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流転の國 vol.1 〜突如として世界を統べる大魔術師になった主人公と、忠実で最強な配下達の物語〜  作者: 川口冬至夜


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第四十六話 宙色の魔力

流転の國の休日も今日で最終日。

初めて第3会議室が登場します。

流転の國の休日五日目。午前十時。

ジェイが姫の部屋のドアをノックする。

当然のことながら、主の部屋には誰も『転移』出来ないようになっている。

いくらジェイでも、それは認められていない。

「姫、具合はいかがですか?」

「大丈夫よ。貴方とルーリのお陰で、明日には予定通り皆の前に立てそうだわ」

「それは何よりです」

ジェイは安堵する。

相変わらず綺麗に片付いているな、とジェイは姫の部屋を見る。

「コーヒーでもいかが?私が淹れるわ」

「いいんですか?大丈夫ですか?」

「ふふ、大丈夫よ。座って待っていて頂戴」

「はい…!」

ジェイは嬉しそうに返事をする。

姫がコーヒーを淹れてくれるなんて…!

彼女の家に遊びに来た彼氏の気分になっている。

(元の世界じゃ絶対に許されないことだったなぁ…)

そう思いながらマヤリィのコーヒーを待っていると、着信音が鳴る。

「姫、通知が来たみたいです。なんか音がしましたよ」

「たぶんパソコンね。確認するわ」

姫は淹れたばかりのコーヒーを持ってきてテーブルに置くと、すぐにパソコンを確認する。

「メールが来たみたいね」

差出人はルーリだった。

「マヤリィ様、お身体のお具合はいかがでしょうか?…先ほど、ミノリとシャドーレを新しい部屋に案内し、鍵を手渡して参りましたことをご報告致します。これより私も自由時間とさせて頂きますが、何かございましたらいつでもお申し付け下さいませ。明日、マヤリィ様に玉座の間でお逢い出来ますことを心より楽しみにお待ち申し上げております。 マヤリィ様の永遠の恋人・ルーリより」

「ルーリったら…本当に頼りになるわ」

マヤリィはすぐに返信する。

「…姫、いつからルーリは貴女の永遠の恋人になったのですか?」

「うふふ、嫉妬しないのよ、ジェイ?」

得意満面の笑みで姫が言う。

「嫉妬したくもなりますよ。ルーリ相手に僕なんかが敵うはずないじゃないですか」

「ジェイ、貴方は私にとって特別な存在なの。それを忘れないで頂戴」

甘く優しい声でそう言うと、姫はジェイにキスをする。

(もう…僕は貴方一筋だっていうのに)

そう思いながらも、特別な存在と言われて嬉しいジェイであった。

「…ところで、姫。実はこの間、ルーリに姫と僕の元の世界のことを話しました」

「そうだったの。…そういえば、皆の元の世界の話って聞いたことないわね」

姫はジェイの言葉に驚くこともなく、皆のことを気にしはじめる。

「今度聞かせてもらおうかしら」

「そうですね、僕も気になります。今度聞いてみましょう」

(貴女の過去に関する詳しいお話は、こちらからは聞かない方が良いのでしょうね…)

ジェイはこの間ルーリと交わした会話を思い出しつつ、姫に深く訊ねることはしない方が良いと判断した。たぶん姫のことだから、聞いたら話してくれるだろう。でも、それでは過去のつらい記憶を思い出させることになってしまう。そんなことはとても出来ないとジェイは思った。

「…ジェイ、今日はずっと私と一緒にいて頂戴」

急に姫がジェイの隣に座り、甘えるような声で言う。

「どこにも行かないで」

そのまま、ジェイにもたれかかる。

「姫、僕はどこにも行きませんよ。心配しないで下さい」

「ジェイ……」

姫はそっとジェイにキスをする。

「…私を抱いて」

「身体は大丈夫なんですか…?」

「ええ。お願い」

心配そうな顔をするジェイだが、姫に上目遣いでお願いされては断れるわけがない。


時間が経つのも忘れて、ベッドで抱き合う二人。

いつの間にか夕方になっている。

「…ねぇ、一緒にお風呂に入りましょう?」

身体が冷えてしまったのか、姫がジェイを誘う。

「いいんですか?」

「貴方が嫌でなければね」

自分を気遣ってくれる姫に、ジェイは笑顔で答える。

「嬉しいです、姫…!」

二人が一緒にお風呂に入るのは初めてだった。

気付けば、すっかり夜になっている。

「…姫、ずっと僕と一緒にいて下さるのは嬉しいんですが、ルーリは呼ばなくて良かったんですか?」

「あら、貴方がそんなこと言うなんて思わなかったわ。…ルーリに会いたいの?」

珍しく自分からルーリの名を口にするジェイに、姫は少し驚く。

「別に会いたいわけではないですが…今夜は三人で過ごすのも悪くないかと」

なんとなく、ジェイはルーリと一緒に今晩の姫を見守りたい気がした。

「…ありがとう、ジェイ。貴方がそう言ってくれるなら、そうしましょう」

姫はそう言うと、ルーリに念話を送った。

まもなく、彼女は嬉々としてマヤリィの部屋の前に『転移』してきた。


「急に呼び出して悪いわね、ルーリ」

「とんでもないことにございます。ご主人様のお傍にいられることは私の何よりの喜びです。貴女様の病を癒して差し上げられないのが口惜しいですが、私に出来ることでしたら何でも致します。どうか、いつでもどんなことでもこのルーリにお命じ下さいませ」

ルーリが跪き、頭を下げる。

今朝のメールとは逆に、随分と畏まっている。

ルーリの言葉を聞いたジェイもまた跪いて、

「ご主人様、我等は何があろうとも必ず貴女様について参ります。流転の國の最高権力者にして宙色の大魔術師、そして私達の愛するマヤリィ様に、今一度、永遠の忠誠を誓います」

そう言って頭を下げる。

まるで玉座の間にいるみたいになっている。

「頭を上げなさい、二人とも」

「はっ」

マヤリィもご主人様の顔になる。

「貴方達に命じるわ。…今夜は一晩中、私の隣にいなさい」

気高く美しいご主人様は、威厳に満ちた声を作って、とても可愛い命令を下すのだった。


「…で、では、今宵はルーリの部屋に…」

早速いつもの調子になるルーリ。

「いや、ぜひ僕の部屋に…」

ジェイも負けてはいられない。

「間を取ってこのまま私の部屋、と言いたい所だけれど、貴方達と一緒に行きたい部屋があるの」

マヤリィはそう言って優しく微笑む。

その時、宙色の耳飾りが輝く。

「宙色の魔力よ、私達に最高の夜を与え給え」

それが輝く時、マヤリィの魔力は急激に高まる。

それが輝く時、マヤリィの魔力は全てを動かす。

「さぁ、行きましょう」

マヤリィは魔法陣を展開する。

そして、

「私の理想の光景を映し出す海辺の部屋、第3会議室へ『転移』」

次の瞬間、初めて見る景色が眼前に広がっていた。


「ここが…第3会議室…?」

二人は部屋の中を見渡す。窓がある。外は暗い。

「これは、海……?」

「それに、満月……?」

窓の外に広がる光景に二人は息を呑む。

月の光が煌々と海を照らしている。

「この部屋は、一体……」

ルーリもジェイも戸惑いを隠せない。

その時、マヤリィが明かりをつける。

「二人とも、窓辺のソファに座りなさい。コーヒーでも淹れるわ」

「姫、それならば僕が…!」

「いいから、座ってなさい」

姫にそう言われて、ジェイは素直にソファに腰掛ける。

本日二度目の姫のコーヒーである。

「海に、光の道が見えます…!」

ルーリにとって、初めて見る光景。

夜の海面に描かれる一筋の光の道。

あれは、ムーンロード。

「綺麗でしょう?これが私の好きな景色」

潮風の吹くカフェテラスとはまるで趣きが違う。

「本当ならワインでも出す場面なんでしょうけれど、私はお酒が飲めないから、コーヒーで我慢してね?」

「僕だって、飲めませんよ」

ジェイが微笑む。元の世界からそうだった。

「それから、こんな時間だけどケーキを食べましょう!冷蔵庫の中に…あったわ!」

いつぞやのケーキ顕現魔術。

宙色の魔力の使い方はこれで合っているのか?

「これがモンブラン。これがガトーショコラ。これがレアチーズケーキ。…さぁ、どれがいいかしら」

ジェイはどれがどんな味なのか分かっている。

ルーリは初めて見る美しい菓子を前にして迷っている。

三人は満月に照らされた夜の海を見ながら、そしてコーヒーとケーキに夢中になりながら、ゆったりと時が流れてゆくのを感じていた。


「ベッドは三つなんですね」

「今夜はもう遅いし、大人しく寝るわよ」

マヤリィが本当に眠そうに言う。

「そうですね。今夜はマヤリィ様のおっしゃる通り、一晩中お隣にいさせて頂きます。そして、マヤリィ様のお身体が完全に回復されたら、またルーリの部屋にお越し下さいませ…!その時はぜひ『魅惑』を…!」

と言いながら、既に魅惑の風が吹き始める。

「ルーリ、我慢出来なくなっちゃうわ」

そう言うと、自分も『魅惑』を発動する。

「さぁ、魅惑の死神さん。貴女のキスを下さいな」

マヤリィは女神のような微笑みを浮かべる。

その甘く優しく柔らかい声が、ルーリを魅了する。

「マ、マヤリィ様、可愛すぎます……!!」

ルーリさん、心の声が出てるよ。

「姫、今度一緒に第2会議室に行きましょう!実は僕、まだ行ったことがないんです」

ジェイはジェイで下心満載のお誘いをする。

「姫~!」

「マヤリィ様~!」

きりがないので、マヤリィは真ん中のベッドにさっさと横たわる。

「…見て。天井はプラネタリウムよ…」

星空の下に寝転んだような光景が広がる。

マヤリィの隣のベッドにジェイ。

マヤリィの隣のベッドにルーリ。

命令された通り、一晩中、二人はマヤリィの隣にいる。

「もう…そろそろ寝ましょうね…」

そう言ったきり、マヤリィは眠ってしまったようだ。

「僕らも寝ようか、ルーリ」

「そうだな。明日は会議だし」

ジェイが明かりを消す。

「おやすみ、ルーリ」

「おやすみ、ジェイ」

二人は言葉少なに挨拶を交わす。

まさか、こうして川の字で寝ることになるとは、予想もしていなかった。

けれど、こうしてマヤリィの右と左にいると、守りは盤石のようで安心する。

今夜何が起きても、二人はマヤリィの傍にいるだろう。

(宙色って、こういう色のことを言うのかな…)

初めて見る星空はご主人様の耳飾りの色に似ていた。

(綺麗な空だ。あの星はなんて言う名前なんだろう…)

全てはマヤリィが宙色の魔力を使って生み出した幻。

あの時マヤリィが一瞬で顕現させた美しい幻。


水晶球が「強すぎる魔力は使い方を間違えれば身を滅ぼし世界を滅ぼす」と告げたマヤリィの魔力だが、その使い方は間違っていないのだろう。


計り知れない魔力を秘めた流転の國の主は、死んだように眠っている。

ルーリとジェイはそれぞれに星空を見つめていたが、やがて眠りについた。

マヤリィが好きな光景とは、月の光が真っ直ぐに海を照らすムーンロードでした。


宙色の魔力によって生み出された幻の中で眠る三人。

明日はまた違った景色が窓の外に広がっているのでしょう。

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