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明日を開く…

白紙とえんぴつ

真っ黒で光はない。なにも見えない。

自分がそこにいるのはわかるが、どこからが自分でどこが空間なのかわからない。

逆なのかもしれない。

自分はこの黒い空間で、個なんてものはないのではないか。



だとしたら、自分という個はなんのために生を与えられたのだろう。

もちろん他人を蔑む考えはない。

その人が自分を見つけそれを生きがいにしているのであれば、もしかしたら幸せのカタチなのだろう。

自分に視点を戻す。

さてなにをしたいのだろう。

なにをしているとき、楽しさや切なさを感じ生を感じるのだろう。


いまひとつわかっている真理は自分の地図が狭すぎること。

いま一度白いスタートラインの前に立ち、

新しい世界を見に行こう。



暑い、服がまとわりつく。

「う〜ん、こうも暑いと目覚しいらないなぁ」

ソアトは暑さに起こされた。

結局のところ、目覚ましにしろ、リュスにしろ、暑さにしろソアトはいつも強制的に起こされる。

いうなれば、ルーズなのだ。


コンコンッ

ドアの向こうに誰かが来たようだ。

「リュスだろぉ?おはよぉ〜。今起きた」

「あっおはよう。起きてたの?暑いもんね。朝食出来たよ?早く下に来てね」

リュスはソアトを毎朝呼びに来てくれている。逆にソアトはリュスを起こしたことは一度としてない。

「はーい、すぐ行く」

流星群の夜は明け、新しい朝が来た。


キィ〜

すこし建て付けの悪い木製扉を開ける。

「おはよう。汗かいたから喉が乾いたよ。

リュス、飲み物頂戴」

「はい。どうぞ」

「早っ」

「うん。きっと欲しいって言われると思って、ついどいたよ」

ソアトは喉を潤す。

暑さが清々しさに転じた。

「いま、世界が動いた」

……

「大丈夫?暑いよね。お医者さん行く?」

…ソアトのボケがリュスにより殺された瞬間だった。



「ごちそうさま。玉ねぎのサラダもおいしかったです」

ソアトはキレイに朝食をたいらげた。

「ソアト、昨日もありがとう。すごく楽しかったよ」

と言いながらリュスは食器を片付けている。

「いや、俺はありがとうなんて言われても。昨日はただ俺が知ってるだけのことだよ。

まだまだなにも知らな過ぎるよ」

ソアトの言葉に受け止め、

「いや、やっぱりすごいよ!」

たがリュスのほめ殺しは終わらなかった。


一息ついて

リュスの淹れてくれたお茶を片手に

「俺も16になる。世界を旅したいと考えてるんだ」

「うん。なんかいつかはそう言う日が来ると思っていた

やっぱりアレも関係しているもんね」

リュスの顔色が曇る。

「リュス、それはそれだよ?ああいう経験はもうしたくないけれど、

今の俺の糧になっているよ」


開けた窓から涼しい風が流れる。

今、ソアトもリュスも同じ事を考えている。

あの忌まわしい過去、忘れたいと思うことも許されない、あの災害を。







晴天の空のもと、生い茂るは木々に風が舞い、流れる小川は涼をもたらす。

充実とは心身共にこのことをいうのだろう。

絶望、孤独は追放され、至福が我が身を包む。

霹靂に苛まれることを知らずに……



「とーさん、肉まだ焼けない?」

BBQである。6歳のソアトには落ち着きがない。

「もう少しだよ?ね?」

今と変わらず、リュスがソアトをなだめる。

「ハッハッハッー!2人共そんなに腹ぺこかー!

どれお父さんが毒味をしようではないか!」


パクッ!


「アッチぃー!!」

イースはほおばった肉をすぐさま戻した。

もちろん地面に落ちたのは言うまでもない。食べ物を粗末にしてはいけない。

「あーっ!なんてことを…せっかくの食べごろだったのに〜」

「イテテ。ごめんごめん、だがもう食べられるぞ!!さぁみんなで食べよう」

イースのGOサインとともに、壮絶な取り合いバトルが始まる。


「こらーリュス、そこはボクの陣地ー!」

口をもぐもぐさせながら、文句を言う。

「早い者勝ちー。だってソアトもさっきわたしの食べたじゃない」

「それはそれ、これはこれ」

全くもっての自己中心的なソアトである。

「わかった、これ食べな」

玉ねぎをリュスの皿にのせる。自分が嫌いだからだ。

「もーキライなものは全部わたし。ちゃんと食べなよぉ」

リュスはソアトのキライなものはだいたい知っている。

食べさせようとしているが、ソアトは言うことを聞かない。

「こらこらー父さんのも残しておいてくれよぉ。召使いじゃないぞぉー」

「えっ!!違うの!?」

ソアトとリュスの意見がめずらしく一致する。



「アハハッ!!良いように遣われていますねぇ」

キレイな顔立ちで笑顔が眩しい、どことなく幼さが残る

リュスの母キラがカレーが盛ってある皿を持って現れた。

「イース!!ソアトには野菜をしっかり食べさせなさい」

イースの恐妻にして、ソアトの絶対神のトーレも横にいた。

イースとソアトに戦慄が走る。

「トーレ、今食べさせようといていたのだよ」

「母さん、だけれどまだ野菜が焼けていなくて…」


立て続けにイースとソアトが言い訳をかます。

笑顔のトーレ、眉がピクッと動く。

「お野菜は生でも食べられるのよ?そんなことも知らないの?」

…笑顔が怖い。

「まぁまぁ、トーレおなかが空いただろう?トーレの分もあるから食べてよ。

カレーも頂くよ、ありがとう」





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