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星騎士  作者: ぱんだまる
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第二十一章:叙任

俺とユウキ先輩は先に出発した

ロミーネ大将をおってマルアイアへと続く街道を進んだ。


「ロミーネ大将!ご一緒します!」


あと一歩でマルアイアにつこうか、という所でようやく

ロミーネ大将に追いつき、彼女を捕まえることができた。


「君たちは・・・やれやれ、一人で良いと行ったのに

 追いかけてくるとは仕方ない人たちですね・・・。」


「ロミーネ大将、すいません。

 ですがこれはあなただけの問題ではないのです。」


ユウキ先輩もロミーネ大将の説得に入る。


「この一戦がトルアノ連邦の命運を握ることは

 わかっています。決して軽はずみな気持ちではなく・・・。」


「違うのです、ロミーネ大将。

 そういう意味ではなく・・・。

 そう、”現世との決別”。あなたがそれを目指すというのなら

 私は見届けたいのです。」


ロミーネ大将は驚き表情を浮かべ、ユウキ先輩を見つめていた。

俺もきっと同じ顔をしていたのだろう。

現世との決別、ユウキ先輩があの言葉にそれ程こだわりをもっていたなんて・・・。


「・・・・そうですか、あなたも神国の公騎士。

 あの言葉の意味を考えなければならない、そういう立場なのですね。」


「いえ・・・私はすでにその言葉を聞いていたのです。

 ですが、私は違う道を探そうと思いました。

 でも、結果的に私は未だ公騎士で、”現世との決別”を選んだ

 私の親友は星騎士となりました。

 私が間違っていたのか、その答えを私は探しています。」


ユウキ先輩の言葉をきいた時、俺は彼女にかけられた反逆罪がなんだったのか。

神国が目指すものが何だったのか。

おぼろげに見えた気がした。だが、今はそのことは考えずにおこう。

俺には・・・騎士位すらない俺には語るべくもない世界の話なのだから・・・。


「そう、そうですか・・・・。

 違う道があるというのなら、私もそれを探してみたい。

 ですが、トルアノ連邦の置かれた状況が、私の任じられた大将という職責が

 別の道を探す時間を私に与えてはくれないでしょう。」


そういって、ロミーネ大将はマルアイアの門をくぐった。

正午ちょうど。作戦開始時刻だ。フィルバレス将軍は反対側の門からすでに

突撃を行っており、聖騎士団の主力を相手に戦っているだろう。


ロミーネ大将はその隙に裏門から街に潜入。

ミリファリア様がいると思われる、マルアイアの都府を目指す。


ミリファリア様の星騎士としての力は、前線にでて戦うよりも

何万という兵を強化して戦うことに特化しているようだ。

そのため、自身は奥に控え、前戦で戦う兵を強化した戦法をとると聞いたことがある。

300年も前に起きた反乱鎮圧の時の戦物語なので、その真偽は定かではないが

運良くというか、運悪くというか、アタリをロミーネ大将は引き当てたようだ。


「あちらは陽動で、大将を狙う、という作戦は悪くはないと思うのですが

 たった3名というのは、いささか星騎士というものを

 甘く見過ぎではないでしょうか。」


都府の警備兵を数名、ロミーネ大将とユウキ先輩が片づけた所で声が聞こえた。

千年祭で聞いたあの声。間違いない。

ミリファリア・エスシオールがそこにいる・・・・!


気が付いたとの時にはすでにロミーネ大将とユウキ先輩は

はるか後ろに吹き飛ばされていた。

一体何がどうなってそういうことになったのかすら認識できない。

圧倒的な力の差。


「くっ、ま、まだまだ・・・!」


ロミーネ大将は壁に体を激しくうちつけられ、血を流しながらも

ミリファリア様に立ち向かう。そう、何度も・・・・何度も・・・。


「これが連邦の公騎士ですか。

 公騎士としてはそれなりの力ですが、公騎の力があっても

 そう、長くもつものではないでしょう。」


ロミーネ大将は”現世との決別”をどのように考えているのだろう。

俺とユウキ先輩は”現世との決別”を見守るつもりだったが

血まみれになるロミーネ大将をみていると、

どこまで黙ってみていられるか自信がなかった。

そこに、俺達よりもずっと我慢できない人が現れてしまった。


「め、メイ様!」


見るとフィルバレス将軍と、シノザキ少将がかけつけてきた。

星騎士のいない聖騎士団というのは、思いの外あっけなかったのかもしれない。

エスシオール家はミリファリア様の威光に頼り切ったものが多く

そういう者達の多くが聖騎士団にコネのような形で入団していることもあると聞く。

それでも星騎士の力によって強化されていればよかったのだろうが

今はロミーネ大将が引きつけていたおかげで強化が弱まっていたようだ。


「なんだ、こちらはまだ終わっていないのか。

 なら私の任務はここまで。後は見物させてもらいましょう。」


この際全員であたっては、とも思ったのだが

シノザキ少将は当初の予定通り、星騎士はトルアノ連邦だけで

何とかしろ、という腹づもりのようだ。早々に傍観を決め込んでしまった。


「聖騎士団がもたなかったようですね・・・・。

 貴重な公騎士、死なせるには惜しいと思ったのが間違いでした。

 もはやここまで、覚悟を決めてもらいます。」


ミリファリア様がそういうと彼女の手にいずこからか現れた

大剣が握られる。その華奢な体に似つかわしくない剣を軽々と振り回し、

ロミーネ大将目がけて一気に近づいてくる。


「め、メイ様には指一本ふれさせん!」


フィルバレス将軍が間に割り込み、ミリファリア様の前に立ちはだかる。

止めようと思った時にはもう、終わっていた。


「公騎も授からず星騎士の前に立ちはだかるとは・・・。」


その言葉をミリファリア様が言い終わる前に

大剣はフィルバレス将軍の体を真っ二つに割いていた。


「ふぃ、フィリコ!」


ロミーネ大将がそれをみて、叫んで、その瞬間。

時が全て停止したかのように、全てが止まった。

意識はある。だが、全てが止まり、ロミーネ大将だけが

その中を動き、フィルバレス将軍の亡骸にかけよった。


「フィリコ・・・フィリコ・・・!

 こんな・・・こんなことが・・・・。」


その瞬間、周囲の景色が暗転した。

聞いたことがある。これは、叙任式。

神が資格を満たしたものをハルセウス宮殿に召喚し

その身に新たなる騎士位を授ける儀式。


周囲の景色が元に戻った時、そこにいたのは新たな星騎士だった。


星騎士というのは、見た目に何か違いがあるわけではない。

だが、その方がそこにいれば、それは誰に聞いても、星騎士はあの人だと答えるだろう。

それ程の圧倒的な存在感。

公騎士とは明らかに違う、神の風格というべきものが備わっていた。

メイ・ロミーネ様は星騎士になられた。それは間違いなかった。


「新たな星騎士を歓迎します、ロミーネさん」


「・・・・ええ、わかっています。

 わかっています・・・。」


今まで大剣を振るい、ロミーネ大将の命を狙おうとしていたミリファリア様は

一転、ロミーネ大将を歓迎するといい、目の前でフィルバレス将軍を失った

ロミーネ大将もまた、ミリファリア様を受け入れるように彼女の手をとった。


「ろ、ロミーネ大将・・・。

 あなたも、その道を選び、星騎士となられたのですね・・・。」


ユウキ先輩はもの悲しそうに新たな星騎士を見つめている


「ユウキさん。

 ”現世との決別”というのは私が思ってた以上に残酷なものでした。

 そして、星騎士になると、圧倒的な使命感の前に

 その残酷な現世の記憶が取るに足らないものに思えてしまう。

 それが・・・何よりも悲しい・・・。」


彼女はそういうと、ミリファリア様と一緒に消えてしまった。

後に残されたのは、荒れ果てたマルアイアの街と多くの兵の遺体と

フィルバレス将軍の亡骸だった。

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