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星騎士  作者: ぱんだまる
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第三章:”エース&キング”

俺はテーブルにユウキ先輩と共についた。

ゲームとはいえ、あのユウキ先輩やファルナ先輩と

直接戦うことがあろうとは思っても見なかった。


”エース&キング”はエースをうまく使い、相手のキングを探り引き当てるゲームだ。

手元にある情報から相手の思考をさぐり、カードをめくる度に

相手の表情を伺い、心理を読んでキングの場所を探し当てる。

ちょっとした心理戦のようなものだ。


エースは最初から裏返さずに場に配置しなければならず

しかも相手に引かれると自分が不利になるという、

一見するとお荷物のようなカードになる。

しかし、このカードを相手に引かれないように、エースを護る配置にすると

本来護るべきキングの位置が、自然と浮き彫りになってしまう。


エースを護ろうとすると、キングの場所がばれてしまう。

エースを護らないと、引かれた場合に不利になる。

だが、相手に気づかれなければそれを逆手にとって有利にも進める。

エースをどこまでフェイクにしてキングの位置を隠せるか。

そういった心理戦がこのゲームの特徴だ。


ユウキ先輩はこういう心理戦は不得意らしく、俺がカードの配置は決めた。

カードの配置は一見、エースを護ろうとしているフリをしている、

とみせかけて、本当にエースと護ろうとしているというダブルフェイクをつかった。

ファルナ先輩の読みを逆手にとろうという作戦だ。


「じゃあ準備はいいわね。

 私からひくわよ。」


ファルナ先輩予想通り、カードの配置から

俺がエースを護ろうとしているフリをしている、と読んで攻めてきた。


「あら、私がエースを護っているのはフェイクじゃないか、

 と読んでいるのに驚きもしないのね。

 予想通りって感じなのかしら?」


っ!あぶないあぶない、思わず顔にでる所だった。

ファルナ先輩は相手の心理を読みながら、次の一手を決めようとしている。

運に頼らない、徹底的な情報戦。


「どうですかね。案外その次がキングで、

 内心ビクビクしてるかもしれませんよ。」


俺は何とかポーカーフェイスで答える。


「そ、そうなのか、カナート君!

 ファルナにうっかりキングをひかれてしまわないか!?」


ユウキ先輩はクールな外見とは裏腹に、感情的な所があるようだ。

先輩にはカードを見せなかったのは正解だったかな。

こんなに感情だしちゃ、あっという間にファルナ先輩に読まれてしまう。


「あら、ユウキにはカードを見せてないのね。

 ふふっ・・・思ったより、手強そうね、カナート君。」


ファルナ先輩の氷の微笑を前に、少したじろぎつつ、俺は先輩のカードを引く。


ファルナ先輩のカード配置はエースを捨ててキングの位置を読みにくくする作戦だ。

エースがすぐ引かれてしまう反面、キングの位置が読みにくい。

目の前のエースはただのエサなんじゃないか、とさえ思えてしまう。


そんな不安を押し切って、俺はエースを狙っていた。


「あら、そんな普通の戦い方で大丈夫かしら?」


「むしろ、俺はここがキングかなって思ったぐらいですよ。

 はずれたのは残念ですけどね。」


お互い腹のさぐり合いが続く。ユウキ先輩は

ハラハラしながら、俺とファルナ先輩の手札を見比べている。

クールな人のこういうあたふたした所、ちょっとかわいいかも。


そんなふしだらな考えを見抜かれたように、ピシャリ!と

ファルナ先輩が、やや強くカードをめくりあげる。


「あら、あなたもここにキングはおいてないのね。

 てっきり、自分のことをいっているのかと思ったんだけど。」


俺が引いた場所と同じ場所を、ファルナ先輩は引いてきた。

この一枚は、最初は俺のダブルフェイクで外した相手の読み筋を

見事に修正してきた一手だ。

もう俺がダブルフェイクを使っていたのを見破っているかもしれない。

ちょっと負けそうな気がしてきた。


「むしろキングから離れた所ばかり引いてくれて、

 俺としては好都合ですけどね。


本音を押し殺したはったりをファルナ先輩が見極めようとしている中、

俺はファルナ先輩のエサのようにぶら下げられたエースに食らいついた。


相手にエースを引かれた時点で、先頭から順番に、というルールを無視できる。

通常なら3手は大丈夫、という安心感もなくなり

いつキングが引き当てられてもおかしくない状態になる。


その状態でもポーカーフェイスを・・・・ファルナ先輩ならできそうだけどな。

ちらりとファルナ先輩の顔をみたが、まったく変わらない表情。

ほんと、読めないわ、この人・・・。


「そう、じゃあ私もエースを狙ってみようかしら。

 だんだん、カナート君の作戦っていうのが読めてきたかな、って感じね。

 私の性格を読んでいるのはいいけど、相手の作戦も状況次第で変わるものよ?」


ファルナ先輩が引いたカードはまっすぐに俺のキングへと向かう一手だった。

ファルナ先輩は、やはり俺のキングの場所を読み切っているようだ。


そうなると、ファルナ先輩は次でキングを引き当てるだろう。

だが、俺に勝ち目がないわけではない。

俺はすでに相手のエースを引いており、

キングがどこにいても一回で引き当てることができる。

後はキングの場所がどこかを読みとるだけだ。


普通はエースカードを引くと、ついエースカードの機能を使いたくなってしまう。

だが、きっとファルナ先輩なら・・・。

俺は選んだ次の一手は、エースカードを引いてなくても選べる、

ごくごく普通の一手だった。


「キング・・・ですよね。」


俺が引いた場所は見事に、ファルナ先輩のキングカードだった。


「はぁ・・・負けたわ。

 まさか、ノーミスでキングまでたどり着くなんて・・・。

 私も次には君のキングを引き当てる自身あったのに。」


ファルナ先輩はそういって、笑う。


「ははっ、偶然ですよ。」


「君、なかなか強いのね。

 将来が楽しみだわ。」


カードゲームとはいえ、ファルナ先輩に勝てた、というのは

俺にとってはかなり、うれしいことだ。


「いや、カナート君だったか。

 このゲームでファルナに勝てた人は初めて見たよ。

 いやいや、さすがファルナ姉妹が見込んだ人物、ということか。」


ユウキ先輩はしきりに感心している。


「あ、もうこんな時間。

 私たちは模擬戦の団長だから早めに準備をしないといけないの。

 ユウキ、行きましょう。」


ファルナ先輩は時間をみて、そう告げる。


「ん、そうだったな。

 カナート君だったか、そういえば君と似たような名前を

 模擬戦の参加者リストで見かけたような気がするのだが・・・。」


「はい、俺も白騎士団で参加させてもらうことになっています。」


「そうか、君がいてくれれば、模擬戦でもファルナに勝てそうだな。

 うんうん、頼りにしているよ。」


ユウキ先輩はすこぶるご機嫌のようだ。


「カナート君、模擬戦ではこの借りは返すから、ね?」


ファルナ先輩の顔は冗談なのか、本気なのか、相変わらず読めなかった。

ちょっと、怖い。


「それじゃ、行こうかファルナ。」


「そうね、またね?カナート君。」


そういって、二人は足早に去っていった。

模擬戦か・・・どうなるんだろうな。


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