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不器用な彼らの空模様。  作者: 井平カイ
花は自然の雨の中で最も輝く
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予想外の出来事

 則之の作戦(?)の夜、静かにテレビを見ていると、その平穏を破る警戒音が鳴り響く。

 ……月乃からの電話だった。

 実は、放課後に月乃から昼休みに何をしていたのか問い詰められ、とっさにその場を走り去りダッシュで家に帰ったのだった。


(やっぱり怒ってるよな……)


 俺はおそるおそる電話に出た。


「……も、もしもし」


『晴司……アンタ、いい度胸してるじゃない』


(うわあああ……怒りメーターが振り切れてらっしゃる)


『まさか、この私を置いて帰るなんてね……どうしてくれようかしら……』


「いや、別に、どうもしなくていいと思います……」


 月乃のあまりのオーラに、なぜか敬語っぽくなってしまった。


『……許してほしかったら、私の命令に従いなさい。イイワネ?』


(こ、コエエエエエ……)


『じゃあまず、今日の昼休みに何をしていたのか、嘘偽りなく答えなさい』


「ええと……昼ご飯を食べてました」


『どこで? 誰と?』


「……屋上で、空音と……」


『へぇ……この私に内緒で、久木さんと二人で、ね……』


 俺は、本能で間近に迫る自分の身の危険を察知した。


「あ、あれには事情があるんだよ! 則之が今日は屋上で昼飯食べようって言ったから屋上に行ったら、なぜか空音しかいなかったんだよ!

 だから……まあ、結果的には二人で食べたんだが……」


(……あれ? 俺、なんか浮気を追及されて、厳しい弁解をする男みたいになってね?)


『……まあいいわ。で? 何を話したの?』


「……則之のことを……」


『他には?』


「他には……ねえよ」


(言えるわけないだろう。もし社会的に抹殺されても、空音の信頼を裏切るわけにはいかない

 もうどうにでもしやがれ!! ……死刑以外は)


『……ふぅ』


 月乃は一度ため息をつき、口調を変えて話してきた。


『そこまで言うなら、別にもう言わなくていいわ。アンタの態度である程度わかったし。

 どうせ、久木さんに田島くんのこと、どう思っているか聞いたんでしょ?』


「……回答拒否を申請する」


『で、久木さんが田島くんじゃなくて、別の男のことが好きであること、もしくはそれに近いことを聞いたってとこでしょ』


(コイツ、マジでエスパーなんじゃねえか!?)


「………」


『安心しなさい。ここでの会話は秘密にしててあげる。誰にも言わないわ』


「………」


『アンタ、そんなこと聞いて、これからどうするつもり? アンタのことだから田島くんには言ってないと思うけど……

 それを知ったところで、アンタに何ができるの? 何をするの?』


「……俺だってわかんねえんだよ。最初は則之のことだけを聞くはずだったんだよ。

 だけど、話をしていたら、空音が幸せそうに相手のことを話すんだ。それを聞いていたら、ああ、空音はそいつのことが本当に好きなんだなって思ってさ……」


 そう、空音は、純粋なまでに、そいつのことが好きなんだろう。相手のことを話す空音の顔は、そのことが俺にもわかるくらい幸せそうだった。


『……だから私が警告したでしょ? 変に首を突っ込むなって。

 アンタが久木さんの気持ちを知ったところで、どうしようも出来なくなることは予想できていたし……

 もっとも、久木さんがそこまで踏み込んだ話をするのは予想外だったけどね』


「予想外?」


『今の段階で、久木さんがアンタにそこまで踏み込んだ話をすることは絶対ないって思ってたの。

 でも、いよいよ本気ってことね……』


「何の話だ?」


『……別になんでもないわ。それよりも、アンタへの罰が必要ね……』


(……そのまま脱線しててほしかった)


「ば、罰っすか……」


『当然でしょ? そうね……何にしようかしら……』


「あの、もしよければ、あんまり無理難題は止めてほしいかなあ………」


 緊張のとき……どんな無茶を言ってくるのだろうか。俺は、息を飲んで月乃の言葉を待った。


『……そうだ。今週の休み、私の買い物に付き合いなさい』


(………へ?)


『光栄に思いなさいよ? 私から…その……デートに誘ってあげるんだから』


 なんだか拍子抜けした感じだった。俺はそんな状況に、少し油断をしてしまった。


「あ、ああ……別にいいけど……」


『……別にいい? アンタ、いまいち自分の立場がわかっていないようね……』


(……………はっ!)


「よ、喜んでお供させていただきます!」


『よろしい。じゃあ、今週の土曜日に、駅のロータリーに10時ね』


 そう言って月乃は電話を切った。


(……なんなんだ、まったく。何を企む柊月乃)


 それから、学校では普通に生活した。月乃も不気味なほど普通に接してきた。

 いや、むしろ機嫌がいい……俺は、底知れぬ恐怖を感じた。




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