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流転の國 vol.1 〜突如として世界を統べる大魔術師になった主人公と、忠実で最強な配下達の物語〜  作者: 川口冬至夜


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第九話 白い部屋

普段は城のどこにあるのかも分からない白い部屋。

主は側近のミノリと二人で話をします。

その後、姫とジェイは…。

「では、19時までに玉座の間に来ること。いいわね?」

「はっ」

カフェテラスにルーリとユキを残し、一足先に主は席を離れた。

皆が集まる前に会わなければいけない人がいる。

案の定、主の部屋の前に彼女はいた。

「ご主人様…!」

「ミノリ、ご苦労だったわね」

「ご主人様…!」

「此度の一件、貴女に詳しく知っていてもらう必要がある」

「ご主人様…!」

「来なさい」

今にも泣き出しそうなミノリを連れて、白い部屋に入る。

ここは、誰も知らない部屋。

ここは、誰にも見えない部屋。

「皆から聞いたとは思うけれど、改めて今回の一件について話すわね」

話の内容は今夜の会議で説明することと同じ。

でも、その前に直接ミノリだけに話す必要があるとマヤリィは思ったのだ。


話を聞いたミノリは、その場に跪き、頭を下げ、今にも泣きそうな顔をしつつも気丈な声で、主に問う。

「ご主人様…!ミノリは…ミノリは…ご主人様のお役に立つことだけが生きる目的でございます。なのに…ユキの裏切りを聞いて取り乱してしまいました。皆に迷惑をかけました。『流転の羅針盤』を使うべきではない場面で使ってしまいました。こんなミノリが、ご主人様の側近として存在することは間違っているのでしょうか…?」

それを聞いたマヤリィは床に両膝をつく。

「聞いて頂戴、ミノリ。貴女は私にとって大切な存在。私に忠誠を誓い、私に全てを捧げ、私に精一杯尽くしてくれるミノリという側近が存在することは、とても心強いことよ。…今日も貴女が書庫に行き、書物の魔術師として十二分に努力したことを私は知っているわ。私は貴女を頼りにしている。ミノリ、これからも私についてきてくれるかしら」

「ご主人様…!勿論にございます!有り難きご主人様のお言葉、然と心に刻みました!ミノリは、これからも貴女様の御為、全身全霊で力を尽くさせて頂きます…!!」

ミノリはようやく笑顔を見せた。


「それと、貴女に教えておきましょう」

「はっ。お伺い致します」

「ユキが髪型を変えたの。超短髪にね」

「!!!???」

ミノリは混乱した。

確か本当の姿は大人の女性だと聞いたけど、髪の長さまでは聞いていない。

「自慢の長い髪だったみたいだけれど、バリカンを使って短く刈り上げるようシェルに命じたの。天使だった頃の面影は全て捨ててしまわなくては前に進めないかと思ったのよ」

そう言って主は不敵な笑みを浮かべる。

(それは…ユキにとって嬉しいことなのかしら?ミノリだったら泣くけど…)

「ピクシーカットにしたのだけれど、いっそバズカットにでもさせた方がよかったかしら。そうしたら染める手間も省けたわね…。次はそうするようシェルに言っておきましょうか」

主は独り言のように呟く。

っていうか、この先ずっと彼女の髪型はご主人様が決めるの!?

(こ、怖い…。怖いけど、怖いご主人様も素敵だわ。サディスティックって言葉があったけど、今のご主人様はまさにそんな感じ…。この御方はとても慈悲深くお優しいお顔で恐ろしい命令をなさるのね…。でも、怖いご主人様も素敵だわ。でも、ミノリだったら絶対泣くわ)

ミノリはほんの少しだけユキに同情した。

「では、19時に玉座の間で会いましょう。それまでゆっくり休んで頂戴」

「ありがとうございます、ご主人様」

マヤリィはミノリを部屋まで送り届けた後、次の目的地に向かった。

そう、彼の所へ…。


ジェイは自分の部屋に向かって歩いていた。

その時、突然何もない壁から手が出てくる。

「うわっ」

ここは、誰も知らない部屋。

ここは、誰にも見えない部屋。

「この御手…姫ですね!?」

そのまま白い部屋に引きずり込まれるジェイ。

「さすがは私の側近ね。分かってるじゃない」

と言いながら、姫はジェイの頬を平手打ち…しようとしたが、しなかった。

「姫…ごめんなさい」

ジェイはひれ伏して謝る。

「裏切り者は言語道断だけれど、貴方の所業も許し難いわね。…そう思っている者は多いはず」

姫は悲しそうな声で話す。

「でも、貴方にどんな罰を与えろと言うの…?」

ひれ伏しているジェイの傍らに座り、姫は沈痛な面持ちで彼の目を覗き込む。

「姫…貴女に命じられれば僕は死にます」

「ふざけないで」

姫は静かな声で言う。静かな声で怒っている。

「死にたいのは、私よ」

そういえばこの人、精神病だった。

「姫、僕は…」

「それ以上喋るのは許さないわ」

ジェイを押し倒し、姫は彼の唇を封じる。

(貴方がいなくなった世界で私にどうやって生きていけと言うの?)

ジェイの唇に自身の唇を押し当てたまま、姫は涙を流す。

(姫、僕はどうしたらいいんでしょうか…)

愛しい人につらい思いをさせた現実がジェイを打ちのめす。同時に、姫の唇の感触が彼の心を揺さぶる。姫はなかなか離してくれない。っていうか舌まで入れてくる。

「苦しいの。誰かが貴方を裁くかもしれないと思うと、苦しいの。死なないで。どこにも行かないで。…私を、抱いてよ、ジェイ。貴方から離れたくない」

『流転の國』の主は完全にキャパオーバー。

「私は貴方のご主人様じゃないわ。私は貴方の…女なのよ…」

姫が指を鳴らす。『転移』魔術だ。

転移先はジェイの部屋。ベッドの上。

「私は本気よ、ジェイ」

「…いいんですね、姫?ここは僕のテリトリーですよ?」

言葉の代わりにキスが返ってくる。

「ジェイ…全部、忘れたいわね…」

彼女は一糸纏わぬ姿になり、彼に抱きつく。

「私を見て」

「見ますよ、姫。…何もかも」

そのまま、ジェイはマヤリィを抱いた。


「いいんですか、こんなことしてて…」

「今更そんなこと言わないの。まだ会議の時間までには余裕があるわ」

姫が蕩けそうな瞳でジェイを見る。彼との情事に気持ちは浮ついている。

それはジェイも同じだった。

(童貞だったの、バレたかな…)

因みに、マヤリィは処女ではなかった。

「…姫」

「何?」

「今度、僕に切らせて下さいよ、貴女の髪の毛」

それを聞くと、マヤリィは嬉しそうに笑った。

「ふふっ、思いっきり短くしたいわ」

「勿論です」

なぜ彼女が短い髪に拘るのか彼は知っている。

「んっ……」

今日何度目のキスだろう。

ジェイが甘く濃厚なキスに酔っていると、突然マヤリィが真面目な顔で言う。

「貴方に罰を与えましょう」

「え、いきなり!?」

「ええ。今、皆に話す言い訳を思い付いた。…とりあえず、これは預かっておくわ」

そう言ってジェイの手を取り、『流転の指環』を外す姫。

「代わりに私の指にはめて」

「はい、マヤリィ様」

ジェイが言われた通りにすると、『流転の指環』はマヤリィの指のサイズに合わせて縮んだ。

「左手の薬指でよろしかったでしょうか?」

「ええ。ありがと」

結婚指輪でももらったみたいに嬉しそうな顔で姫が言う。今の二人は恋人同士だ。

「あと、一週間の謹慎ね」

「え、またいきなり!?」

「言い訳を思い付いたと言ったでしょう?」

「はい、そうですけど…。この城、地下牢とかあるんですか?」

「そんな所に貴方を入れるわけないでしょ。他の者には違う報告をするけれど、貴方は自室で謹慎するのよ」

違う報告ってなんだろう?

「毎日私が様子を見に来るわ」

「毎日姫が僕を襲いに来るんですね」

「さすがは私の側近ね。分かってるじゃない」

そう言ってまたキスをする。

姫、欲求不満だったんですか?

「ってことで、貴方はここから出ちゃ駄目よ。これから、側近のジェイは一週間地下牢で過ごします、って皆に伝えに行くんだから」

「やっぱり地下牢設定なんですか!?」

姫は少し元気を取り戻したらしい。

「では、そろそろ行くわね」

いつの間にか服着てるし。

「寂しかったら、泣いてもいいのよ?」

「泣きませんよ」

姫は強がるジェイを見て微笑む。

「本当に毎日来るわよ。そして毎晩やるわよ。覚悟しなさいね」

そう言い残して『転移』した。

一人残されたジェイは、

「寂しいじゃないですか、もう…」

姫が恋しくて、早くも泣き出した。


っていうか、毎晩やる宣言ってどうなのよ?


元の世界では会うことさえ許されなかった二人。

しかし、マヤリィは経験済だったようで…?

彼女がどんな人生を送っていたかは後々出てきます。

精神病設定、忘れていませんよ。


お読み下さり、感謝致します!

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