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流転の國 vol.1 〜突如として世界を統べる大魔術師になった主人公と、忠実で最強な配下達の物語〜  作者: 川口冬至夜


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第七話 魔力爆発

ミノリ様ご乱心の第七話。

『流転の羅針盤』は汎用性の高いマジックアイテムです。

誰がミノリを止めるのでしょう…?

「何ですってぇぇ!!!???」

その頃の玉座の間。

書庫から戻ってきたミノリがユキの裏切りを聞いて、怒り狂っていた。

「ジェイ、なんでその場で殺さなかったの?なんで生かしておくの?ミノリには理解できかねます、ご主人様ぁぁ〜〜〜!!!」

ジェイもネクロもシロマも疲れ切っている。

「あの者を殺してミノリも死ぬ!!ご主人様を裏切った罪は万死に値する!!しかしご主人様がお決めになったことに反する者も万死に値する!!よって、ミノリはあの者と心中する!それがこの國の為よ!!」

ミノリの魔力が暴走しまくっている。

魔術書は物凄い勢いで火を吹き水を噴射し、『流転の羅針盤』は目を開けていられないほどの光を放ち、何よりミノリ本人の殺気が爆発して玉座の間は大変なことになっていた。

「誰か、ご主人様をお呼びしろ」

しかし、誰も動けない。

「『人化』魔術は膨大な魔力が必要でございます。私といえど魔力が枯渇しております」

ネクロが苦しそうに言う。今にも倒れてしまいそうだ。

「申し訳ございません。深い傷でしたので、回復魔法だけでかなりの魔力を消費してしまいました。『ダイヤモンドロック』よ、我が元へ戻り給え」

シロマの魔術具がアイテムボックスに戻る。

「なんで誰も念話とか使えないんだろ」

ジェイが呟く。

ジェイは『シールド』を張っているが、あまり長くは続かないだろう。そもそも、防御魔法に適性があるかと言われると、ないような気がする。それでも、ご乱心のミノリから皆を守らねばならない。

「そういえば、リスはどうした!?」

一緒に帰還したはずなのに、姿が見えない。

あの惨状に耐えかねて退出してしまったのだろうか。ご主人様と一緒にここを出たのは、ユキだけだったはずだが…。

ジェイの魔力も尽きかけている。

(姫、いつ戻られるのですか…)

気が遠くなる。ミノリの喚く声が遠くなる。

(仲間内で自滅なんて嫌だなぁ…)

ジェイは思う。ミノリを止められるだけの魔力が自分に残っていたらよかったのに、と思う。

(もしかして、死んだら元の世界に戻るんだろうか…?でも、そうだとしたら姫を残して僕だけ死ぬわけにはいかないな…)

突然、ミノリの魔術が止まる。

「魔力切れか!?」

羅針盤の光も消えた為、今まで見えなかったミノリの姿が確認出来る。そしてその背後には…

「『シャットダウン』。ご主人様に頂いた宝玉が役に立ちました」

「は、離してっ!!ランジュ!!」

ランジュの逞しい大きな手には、マヤリィの魔力が込められた小さな球、『宝玉』があった。

それは、危機に陥った時、その場を切り抜ける為に一番適切な魔術が発動するように出来ている。

魔力量の少ないランジュに、いざという時の為にマヤリィが持たせておいたのだ。

いざという時ってこれかよ。

「『シャットダウン』は全ての魔力をオフにする最上位魔術…。さすがは、ご主人様の宝玉ですな」

ネクロは安堵して座り込む。

「なんでっ…なんで皆そんなに冷静でいられるのよっ!?っていうか早く離して!!」

ランジュは後ろからミノリの身体を拘束して離れなかった。魔力を封じられては、ミノリはランジュに敵うはずがない。

「全てはご主人様のお決めになったことです。我等はそれに従うのみでございます。…ところで、ユキ殿が翼を失くして人間になったというのは本当ですか?」

「え、何!?それってどういうこと!?」

ユキが密偵だった、というところまでしか話を聞いていなかったミノリが驚いて訊ねると、ネクロが説明を始める。

「ここへ帰還した時、ユキ殿は翼を斬られた状態でした。シロマ殿の回復魔法で傷は塞がりましたが、翼のない天使になってしまいましてな。その後、私はご主人様から人化魔術を施すよう命じられ、ユキ殿は本物の人間になりました」

「っ…なんてことなの…!」

ユキが裏切ったことしか頭になかったミノリは今の話を聞いてため息をついた。

「天使が翼を斬られるなんて、想像を絶する痛みだったはずよ。なんだか、可哀想になってきちゃったわ。誰がそんなことをしたの?ご主人様がそんなことをお命じになったの?そんなはずない。誰か違うって言って!」

人の心を取り戻したミノリが今度はユキに同情する。あのお優しいご主人様がそんな惨い仕打ちをするわけがない。ミノリはそう信じていた。そういう意味では、ミノリは誰よりも主のことを分かっていた。

「…やったのは僕だ。僕がリスに『暴露』魔法を使わせてユキの正体を暴き、天界について喋らせ、挙句ご主人様への報告もなしに彼女の翼を切り落とし、そのままここへ帰還した」

「そう…貴方の独断だったの…」

ミノリは急に大人しくなった。

「寛大なるご主人様…。あの御方は裏切り者を許し、貴方の惨い行いを許し、再びユキと仲間になれとおっしゃるのね…」

もう一度ため息をつくミノリ。先ほどの暴走で魔力も体力もかなり消耗した為、今はランジュにもたれかかる形で座っている。

「ご主人様、今すぐにお会いしたい…。この惨劇を忘れさせて欲しいです、ご主人様…」

「ミノリ殿?」

「お部屋の前でお待ちしていれば確実にお会い出来るかしら。それとも、各部屋を回った方が早くお姿を拝見出来るかしら。ミノリは疲れました。癒して下さい。褒めて下さい。書物の魔術師として、貴女様の御為に書庫で働いていたミノリを褒めて下さいませ…!」

突如始まったミノリワールド。別に珍しくもなんともないが、面倒なこと極まりない。

「お、お部屋の前でお待ちしましょうか」

ランジュが言う。皆も頷く。

「ああ、ご主人様ぁ…」

ミノリはなおも主を呼ぶ。皆の声は聞こえない。

「ご報告したい件があるのです。あの魔術書を解析した結果を聞いて頂きたいのです…」

ミノリはいつの間に取り出したのか、一冊の本を大事そうに抱えたまま、しばらくその場に座り込んでいた。


(玉座の間で魔力爆発があったみたいね…)

マヤリィはミノリの魔力が暴走したことと、ランジュに持たせた『宝玉』の魔術が発動したことに気付いていた。

(今は落ち着いたようだし、深くは考えないことにしましょうか…)

非常事態が完全に収束したことを感じ取ったマヤリィは、知らないふりを決め込むことにした。

一方、玉座の間に居合わせた皆も、ミノリの魔力爆発に関してはご主人様に報告しないことにした。


本当にそれでいいのか?


訓練所から玉座の間に戻り、宝玉を使って『シャットダウン』を発動したのは、筋骨逞しい大男ランジュでした。

彼は魔力量が少ない代わりに、物理的な強さと高い防御力を持ち、『流転の斧』を授けられています。


お読み下さり、ありがとうございます!

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