製造下請けメーカーの山野電機。そのプロファイル!
(13):協力メーカー「山野電機」
松本は、有川を伴い山野電機に向かった。
山野電気は、最上川を挟んで米沢盆地の東側の工業団地の中にある。X社の工場移転に合わせて米沢移転したが、その後米沢に移転してきた大手電気電子メーカーの協力工場として部材や半完成品を納めながら事業を拡大してきた。自前で土地を手当てする大手メーカーは別として、工業団地のインフラを利用している中小のメーカーの中では規模の大きなメーカーになっていた。
「有川!取引する会社を見極める時って何処見る?」
「財務諸表よりも、まずは挨拶する社員の声と顔、それにトイレです」
「そうだよな。細かくインスペクションすればいろいろあるだろうけれどやっぱりそうだろうなあ」
「製造ラインを見るより早いです」
「銀行に勤めている友人がいるんだけど、訪問先では必ずトイレを借りるそうだ。彼が融資の条件を変更することがあって、それは厳しい時も緩める時もあるそうだが、部下に説明を求められると『俺の目利き』って答えるそうだが、それはトイレを見ての結果だそうだ」
「わかるなあ」
「山野はどう?」
「戸塚さんが辞められてから駄目です」
「社長はそういうこと気遣わないの?最近会ってないけど・・・年始以来だ・・・」
「ええ、自分の部屋と車は光っているんですけどねえ」
「我々に会うときは結構立派なこと言うじゃないか・・・まあちょっと底が見えているところあるけど・・・」
「そうです・・・普段はあまり見掛けません。
社内でも現場に出てくることはあまりありませんし、地元の会合にも出てきません。なくなった会長はそういうのに熱心だったらしいのですが・・・」
「で、何やってるの?」
「自社製品と海外OEMです」
「自社製品って、納入メーカーのコピーになるんじゃにないの?」
「そうです。製造技術は別にして、要素技術でオリジナル技術は持っていませんから」
「じゃ、お客さんの仕様に何かちょっとしたアイデアの付加機能つけて、デザイン変えて
・・・」
「『ヤマノ』ブランド付けて・・・」
「うちの商品に対してはどうなの?見ないけど・・・」
「さすがに、うちの商品のコピーはしてこないでしょう。売上シェアや分別というより、ただ『怖い』みたいです・・・」
「創業以来の取引先だから・・・」
「そうです」
「だったらもっと品質に気遣って欲しいところだなあ」
「本当です・・・あと、海外OEMです。アメリカのプライベートブランドのローエンドオーデイオメーカーとの商売に熱心見たいです。社長自らアメリカ行って商談し、米沢で企画会議をやって、香港とシンセンで生産立会いをやって忙しくされています」
「海外が好きなんだ」
「会長が存命の時に、海外部長で大きな販売実績を残したことがあるんですよ?」
「ああ、聞いたことある。ウオークマンのコピー商品だけどデザインが斬新だったので人気で結構売れたってやつ」
「そうです。あの時から、デザイン、自社ブランド、世界制覇が目標だそうです」
「そりゃすごいなあ・・・うちだって、ミッションの中にそれが入っているけど、ちょっと達成できてないんじゃないの?」
「本当ですよねえ」
「やはり温度差あるようだね」
「ええ」
山野電気の米沢本社工場は、工業団地の一番奥にある。正門を入ると右に納入業者用の駐車場がありその奥に工場が広がっている。
左には小さなロータリーがあって本部社屋の
車寄席がある。そしてその横が、銀行、監査法人、弁護士など管理本部や社長に会いに来る客が止める駐車場がある。その駐車場の一一角に社用とペンキで書いたあるのが、山野社長の駐車場である。
山野はトヨタのレクサスに乗っている。ベンツ、BMWの高グレード車に乗りたいのであろうが銀行の手前自重している。というのが本心であろう。普段の話し振りから明らかである。
「我々は昔から右だよね」
「そうです。現場に用事があって来ますので
」
「社長はいるようだね。あのレクサス、そうだろう?」
「ええ、ベンツより良く走るって、負け惜しみを言っていました。常務のアウデイ・・・
クアトロでしょう?もっと走るって言ってやってください」
「バカ言うんじゃない!」
「中川さん。発火のメカニズムについて、おおよそこうではないかっていう仮説が見つかりました。山野さんの方では如何ですか」
「両者の仮説を精査したうえで、なるべく制度の高い不具合の理由でリコールを進めたいと思います」
「リコールをしますか?我々は、まだ多発につながる不具合と思っていません」
「中川さん!かなり温度差があると思います。
発火事故が同一機種の同月ロットで2件あって、部材変更に関して品質管理プロセスを踏んでいない状況で合理的な発火のメカニズムが判明したのですよ。どのように考えても危機ですよ。リスクについて語っている場合じゃないですよ」
「仮設の段階でリコールされるわけですね。
それはX社のご判断ですね?」
「中川さん!・・・」
「中川さん。我々は発火事故が2件発生した段階でほぼリコールの決断をしました。その結果だけでリコールをするというのも企業としては一つの見識でしょうが、その場合同類の商品を全てリコールしなくてはいけない。それではひょっとして問題ない商品を御持ちのお客様まで混乱させることになる。流通も大混乱になる。結果当社の信用は傷つき業績にも影響が出る。その結果、これまで事業に協力して頂いた皆さんの事業にも影響を与えることにもなる。我々社員の家族にも影響が出る。そのようなことのないように、出来るだけ対象と内容を明確にしてリコールしたいとぎりぎりのところで対応しているのです。その間に事故が発生する可能性もあるわけです。お客様の安全を犠牲にしてリコールの準備を進めているわけです。その許される最短の時間内で最高の準備をするために、米沢工場は三日徹夜で作業しました。私なんか。よく調べ上げたと思っています。自画自賛ですが奇跡的だと思います。中川さん。リコールは御社と協力して進めなければいけないことも沢山あります。それにPLの問題も含めて御社との契約の内容にも関わります。ぜひこの、事の重大性をご理解頂き対処をお願いしたいと思います。有川に、我々の調査結果を説明させますのでお聞きになってください。社長が居られるのなら社長にもお聞きいただきたい」
「そうですか・・・わかりました。社長は、出張に出掛けると言っていましたので、設計の渋川部長に同席してもらいます」
「常務と顧問は聞かれなくていいですか?」
「まずは内容確認して私から報告します」
「中川さん。まだことの内容についておわからりになってない・・・」
「だから、詳しくお聞きしないと・・・」
設計部長の渋川は、退社した戸塚の下で働いた設計者で戸塚が育てた。渋川も戸塚のモノ作りを信望し戸塚のような設計者になろうとしてきた。戸塚は、設計者として良くしゃべる方であったが、渋川は少し口が重い方であった。渋川の方からしゃべるということがあまりないので、X社の社員も、打ち合わせにおいて「理解されているかな」と不安に思うことがあった。しかし、確認してみると明確な答えが返ってくるので信頼感はあった。
戸塚が山野電気を退社した後、社長の山野一郎とごますり社員による緩んだ事業運営の中で、渋川の設計の手堅さが最後の信用であった。
有川は、渋川が来るのを待った。技術的な内容と問題と、今回の発火事故の重要性の本質について渋川ならわかると思ったからであった。
「松本常務さんもご苦労様です。有川統括部長、何時もお世話になっています・・・ご迷惑をお掛けして申し訳ないです・・・」
「何もうちが全て悪いわけではないからね。
部材メーカーの責任は大きいと私は思っている・・・設計はそんなに気にすることないんじゃないの・・・とにかくXさんの調査の結果を聞こう」
「・・・じゃあ説明させて頂きます。まず、不具合品の発見ですが、今週の月曜日、5月9日に大阪の販売代理店の社長から不審な不具合品の返品を2個発見したという報告が、直接松本のところに来ました。別々の地方で販売されたものですが2個ともに同じ発火の形跡があるということでした。それで、松本と商品企画の平尾が直に大阪に出向き確認しました。商品からの出火という事実は、お客様の安全を大きく脅かす不具合ですので、素早い対応が必要です。それで直接に出向き、
事実の確認とその事実のとり扱いについて事実を知っている当事者と代理店に確認するために出向いたのです。これは、その事実を隠すためではありません。その事実が一人歩きして流通や世間が混乱するのを防ぐためにその取り扱いについて慎重に対応するよう依頼するためです。それと、もしその代理店へ販売したロット特有の不具合であれば、今後多発した場合の心構えと対処についてあらかじめ確認して問題が不要に拡大するのを防ぐためです。そのためにすぐに訪問しました。リスク管理です。松本と平尾が現物を確認したところ同じ発火の現象が見られたので、翌日10日火曜日に平尾が現物を米沢に持ち込みました・・・米沢工場では、現品の状況を確認した上で当社が保管している承認サンプルと比較し、部材や性能機能の違いを比較し原因に迫ろうということになりました。用意したサンプルは、量産承認サンプル、事故品Aの2004年11月の第1ロット、第2ロット、最新の2005年4月の第1ロットの各3個です。まず、発火した2個についてX線で内部を確認しました。部品の位置と発火の位置と噴出の経路を確認しました。結果は、部品の位置は仕様通りでした。発火は、ヒューズ抵抗のところで起こっていました。そこからポッテイング材を抜けて、さらにケースを溶かして3ミリから4ミリの穴を開けて外に噴出していました。X線での観察では、そこまでしかわからないので、分解して部材一個一個について他のサンプルと性能比較してみることにしました。ケースを開けて、最初に気づいたのはポッテイング材の色が違うことでした。我々は、ウレタン材にも着色したものがあると思い、材質が違うとは思いませんでした。そして、各サンプルの使用部品と材料を一覧にして、仕様通りの部品が品質規格に合致して使われているかを確認しました。
その結果、発火した商品は、ヒューズ抵抗が溶断し、さらにトランスとポッテイング材が他のサンプルと違い、そのトランスは、1次巻き線が短絡していました。次に、充電中にトランスが短絡したと仮定して回路に過電流を流してみました。すると、設計通りヒューズ抵抗『バチッ』っと言う音と共に溶断し電流が遮断されました。設計通りでした。ただ、充電中という仮定でしたので、そのまま電流を流し続けました。すると、事故品のロットサンプルと最近製造のロットサンプルでは、ヒューズ抵抗で遮断されたはずの回路上を再度過電流が流れました。さらに、継続して電流を供給し続けていると発熱しだし・・・当然ですが・・・それでもどのようになるかと観察していましたら3分程度で煙が出だし、さらにその状況を放置していると5分前後で発火に至りました。火は、30センチから50センチで5秒から10秒程度続きました。過電流でヒューズが回路を遮断しても発火の可能性があると確認できたのですが、この時点での疑問点は、何故トランスが短絡するか
?溶断したヒューズ抵抗上を電流が流れるか
?そして、事故消化の機能を持つ難燃剤のウレタンでポッテイングしてあるにもかかわらず何故発火したか?さらに、トランスが承認部品と違う点。ポッテング材の色が違うが、これは単に色が違うのか、仕様であるウレタン材とは違う材料なのかという点。最後に、この2つの部材の変更は5M変動に当たるのに御社から変動届けが出ていない点です。部材の変更については、御社の製造現場への確認により現場の独自判断で変更されていて、しかもポッテイング材は、色変更ではなくウレタンからエポキシ材に変更されていたという報告を受けました。それで、当社としては、エポキシのメーカーに問い合わせて特性や何年性について確認しながら発火の現象を観察し続けました。その結果、確かにエポキシは熱を持っても燃えなかったのですが、ヒューズ抵抗が溶断する時の熱・・・大体700度くらいですが、その熱で3秒程度燃焼してヒューズ抵抗周りを覆っているエポキシが炭化させます。その炭化したところがバイパス回路になって導通し過電流が再び流れ熱を持つことがわかりました。しかし、燃えないエポキシなのになぜ発火するのかがわからず、さらに観察を続けて漸くわかったのですが、炭化したバイパス回路を過電流が流れ加熱が続き、エポキシがガス化して炭化水素系のガスが膨張し、その膨張が続きエポキシに穴が開く。穴が開くと酸素が流入し着火すると同時に噴出したということがわかりました。さらにトランスですが、製造の品質検査では正常な特性を確認し、ユーザーも当初は問題なく使えていたにも関わらず何が原因で短絡するのかということを突き止めることだと考えました。部品変更されたタイガー製のトランスについては、当社の香港現地法人の購買担当者に確認したところ、同社の台湾製造の部品は別として、中国工場製の部品は品質が悪くて当社グループでは採用していないということでした。安いらしいですが・・・巻き線の技術は難しいことは、御社もご存知でしょうが線材の質や巻き方に問題があったり、被覆しているウレタンが傷ついたりしていると、経年変化で巻き線が短絡したり、巻き線間が絶縁不良を起こし短絡してしまうということが見られます。同社は、この辺の品質管理がかなり甘く当社の香港法人では購買業者リストから除外されています。それで、トランスの耐久性が怪しいと睨んで耐久性試験を行いました。方法は、30分の急速充電を繰り返す方法です。最大の付加が掛かる条件です。すると充電サイクル20回から25回で短絡が再現しました。発生率は、その11月以降では3分の2です。サンプルの数量は各ロット3で、不具合が出た11月、2月、最新の4月のロットです。それ以前のサンプルは、量産承認サンプル、部材変更直前の2004年10月のサンプルは全く問題はありませんでした。次に短絡した後も100Vを流し続けてビデオ撮影しました。すると、巻き線が短絡したクレードルは全て発火に至りました。回路に直接電流を流し続けた場合と同じ発火が再現されました。即ち、トランスの絶縁不良や巻き線の巻き方の不良、それに巻き線自体の品質不良が原因でトランスの巻線間が短絡するといったトランスの不良によって回路に過電流が流れヒューズ抵抗が溶断する。その溶断する時の短い燃焼でポッテイング材のエポキシが炭化する。その炭化した部分がバイパス回路となって再び導通し過電流が流れ熱を持つ。その持続的な熱によりエポキシがガス化して膨張し続ける。そして、エポキシに穴が開き酸素が流入すると同時に着火し噴出した・・・というのが我々が導き出した発火のメカニズムです。3日徹夜で今朝この結論に至りました。ただ、この後もこの説を裏付ける品質試験を続けていますが、公表する内容としてリコールの準備を進めます」
「おわかり頂けましたか?」
「でもね、松本常務!。我々は、あのトランスもエポキシも、アメリカ向けOEMで相当数の実績があるのですが、問題は起こっていません」
「仕様が違うのではないですか?急速充電仕様じゃないのじゃないですか?」
「確かにそうですが・・・」
「当社として山野電気さんに申し入れしたいのは、まず、アスリートXの充電クレードルの製造を中止して下さい。次に、タイガー社製のトランスとエポキシを使ったロットを確定してください。我々の試験からは、一応2004年11月以降ということになっていますが、事実を確認して下さい。量産開始から全てのロットについて確認して下さい。この確認には、この2つの部材以外に他の部材についても現場の判断で変更して変動の報告がなされていないものがないかも確認して下さい。リコールに対しては御社に協力してもらわなくてならないことが多々あると思いますので、社内にリコール対策チームを立ち上げてください。もちろん、有川が今説明したメカニズムについてもご確認願います。また、回収の再に該当機種と交換する商品の製造対応をお考え下さい。その対応には有川の部隊から担当者を派遣しますので一緒にやらせて頂きます。最後に、これはPLの問題ですので御社としてどのようにお考えか経営からお聞きしたい。こちらからの要求もありますがまずはお聞かせ頂きたい。それと最後に、御社が加入しておられるPL保険の内容についてご連絡頂きたいと思います。以上の内容を文章にして私の名前で正式に申し入れますが、行動はこの後すぐに起こして頂きたいと思います。当社のリコール対策室は、私の責任とします。現場は、MAM統括部の取締役である芦田が仕切ります。弊社も創業以来始めてのリコールでわからないことが多いですが、徹底的にやろうと思います。御社も社運を掛ける覚悟で取り組んで頂くようお願いします
。」
「はい・・・わかりました・・・でも、これは、ちょっと我々二人ではどうすることもできませんので、今日の内容を、まず常務の広川に報告し、それから社長に報告するということになると思います。社長は、さっき出掛けましたし、常務は出張で今晩米沢に帰って来る予定・・・今日は金曜日ですので、横浜の自宅に帰る・・・いえ連絡をとって明日出社するように頼みます・・・」
「そちらの会社の事情もあるのかも知れませんが、ことの重大さをご認識頂きご対応頂きたいと思います。お願いします」
「松本常務様は、明日も米沢に?」
「いえ、これから東京に戻ります。明日は、出社しておりますので何時でも連絡下さい」
「わかりました。ご迷惑お掛けして申し訳御座いません・・・」
「昼過ぎましたけど、蕎麦でも食べていきますか?」
「今からじゃ食堂に間に合わない?」
「工場の食堂ですか?2時までやってますけど・・・」
「米沢の蕎麦も上手いけど、俺、あの食堂で皆と一緒に食べるの好きなんだ」
「じゃあ、そうしましょう」
「しかし、なんだあれは?山野電気は何時からあんな会社になったのだ」
「わかってなかったですねえ。温度差は大きいですねえ」
「エンジニアとして、事の重大さがわからないのかなあ」
「いえ、少なくとも設計の石川部長はわかっていました。止めた戸塚さんの部下でしたからね」
「しかし、二人とも何か隠しているなあ」
「常務も感じましたか?」
「ああ・・・まずいなあ・・・隠しごとがあるようじゃ、我々も危ない」
「現場確認しますか?」
「そうだやはり現場だな」
「こういうもは即効でやるのが良いでしょう。恣意的なリポートが出てからじゃ混乱しますし、向こうだって面子がある。手違い程度であればいいでしょうが、ウソをつきましたとは言えないでしょう」
「うん。平尾と杉江は、今日は博多にいるんだよなあ。お客様のところには夕方伺うのだろうから帰ってくるのは明日か・・・」
「二人に香港と中国に行かせますか?」
「うん。現場を押さえるべきだと思う。そうじゃないと危なっかしいよ」
「山野香港での部材の購買と生産指示の記録を確認し、現場での製造手配の事実、現物部材在庫の確認、製造仕掛品と完成品の確認と保管、品質検査データー、それに、代替品の生産能力とキャパ・・・問題を起こした工場で代替品を作るというのは本当はありえないですよねえ?当社のシンセンで作る。或いは、米沢の山野かウチの工場で作ることになるのでしょうが、電子パーツは別途手配可能ですが、成型品は山野のシンセン或いはベンダーで作っていますから、あそこを通しての手配となります・・・その辺のところの確認も必要でしょう」
「じゃ、製造設計も行った方がいいなあ」
「杉江一人でもできますが、時間がありませんので手分けしてやった方が良いでしょう。
代替品の手配は直に動かなくてはなりません
」
「渡邊?」
「ええ、彼がいいと思います。ウチの香港ににも協力してもらわなくてはいけません」
「香港の植田社長に頼むよ」
「・・・しかし、それにしても変ですねえ。現場でそんなことしますかねえ」
「デービットって、お前も会ったことあるだろうけど、その辺のところわかっているような感じなんだけどなあ。シンセンの担当者が勝手にやったのかなあ・・・」
「そこのところ3人に確認してもらいましょう。リコールの告知の跡で、新事実が出たなんてことは、混乱しますし、信用を落とします。せっかく真正面から取り組もうとしているのに・・・」
「日曜から出掛けてもらおう」
「明日の最終便でも間に合いますよ・・・」
「そりゃ可愛そうだろう。日曜でいいよ」
「あとで連絡とって話しておきます」
「頼む!俺は、昼飯食べて、皆の様子見てから東京に戻る」
「わかりました」