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不器用な彼らの空模様。  作者: 井平カイ
花は自然の雨の中で最も輝く
13/64

太陽の再臨

「な――――!!??」


 雨が少し弱まった公園のベンチで、俺は絶句していた。

 以前より髪が伸び、顔も大人びてはいたが………間違いなく、あの陽子先輩だった。


「よ……陽子…先輩……?」


「え? ……キミは……後輩…くん?」


 俺と陽子先輩は、見つめ合ったまま動かなくなった。


(なぜ!? なぜ陽子先輩がここに!?)


 頭の中は、絶賛パニックに陥っている。目が泳ぐ。言葉が出ない。

 なんで!? なんで!?

 俺の中は、その言葉でいっぱいになっていた。


「……晴司?」


「……陽子ちゃん?」


 月乃は俺を、空音は陽子先輩を、それぞれ心配そうに見ていた。


「……そっか。もしかしてって思ってたけど……

 空音が話していた高校の友達の男子って、やっぱり後輩くんだったんだ……」


 先輩は、クスッと笑って語りかけてきた。

 その笑顔はあの頃のままだった。……あの、俺が憧れていた太陽のような先輩の笑顔が、また、俺の目の前にあった。





==========





 それからのことは、よく覚えていない。

 空音と陽子先輩は、簡単な挨拶をし、そのままどこかへ歩いて行った。その後すぐに雨が止んだので、俺と月乃も帰った。

 帰り道に月乃と2、3言だけ会話をした気がするが、基本的には二人とも無口だった。

 荷物を月乃の家の玄関まで運び、俺は電車に乗って帰った。


「またね後輩くん」


 陽子先輩の最後の言葉は、俺の頭の中で繰り返されていた。

 確か、空音は、先輩はハラコーから近い女子高に通っていると説明していたな……

 遠くに引っ越すって言っていたが、まさかこの町にいるなんて……

 もっとも、すでにフラれた俺にとっては、どうでもいいことかもしれない。

 ……でも、それでも2年ぶりに会った先輩の姿は、俺の目に鮮明に残っていた。


 気が付けば深夜になっていた。

 何気なくケータイを手に取ってみると、いつの間にかメールが来ていた。それは、月乃からだった。


“今日はありがとう。一応礼を言っておく”


(アイツ、この言葉好きだよな。そういえば、アイツからのメールは初めてだな……)


 そんなことを思っていると、本文がずっと下まで続いていることに気付いた。下にスクロールしていくと、そこにはさらに文章が続いていた。


“ところで、あの人誰?”


 メールが送られたのは約三時間前……完全に、俺が無視した形になっているだろう。全く気付かなかった……

 今更な感はあったが、俺はとりあえずメールを返すことにした。


“お礼はいらねえよ。あと、あの人は中学の時の先輩なんだ”


(まあ、こんな時間だからもう寝てるだろうけど)


 ピロリロリン


(……メール返ってきたよ。てか早いなオイ)


“ふーん、そうなんだ”


(……コイツは、あんまりメールしたことがないようだな。さっきから絵文字が一つもない。俺も人のこと言えないが)


 ピロリロリン


 またも月乃からのメール。


“それについてはいい。あと、アンタの助言、やってみる”


(……そっか)


“ああ。頑張れよ!”


“はいはい。お休み”


 最後の返事も素っ気なかった。でも、月乃は変わろうとしていた。


(そうだ月乃、少しずつでもいいんだ。頑張れよ!!)


 俺は、月乃を全力で応援することを誓い、目を瞑った。



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