第二章:千年祭
とうとう、始まった千年祭当日。
元々、大陸でも最大の国家であるディ・ラオール神国の建国祭は
大陸中から人が集まり大陸最大の祭りになる。
今回は特に千年目ということもあり、歴史上最大といっても良い規模になっていた。
世界中から人が集まり、神都ラオール全体が人であふれかえっていた。
「ふあぁ~あ・・・適当にぶらつくか・・・。」
俺が祭りで参加する模擬戦は今日の午後から始まる。
模擬戦が始まるまで寝ていようかと思ったが
祭りの活気がすさまじく、神都のかなり郊外にある学生寮にまで
歓声が地鳴りのように響いてくる。
とても眠り続けられるような状態ではない。
そんなこんなでたたき起こされた俺は
まだ模擬戦が始まるまでに時間もあるので祭りを見て回ることにした。
「さすがに人が多いな・・・。」
大通りにでると、人だらけで、一歩も動けなくなる。
そんな状態でも、空中劇場で入れ替わり数多の名劇が催され
食べ物も頼めば空からロープを伝って何でも手に入った。
そのため、騒ぐ分にはみんな困っていないようだ。
「ははっ、ファルナ、君には負けるよ」
そんな時、聞いたことのある名前が人混みから聞こえてきた。
「ふふっ、ユウキもやってみなよ、あなたなら大丈夫でしょ?」
この声、聞いたことあるな・・・。
俺は人混みの中をキョロキョロと見渡し、声の主を捜す。
「ん・・・あれは・・・。」
声の主と、もう一人、初めて見る凛とした女性が
二人で何かを話していた。
「私がかい?ははっ、ダメダメ、こういうのは苦手なんだよ。」
「紅白戦の前哨戦よ、ユウキ。
敵前逃亡は騎士の名折れ、さ、選びなさい。」
「ふふっ、まいったな、ファルナには。」
見知った顔をようやく人の中からみつけだし、俺は声をかけた。
「ファルナ先輩!」
「あら、カナート君、ちょうどいい所に、
こっちへいらっしゃい。」
ファルナ先輩が手を振ってこっちへこいと行っているようだ。
俺が近くまでいくと、もう一人の女性がファルナ先輩に話しかける。
「知り合いかい?」
「ええ、妹のお友達よ。
どうしたの、今日はセルフィアと一緒じゃないの?
あの子、急いで家をでたみたいだから、てっきり君といるのかと思ってたわよ?」
ファルナ先輩が、いじわるそうに、俺にそう問い掛けた。
この人は俺とセルフィアの仲をからかって、楽しんでいるんだ。
「あ、えっと、セルフィアは今日は
ミリファリア様の音楽会にでるって言って・・・。」
おれは少したじろぎながらも、説明する。
やっぱ、ファルナ先輩はなんて言うのかな、身にまとっている
オーラが俺達とは違う気がするんだよね。
「あぁ、それで、ね・・・。
そっかそっか、君を一人にして、あの子も罪な子ね。」
いしししっという感じでファルナ先輩がこちらをみてわらう。
普段はりりしい人がそういうことすると、ギャップがすごいな。
「え、えっと、ファルナ先輩は行かなくていいんですか、音楽会?
エスシオール家もファルシオン家も、本家は全員参加するって聞いてますけど・・・。」
ミリファリア様の音楽会は会場内は全席指定席で席は上流階級のみなさまが独占される。
一般客は会場の外から音楽を聴くしかないのが現状である。
それでも催される度に、会場の周りには耳を傾ける一般客が絶えないと言うのだから
その人気の程もうかがい知れるというものだ。
「いいのよ、あんなの。」
そう冷たく言い放つファルナ先輩。
まぁこういう興味もない人にとってはそんなものといえばそんなものだろう。
「ふふっ、ファルナはラスティア様のシンパだからね。
ミリファリア様の音楽会には興味ないのさ。」
先ほど、ファルナ先輩と話していた女性が、会話に入ってくる。
ファルナ先輩と親しそうだが、俺は会うのは初めてだ。
「あ、えっと・・・。」
「初めまして、かな。私はユウキ・ミツカセ。
ファルナとは士官学校での友人って所だ。」
そういって、ファルナ先輩をみて軽く笑う。
ユウキ・ミツカセって言えば、ファルナ先輩と並び称される人物だ。
剣聖とさえ言われる剣術の腕は、ラスティア様に並ぶとさえ言われるぐらいだ。
騎士位は確か公騎を授かっていたと思う。
学生で公騎なんて、超のつくエリートだぜ?
「あ、お、俺はカナート・エスシオールです。
ユウキ先輩のご高名は聞いています。」
「ははっ、堅くなるなよ、カナート君、だったかな。」
「はっ、はい、その、す、すいませんっ!」
女の人なんだけど、すらりと切れ長い眼に
整った顔立ちから、美形の青年のようにも見える。
同姓にもてそうなタイプだよな、この人。
「ユウキ、カナート君をからかうとセルフィアが怖いわよ?」
また、ファルナ先輩はそうやって俺をからかう。
「ん、あのセルフィアがかい?
これは驚いた・・・なかなかやるものだね、君も。」
「ちょ、ちょっと、ユウキ先輩、本気にしないでくださいよ!
ファルナ先輩も、俺をからかわないでください!」
俺の必死の抗議も二人に笑い飛ばされてしまう。
「ふふっ、そうだ、カナート君もやってみなよ。」
ファルナ先輩が手を引いて、ちょっとした広場に
置かれたテーブルを指して言う。
「えっ?」
そういって、テーブルを指さした。
4×3に並べられたカードは、いま神都ではやりの
エース&キングという簡単なカードゲームだ。
「おいおい、ファルナ・・・。」
「ユウキは黙ってなさい。
ほら、このゲーム、やったことぐらいあるでしょ?」
「え、ええ・・・何度かは・・・。」
「今、ユウキと紅白の前哨戦をやろう、って話してた所なの。」
ファルナ先輩は乗り気のようだが、ユウキ先輩はいまいち気乗りしないようだ。
「私はちょっと、こういうゲームは苦手でね・・・。
それを知ってて、ファルナはやろうやろうってうるさいんだ。」
「ほら、ユウキ。文句言わないの。
カナート君とペアを組んで良いから。
さぁ、さぁ、勝負!」
ファルナ先輩はすっかりやる気のようだ。
「まいったな、ファルナにも。
そういうわけなんだが、カナート君、力を貸してくれるかい?」
「俺でよければ、一緒にやりましょうか。」
まぁこのゲームも嫌いじゃないし、やってみるか。




