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流転の國 vol.1 〜突如として世界を統べる大魔術師になった主人公と、忠実で最強な配下達の物語〜  作者: 川口冬至夜


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番外編 魅惑の死神 後編

前回の続きです。

「困ったねぇ…どうする?シロマが来るってさ。ジェイ君がこんなあられもない姿だって言うのにね」

いつの間にやらいつものルーリに戻っている。

そんな彼女は余裕綽々。

ジェイは混乱しつつも、

「そ、そんなこと言ってないで離してよ!僕の品性が疑われるよ!」

「サキュバスの『魅惑』にかかりたいとか言った時点で、お前の品性はどうかしてるよ」

ジェイは我に返ったものの、ルーリも自分も今さっきと何ら変わりない格好をしている。

赤いドレスのルーリ。さっきは直視出来なかったけれど、魅惑抜きでも恋に落ちてしまいそうな美しさ。豊満な胸の谷間と引き締まった綺麗な背中がジェイを誘惑する。輝く金色の髪に碧い眼、きめ細やかな白い肌を持つ絶世の美女。

そして、流転の閃光をその身に宿し、主の為ならば殺戮も厭わない、凄まじい魔力の持ち主。女神の顔をした死神。

「まぁ、私はこのままでも特に問題ないんだけどね」

「っ…!?」

ジェイは焦る。焦りまくる。

しかし、次の瞬間。

ルーリが指を鳴らすと、ジェイは元の通りになった。何事もなかったかのようにズボンを穿いており、ベルトもきっちり締められている。

彼女もまた『夢魔変化』の前の服装に戻っている。繊細なレースがあしらわれた黒いロングドレス。ハイヒールを履いているので、現在の身長は180cm以上あるだろう。

そのドレスは膝上までスリットが入っている為、ジェイはちらちらと彼女の脚を見る。腰の位置が高い。

(綺麗だな…)

傷ひとつない綺麗な長い脚。ジェイはルーリの美しいふくらはぎに見とれる。

(…あ、風がおさまってきた…)

二人を包み込むように吹いていた魅惑の風。

それが今、ルーリに吸い込まれるようにして消えていく。

ピンク色の風がブロンドのウェーブヘアをなびかせる。

(ルーリ…!美しい……!!)

とっくに魅惑は解けているのに、ジェイはまだ夢見心地。ルーリから目が離せない。

そこへ、

「ジェイ様、ルーリ様。これより、シロマはこの玉座の間で待機させて頂きます」

シロマが転移してきた。

「お疲れ様。その顔色だと、第4で完全治癒を発動したって所かな?」

ルーリがシロマを労う。

完全に普段のルーリに戻っている。

先ほどの念話は皆に届くようになっていたから、第4会議室にマヤリィと予言者、そしてユキとシロマが揃っていたことをジェイもルーリも知っている。

「はい。ご主人様の命により、予言者に完全治癒魔術を施しました」

ユキに魔力を分けてもらったとはいえ、シロマの顔色は悪い。第4で何が起きていたのか二人は知る由もないが、シロマをここまで衰弱させるとは、その予言者はかなりひどい状態だったのだろう。

「…ところで、この甘い香り…ルーリ様の魔力によるものでしょうか?」

そう言われてみれば、風は消えたものの、玉座の間は夢魔の甘い香りに満たされていた。

「ようやく分かりました。万が一、この玉座の間に何かあった時の為に貴女様の魔力をここでお使いになられたのですね。ご主人様がルーリ様に指示なされたのはこのことだったのでございますね」

シロマは勝手に納得してくれた。

「それにしても…ルーリ様の香り…私も誘惑されてしまいそうです」

魅惑への耐性もなく、魔力も万全ではないシロマには、今のこの空間は刺激が強すぎる。

「これ、なんとかならないの?」

ジェイもくらくらしている。

「そのうち消えると思うけど。…ジェイに煽られてうっかり本気出そうとしちゃったからな…。マヤリィ様にバレたら困るな」

「本気出そうとしちゃったって!?さっきのあれ、まだ本気じゃなかったの?」

「お愉しみはこれからだったでしょうが。予定ではあの後、私も服を脱いで…」

「ていうか、なんで僕の服、一瞬で元に戻ったの?あれも君の魔力?なんて魔力?」

「一度に色々聞くなよ。…それより、シロマに魔力を分けてあげた方がいいんじゃないか?彼女、かなり消耗してるぞ」

ルーリは冷静にシロマを見る。

「ていうか、なんで君の魔力はほとんど減ってないの?あれだけ魅惑使ったのに」

「ご主人様には遠く及ばないが、私も魔力量はかなり多い方だ。それに、魅惑魔法は意外と魔力を消耗しないからな。…後で続きをやろうか?」

「い、いや…もう十分だよ…」

もうこの人を煽るのはやめよう…。

ジェイは心に誓った。

危うく『魅惑』に殺される所だった。…気持ちよかったけど。

「…さて、ダイヤモンドロックに魔力を送るとしようか」

その言葉を聞いてシロマは魔術具を差し出し、

「ルーリ様のお優しいお取り計らいに感謝致します」

そう言って頭を下げた。


一方、第4会議室には、いまだ目を覚まさないバイオを見守るマヤリィの姿があった。

勿論、玉座の間で想定外の魔力放出があったのには気付いている。

(ジェイとルーリは何をやっているのかしら。大した魔力量ではないから、お互いの魔力の確かめ合いでもしているのか…。でも、これって『魅惑』よね?)

使った魔術の正体までしっかりバレている。

(…まぁ、シロマが回復して転移するみたいだし、おおごとにはならないでしょう)

ユキには、安全の為、自室から出ないようにと言ってある。

(全ては、バイオが目覚めてからね…)

マヤリィは先ほどの完全治癒魔術で、シロマに加勢する為に大量の魔力を使ったにもかかわらず、ほとんど消耗していなかった。

流転の國の最高権力者。宙色の大魔術師。

しかし、本人は、自身の持つ強大な魔力について全てを把握しているわけではなかった。

配下がどこで何をしていようと、ご主人様は全てお見通し。

だからといって、咎めもせず知らないふりをするのがマヤリィ様。


次回から本編に戻ります!

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