12
サクサスバ書庫城の一室にて、クシャトカトラは窓辺に置かれた椅子に腰掛け、愛用の指輪に触りながら幼少期の出来事を思い出していた。彼の父カカラティアクがまだ存命だった頃だ。元々カカラティアクは身体が弱く体調に波があったのだが、ある時出先で倒れて意識のないまま居城の寝台へ運び込まれた。主家の御曹司且つ親友でもあったフブフゲルグは、見舞いの為にトルドフィメシス城を訪れた。
フブフゲルグが入室した際、カカラティアクは既に意識を取り戻していた。しかし友人の状態を見て、フブフゲルグは眉を寄せる。
「何時にも増して顔色が悪いな。訪問時期を誤ったか。辛かったら出直すが」
カカラティアクは「大丈夫だ」と返しながら上半身を起こす。少し咳き込み、使用人に背中を擦ってもらった後に彼は再び口を開いた。
「顔色の原因は恐らく体調ではない。気の病だ。先日――倒れる前の話だが、社会勉強の為に愚息を牧場見学へ連れて行ってな。身内の恥を曝すことになるが、その時の反応が目に余ったものだから」
「ははっ、浄種ならば誰もが通る道だな」
「だとしても、クシャトカトラの反応は異常に見えたのだ」
唯でさえ青白い顔を一層白くして、カカラティアクは俯く。
「あれは駄目だ。家門を背負えるだけの器量はない」
「おいおい、判断を下すのが早過ぎやしないか? まだ歯も生え揃っていない子供が、たった一度失敗しただけだろう。足りてない部分はこれから伸ばして行けば良い」
「余命幾許もないこの私に一体何が出来るのか……」
「不吉な言葉を吐くのは止してくれ。怒るぞ。現実になったらどうする。何だかんだ言われながらも、君は今迄生きて来たじゃないか」
弱気になっている友人を心より案じ、フブフゲルグは身を乗り出して窘める。彼の気遣いに感じ入ったカカラティアクは、薄らと目を潤ませて顔を上げた。
「フブフゲルグ、息子が当主となれば、家同士の関係から考えても間違いなく君に仕えることになるだろう。不出来な跡継ぎを残して済まない。迷惑を掛ける様なら、私に構わず切り捨ててくれ」
まるで遺言だ。フブフゲルグは溜息交じりに「勘弁してくれ」と零し、寝台に腰を下ろした。
扉の隙間から二人の遣り取りを盗み見ていたクシャトカトラが聞き取れた会話はここまでだ。彼は小さく「父様……」と呟いた。側で見守っていた使用人が部屋に入るか尋ねてきたが、とてもそうした気分にはなれなかった。結局、彼は父を見舞わず自室へ戻った。
二月後、カカラティアクはこの時の体調不良を長引かせた末に力尽きた。クシャトカトラは同じ城で暮らしていたので、後日に幾度も顔を合わせていたが、フブフゲルグの方は都合が付かずこれが最後の会話となった。
指の腹と指輪の擦れる音が、クシャトカトラの意識を現実へと引き戻す。彼は吐息に近い声で「父上……」と呟いた。胸中には愛情と郷愁と嫌悪が混ざり合った複雑な感情がある。否、正確には嫌悪の念がやや強かった。嘗てのカカラティアクの発言は、今のクシャトカトラにとってはより一層受け入れがたいものとなっていたのだ。
突如、先触れもなしに部屋の扉が叩かれる。クシャトカトラは指輪に触るのを止めた。扉は彼の返事を待たず開かれた。入って来たのは、彼が良く知る男であった。
「よう」
してやったりと言いたげな様子でルキセクエスは挨拶をする。クシャトカトラは相手の胸倉を掴み上げたい衝動に駆られるも、主家の城で騒ぎは起こせないので懸命に堪えた。だが、返す視線は蛇の如き鋭さだ。
「貴様、よく私の前に姿を現せたな」
その言葉に対する態度は鷹揚だった。
「そんなに怒るなよ。悪意があってこうしたんじゃないって、お前も分かっているだろう。ただ、俺はお前の心身を案じただけなんだ」
「一体、どの口が言っているのか。お前の所為で私の立場はより危うくなったのだぞ」
「かもな。でも、これで最悪の事態は避けられそうだ」
「『最悪』?」
クシャトカトラが警戒を解かないのを見て取って、ルキセクエスは笑みを消し嘆息する。
「お前、まだ自分の置かれている状況が分からないのか?」
入室後ずっと扉の前に立ったままだったルキセクエスは、不意に歩き出す。やがて窓際まで遣って来ると、腕を組んで壁に凭れ掛かり、話を再開した。
「皆が皆、正論や正義のみに基づいて動いている訳ではない。お前を非難する声は日増しに大きくなっている。今は陛下が天の声で以って強引に抑え込んでいるが、民の不満が限界点を越えれば、あの御方も反対側に傾くだろう。否、もう既に裏ではお前ごとイナサプテ計画を切り捨てる方向へ動いているのかもしれない。フブフゲルグ様があの計画に賛同しなかったのは、時に冷淡な陛下の手法を知り抜いていたからではないのか? 何にせよ、引き時は今しかない。襲撃事件による損失を口実に出来る。だからこそ、フブフゲルグ様は帰還した家畜をも処分させようとしたのだろう」
「保身の為に大勢の人間を救う術を手放せと言うのか!」
「恩義あるフブフゲルグ様を巻き込むつもりか。これ以上あの計画に固執すれば、本当に何もかもが失われるぞ」
「それは――」
上手い反論が思い付かない。ルキセクエスの言い分にも納得出来る部分はある。けれども、クシャトカトラの根底にあるものが追従を拒んだ。本能と理性の両方が、気を抜いたクシャトカトラを叱咤した。
相手の目に宿っていた躊躇の色が消えたのを見て、ルキセクエスは苦虫を噛み潰した様な顔になった。彼は窓辺に手を突き、クシャトカトラに顔を寄せる。
「何故そこまで執着する。『大勢の人間』を救うとお前は言ったが、俺にはあの計画は浄種の存在意義を否定し、種として退化させる存在にしか見えない」
悲嘆が滲んだ声だった。ルキセクエスがクシャトカトラへ向ける情に偽りはなかった。だが、彼は友人の心までは気遣ってくれない。思想は何処までも相容れない。それを再確認したクシャトカトラは説得を諦めた。理解してもらいたいとは思うが、きっと不可能に違いない。
「私はお前と同じにはなれないよ」
「どうして?」
「元々食に対する執着が乏しかった所為もあるが、多分一番の理由は――」
クシャトカトラは再度回想する。生まれて初めて訪れた農場の凄惨な光景、実の父親が向けてくる冷ややかな眼差し、自分に似た姿をした生物の死肉を前に談笑する食人鬼達、異界人の召喚に立ち会った際に発生した騒動、不安気なササラの表情――。心当たりを一通り思い浮かべて、クシャトカトラは眉間に皺を寄せた。
「止めた。裏切り者には教えてやらん」
「おい」
低い声で説教を始めるルキセクエスを他所に、クシャトカトラは窓の外へ目を向けた。視線の先には澄み切った青空と手入れの行き届いた中庭が広がっていたが、その美しい光景も彼を和ませてはくれなかった。
クシャトカトラは再びルキセクエスを見る。
「本能に任せて他者の命を食らう我々の姿は、獣同然に醜い。だが、我々は獣であるべきではないし、獣にしてはならない。故に、イナサプテ計画は必要なのだ」
「馬鹿を言え。人は人、獣は獣だ。獣肉を食った位で人は獣になりはしない。そんな風に見做される筋合いはない。お前の歪んだ価値観を他人に押し付けるな」
「どうやら主張は平行線のままの様だな。以降の議論に意味はない。お前は私にとって裏切り者以外の何物でもない。とっとと視界から消えろ」
「お前な……」
子供染みた態度を取る友人に、ルキセクエスは呆れ顔を向けた。脱力して二の句が継げない。その隙を突いて、クシャトカトラは追い打ちを掛けようとする。
「私の行く末については心配無用だ。お前の様子から察するに話は伝わっていないのだろうが、先日私はフブフゲルグ様にある取引を持ち掛けた。今もこの城に留まり続けているのは返答を待っている為だ。手続きや根回しに時間が掛かると言われてな。足止めを食らっているんだよ。尤も、今回の件とは別に以前より打診は来ていたから、恐らく希望は通るだろう」
クシャトカトラの推察通り、ルキセクエスにとっては初めて知る話であった。彼がフブフゲルグと最後に面会したのは、クシャトカトラの命令違反を密告した折だ。ルキセクエスとは顔見知り程度でしかなく、地位や立場にも開きがあるフブフゲルグは、彼には結果を知らせずに都へ旅立ってしまった。使いも寄越してはいない。己の扱いの悪さにルキセクエスはやや苛立ちを覚えたものの、現在優先すべきは眼前の当事者なので、喉元まで上がって来た熱を無理やり抑え込んだ。
「どんな取引をしたんだ?」
「それは――」
クシャトカトラがむっとして拒絶の言葉を吐こうとした時だ。
――どおんっ!
突如、轟音が響く。振動はなかったが、ルキセクエスもクシャトカトラも共に姿勢を崩した。続いて、彼等は同時に窓の方を向いた。
「何だ!」
「爆発音の様に聞こえたな」
動揺しつつも、務めて冷静になろうとしているのが分かる声音だった。間を置かず、城内に警笛がけたたましく鳴り響いた。
◇◇◇
食人鬼社会は古い時代より騒乱が絶えない。特にサクサスバ書庫城は代々強い権力を持ち続けてきたことと所蔵品の貴重さ故に、狙われる頻度は他の城よりも高かった。よって必然的に改築が重ねられ、当世では堅牢さにおいて世界屈指と評される程の城郭都市となっていた。ところがである。魔法によって強化され破壊困難な筈の城壁は、現在一部が崩れて煙を上げていた。
城内の兵士達は皆、慌しく走り回る。特に損傷個所付近の混乱は甚だしい。現場を通過した将官は思わず舌打ちをした。ただ、そこには既に別の高官がいた為、彼は相手と視線を交わして指揮を任せる意思を示した後、城外監視用の形象機器が置かれた城壁塔へと向かった。
塔内にある監視室に足を踏み入れると、丁度連絡用の形象機器を手に取った所であった兵士と目が合う。将官は兵士に「状況は?」と尋ねた。すると眼前の相手が声を出す前に、未だ振り返らず形象機器に浮かんだ映像を見詰めている者がこう返した。
「敵襲です。神秘力の痕跡あり。城外より魔法攻撃を受けたものと思われます」
「近くまで入り込まれたな。唯一の幸運は索敵範囲が狭くて済む点か。居場所は見付かったか?」
城下には外部からの攻撃を断つ為の防壁が幾重にも設けられている。それらの一部は目視困難な魔法の壁で、破壊力の強い魔法を遮断する効果があった。そして現在、この壁より城に近い場所にある岩壁が崩落している。つまり、敵は魔法障壁の内側より攻撃を放ったと考えられる訳だが――。
「いえ、それが魔法障壁の外からの攻撃なのです」
「何?」
「南方面の最外層から城の外壁までが損傷。更に襲撃者と思わしき部隊が、破損部分より侵入中です」
将官は瞠目し、下級兵士を押し退けて監視用形象機器の画面を確認する。そこに写し出されていたのは確かに、伝えられた通りの状況だった。
「馬鹿な! 奴等はどんな魔法を使ったんだ?」
軍に配備されている兵器と比較しても桁違いの威力だ。「未だ嘗てない」とまでは言えないが、これに匹敵する物は王家によって直接管理されている形象機器のみの筈である。フブフゲルグであったとしても王の許可がなければ使用も開発も出来ない代物。ならば、敵は王命によって動いているのか。
(確かめなければ)
額に脂汗を滲ませた将官が、不慣れな手付きで監視用形象機器を操作していると、敵の第二射が来た。画面に複数の光の筋が移り込んだ直後、監視室が大きく揺れて物が次々に倒れる。中にいた人間も全員床に転がった。
「糞っ、また!」
「判明している情報だけでも、今直ぐ各所に知らせますか?」
「待て。先に敵の正体を確かめる」
将官は立ち上がり、重量のお陰で倒れなかった監視用形象機器との格闘を再開する。続いて本来の監視役である兵士も立ち上がり、横から手を出し始める。ややあって、襲撃者の姿が画面に映し出された。
「これは形象機器、なのか? 初めて見る型だ」
「待って下さい。この使い手、まさか――」
敵について思案する将官の傍らで、監視役の兵士は数字が並んだ別の画面を確認し、驚きの声を上げた。
暫くして、未知の形象機器が有する四門の巨大な砲身が唸り始めた。兵器の使い手――マミヤ・イツキは叫ぶ。
「いっけえええっ!」
絶叫と共に放たれた光の帯が食人鬼の巣を破壊する。城から上がる煙が、予測し得る戦果が、イツキを嘗てない程の興奮状態に至らせる。それ故に、彼女は気付かなかった。自身の肉体から前回起動時よりも幾分か多く命素が失われ、加えて操作に微細な狂いが生じていることに。
◇◇◇
同じ頃、ササラとメルーゼルは騒ぎに乗じて城下町への潜入に成功していた。ササラは自身も開発に協力した新兵器の威力を目の当たりにして絶句する。一方、メルーゼルは満足気に笑っていた。
「イツキは上手くやっているようですね。さあ、僕達も今の内に行きますよ。覚悟は出来ていますか?」
「はい。でも、お城や町で暮らす方々は大丈夫なのでしょうか?」
「心配には及びませんよ。浄種は二足獣よりもずっと丈夫ですし、防御や治療の手段も多く有していますから、ちょっとやそっとの怪我では死にません。それにイツキが頑張り過ぎないよう、あの形象機器には特別な仕掛けを潜ませてありますので」
「……分かりました」
自信に満ちたメルーゼルの言葉を聞いても、ササラは憂慮の念を拭いきれなかったが、優先すべきものが他にあることは理解している。よって、彼女は反論しなかった。
「では、行きましょう。まずは打合せ通り、城壁北部にあるあの塔を目指します。事前に得た情報に誤りがなければ、大図書館へ繋がる隠し扉がある筈です。城内には魔法士が大勢いますので、看破され、逆に疑いを持たれるのを避ける為に姿を隠す魔法は使いません。極力目立たないよう、扉の中に入るまでは声を出さないで下さい」
ササラは一層顔を引き締めて「畏まりました」と返し、メルーゼルが目を向けた先を見た。そこには巨大な黒色の石筍群が如き城が、曇り始めた空を背景にして聳え立っていた。
◇◇◇
時間が経過するに連れ、城の被害と住人の混乱は増していった。クシャトカトラ達は居ても立ってもいられず部屋を飛び出す。後で誰かしら部屋に駆け込んでくるかもしれないので、念の為「先に避難するから探さなくて良い」旨を記した紙だけ残しておいた。
走りながら、ルキセクエスは苦笑した。
「そろそろ機嫌直せよ」
返って来た声は冷たい。
「私から離れた場所を走れ。否、そもそも私に付いて来るな」
「拗ねてる場合か。緊急事態だぞ」
言葉は正論の体を成しているが、口調は他人を揶揄する時のものである。クシャトカトラは舌打ちし、ルキセクエスから少し距離を取った。
「否、だからってお前が離れるなよ。行き先は一緒だろう」
「残念だったな。私は以後は別行動だ。フブフゲルグ様との取引の件もある。少しでも信用を得ておかないと」
「お前、まさか襲撃者の許へ向かうつもりか?」
「さあ」
意固地なクシャトカトラに辟易しつつも、ルキセクエスは彼を諭す。
「止めた方が良い。今回の襲撃はちょっと変だ。さっき城兵達と擦れ違った時に奴等の会話が耳に入ったんだが、城を破壊した魔法は城下から放たれたらしい」
そこでクシャトカトラは足を止めた。間を置かずルキセクエスも立ち止まる。短い時間見詰め合い、次にクシャトカトラの方が神妙な面持ちで尋ねた。
「私は聞いていなかった。随分と余裕があるのだな。噂話に意識を向けるなど」
「何? 何か疑ってるみたいに聞こえるんだけど。本当だぞ。こんな状況下で嘘なんて吐いてどうすんだよ」
「知らん。私がお前に問うことだ」
「ああ、もう面倒臭い。良いから聞け! 兵士達が言うには、だ。一発目は郊外からの攻撃かもしれないんだとさ。事実か妄想かは知らんけども」
ルキセクエスは吐き捨てる様に言う。その態度と普段の彼を比べるに、本当に嘘を吐いてはいないのだろう。クシャトカトラは少し黙り、考える。然る後に、彼はこう返した。
「城内まで届いていたぞ」
「だな」
「有り得ない。そこまで威力を有した形象機器は、世界中で指で数えられる程しかない。それらとて厳重に管理されていて自由には使えないのだぞ」
「だから、おかしいと言っているんだよ。裏にどんな事情が潜んでいるか分からない。あと、土地勘のない俺達が手を出したら、却って城の者達の邪魔になるかもしれないだろう。この件は差し当って触らない方が良い」
クシャトカトラは小さく唸る。ふと、彼の脳裏に過日破壊されたトルドフィメシス城が浮かんだ。
「もしや、私の城を襲ったのと同一犯ではあるまいな」
「既に死に体のお前を始末する為だけに、陛下の覚えも目出度きフブフゲルグ様をも巻き込んで? しかも、浄種を恨んでいるであろう二足獣に、浄種ですら手を焼く威力の兵器を味方側として見せる愚を犯してまでか? ないね、ないない。狙いは多分フブフゲルグ様自身だろうよ。あの方も敵が多いからな」
「内戦、か」
「不吉なことを言うなよ」
嘗ては戦いによって功績と財を得ていたルキセクエスが渋面になった。けれども、その表情は直ぐに侮り混じりの作り笑顔に取って代わられる。怖気付いていると解釈されたくなかったのだろう。
「でもまあ、全くの的外れとも言い切れないのか。これが既知の形象機器の不正使用でないなら、陛下が許可を出したか、新たに開発された物となる訳で。後者の場合だったとしても資金や立地、各種認可等を考えると、何処かの名家が関与してそうだしな。参ったね。二足獣を盾にして実体を隠そうとしている点だけでも厄介なのに」
「懸念事項は他にもある。もしかしたら――」
唐突に、クシャトカトラは目を見開き硬直した。彼の状態を奇妙に思ったルキセクエスは、視線を追って振り返る。後方の離れた場所にはサクサスバ書庫城の使用人達がいた。皆、慌ただしく走り回っている。その中に知り合いでも見付けたのだろうか。
ルキセクエスは身体の向きを戻して尋ねた。
「どうした?」
だが、クシャトカトラはルキセクエスに意識を向けない。そして次の瞬間、彼はルキセクエスを押し退けて駆け出した。目指していた城壁の欠損部とは逆の方へと向かっている。ルキセクエスは慌てた。
「おい、待てって。何処へ行くんだよ!」
無論、返事はない。ルキセクエスは状況が掴めないまま、異常を来した友人の後を追った。




