有が確認される場合は、鑑定士はすぐ評価できます。また、購入店がわかる場合は販売履歴で確認します。そういったものがない場合は、鑑定士が同等の骨董品から判断しますが、なかなか納得されないのが実情のようです。思い出の写真といったものは損害額を鑑定すると取得価格になってしまい、これはとても被害者の理解を得るものでっはありませんので、金額で提示することはしない方が良いとのことです。そうなると、その他にもプレゼントされたものの評価も難しくなるですが、そういった思いや取得額と評価額の差を埋めるために『お見舞い金』で対応しようと思います。しかし、この認定と交渉は、大変難しいので、必ず損害額をすべてリストアップしてから保険会社の担当者と相談しながら進めることになります。さらに、慰謝料ですが、これは、精神的な被害に対してお支払いするものですが、これも法律に沿って対応するととても被害者の納得できるものではないのですが、さりとて当社が法律の解釈を超えてその基準を決めることは出来ない。その為の緩和策として見舞金があるのですが、これとて社会通念を大きく逸脱する勝手なことは出来ない・・・精神的苦痛という手点で言えば、『死ぬ思いをした』という精神的苦痛の補償の判例は、・・・道路沿いの民家で、深夜就寝中に大型トラックが塀を突き破ってきて枕元で止まって死ぬ思いをした・・・という事例では、その補償は10万円を切る金額だったそうである。古い判例なので貨幣価値が違うが、大体その程度だそうだ。こういった法律論を最初から持ち出したのでは、お話し合いは進まない。それと、損害賠償法の解釈で、一つの被害に対して一つの保険しか使用できないので、仮に家が全焼した場合、お客様の保険と当社のPL保険を使って取得時の価格の家を再度建て直すということは出来ない。保険は、鑑定した損害額しか出ないので、消失した家を全く元通りにするいは負担が生じる。賠償責任から言えば、実は当社が全額負担する必要もないのであるが、そうも行かないのでさっきの見舞金で対応することになる。従って、その話し合いは難しい。被害者の皆様への公平な対応も配慮しなくてはいけない・・・また、保険は当社に旧称される。被害者の保険を使えば、その支払われた額は当社に支払いを求められる。当社はPL保険でそれを支払うわけであるが、PL保険額を上回れば、自腹ということになる。但し、今回の事故の原因が、山野電機の品質管理責任で当社に落ち度がないということであれば、当社は山野電機に契約不履行でさらに求償することになる。同社は、自社のPL保険や資産を使って当社に支払うことになる。 今回の事故の原因は、同社の品質管理の問題と評価し同社も認めているのでそのような対応になると思います。現在法務部が対応を同社と話し合っています。その他、広報費用や回収費用についてもありますが、その辺をどうするかはこれからです。山野電機をつぶすことになってもいけないし、さりとて我々の責任のないものを払うこともない・・・山野電機は、国内3億円のPL保険に入っていて、保険会社も当社と同じ日本東京海上火災なので事務的にはスムーズに進めることが可能だと思います。また、資産資金的にも旧東京工場の土地売却益やら米沢の工場予定地があるので、総額の見積もりは性格には出来ないがまず問題ないと思っています・・・そして、人身が起こった場合ですが、これは法的に非常に難しい課題だけど、法的には、基本的には先程と同じ基本方針です。但し、物損と同じというわけにはいかないのは当然で、それなりの対応はしなくてはいけない・・・ただ、人身死傷事故だけは起きて欲しくないと祈るばかりですが・・・。以上が、被害や損害の対応についてのアウトラインです。被害者のお客様に直接対応しない皆もリコール業務を進める上での法的背景として理解しておいて欲しいと思います。・・・コール件数は、窓口別に管理し表示していきます。また、該当商品の発見件数、回収完了件数は、業務管理部で管理し表示するとともに、イントラのリコールの掲示板にアップデートしていきます。以上、長くなりましたが、回収の体制と事故が発覚した場合の対応について説明しました。それぞれの対応については、順次マニュアル化してイントラにアップしていきますが、問題は、想定していないことが結構あると思います。その際は、青木部長か私にいつでも聞いて下さい。問題の関係者に情報を集めて判断したいと思います。最後に、広告代理店PRS社の方では、企業の不祥事続きでニュース性も高く、記者会見後、夕方のニュースから断続的に11時のニュースまで放映されると予想しています。放映されるたびにコールセンターに問い合わせがあり、東京と米沢のそれぞれ200回線が溢れることの対応もあるだろうし、取引先や流通からの問い合わせの対応、そして事故の発覚の対応に断続的に追われるだろうと思われます・・・明日も、朝刊が配られ社告を見たお客様、そして、テレビやラジオのニュースも5時から始まるので対応しなくてはいけません。コールセンターは、8時から22時までで、その間はテープでの案内となっています。ホームページでは24時間受け付けていますが、電話は時間を限定しているからご不満な方もおられると思います。クレームもあるだろうからコールセンターからあふれて回ってきたものへの対応には配慮して頂きたいと思います・・・しばらく・・・どの位か正確にはわかりませんが、2週間~1ヶ月と見ていますが、冒頭に言いましたように頑張って欲しい。起こった事故の対応、事故の防止のための回収を最優先としますが、現業も忘れずフォローして欲しいと思います。2倍働くことになると思いますが、どうか理解して下さい・・・事業の危機と考えて下さい。職位が上位のものほど一肌も二肌も脱いで下さい。とにかく初めてのことなので混乱もすると思います。混乱した場合、そういった時ほど私や常務にその課題を振って欲しい。遠慮しないで下さい・・そうですね常務!」
「・・・ああ!この危機を乗り切るには全員の力が必要だ。私は2倍働くことを約束する。皆も協力して欲しい!頼む」




