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流転の國 vol.1 〜突如として世界を統べる大魔術師になった主人公と、忠実で最強な配下達の物語〜  作者: 川口冬至夜


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第十一話 未知の国

今回、半分くらいはアレルギーの話です。

ミノリさんは責任感強すぎてご機嫌斜めです。


ジェイが自室謹慎中の玉座の間。

「この間リス達が探索に行った西の森では、薬になるような植物は見つからなかったと報告を受けた。…他に、気になる点はあったかしら」

主は探索に同行していたリスとユキに訊ねる。

「はっ。畏れながら、申し上げます。薬草になる植物は見つかりませんでしたが、キノコの多い森にございました。ご主人様、薬になるキノコは存在しないのでしょうか?」

「キ、キノコの森…?」

「はい。色々な種類がございました。薬草になる植物を探すのが目的でしたので今回は持ち帰りませんでしたが、ご主人様がお望みであれば採って参ります。そして、私がキノコ料理を作っ……」

途中まで意気揚々と喋っていたリスが急に黙る。

主の顔色がどんどん悪くなってきたからだ。

「あ、貴女の気持ちは嬉しいけれど、私は…その…キノコアレルギーを持っているの!」

(よりにもよってなんでキノコの森なのよ!?絶対行きたくないわ…!)

ご主人様はキノコが嫌いだが、アレルギーというわけではない。

「畏れながら、ご主人様。物を知らぬ愚かな私にお教え下さいませ。あれるぎー…とはどのようなものなのでしょうか?」

リスが不思議そうな顔で聞くと、主の横に控えていたミノリが顔をしかめて言う。

「エルフはアレルギーという言葉も知らないほど健康的な種族なの?知らない言葉を恥ずかしげもなくご主人様にお訊ねするなど言語道断。ミノリが代わりに答えるわ。…いい?アレルギーというのはね…」

主が何も言わないうちにミノリが説明する。

(…ネクロ、お前はあれるぎーが何だか知っていたか?)

後ろの方にいたルーリが隣にいたネクロに小声で聞く。

(い、いえ…私も初めて聞く言葉にございますぞ)

(よかった…知らないのは私だけじゃなかったか)

二人のささやくような会話は、完全にミノリのアレルギー講座にかき消されていた。

「これで物を知らない愚かな貴女にもアレルギーの恐ろしさが分かったかしら?万が一、ご主人様がアナフィラキシーショックを起こされたらと考えるだけでミノリは胸が痛いわ。とにかく、キノコは駄目。絶対に採っては駄目!分かった!?」

ジェイがいない為、いつにも増して側近としての責任を重く感じているミノリは、厳しい言葉をリスに浴びせた。

「も、申し訳ございません!アレルギーとは、それほどまでに恐ろしいものなのですね…!ご主人様、無知な私をお許し下さいませ!ミノリ様、教えて頂き感謝致します!」

その場にひれ伏すリスを無視して、ミノリは、

「畏れながら、ご主人様。此度の探索班の人選は誤りでございました。誰を探索に行かせるかを決めたのはミノリとジェイにございますが、有益な情報を持ち帰れる者を選ぶべきでした。大変申し訳ございません、ご主人様。どうか、ミスを犯したミノリを罰して下さいませ」

そう言うと、跪いて頭を下げた。

「…いえ、その必要はないわ。三人を探索に行かせることを最終的に判断したのは私なのだから、貴女に罪はない。…あと、リスはまだ若いのだから、知らない言葉もたくさんあるでしょう。ここは私に免じて許してやって頂戴、ミノリ。…それにしても、今のアレルギーの説明はとても分かりやすく、素晴らしかったわ!だから、私がキノコアレルギーであることを皆も覚えておいてね」

これ以上この話が長引くのは面倒だ。

(とりあえず、私がキノコが駄目なのは皆に伝わったでしょうし、これでよかった…のかしら)

マヤリィは頭が痛くなってきた。

でも、本題はここからだ。

「では、次の話に移るわ。次の計画では、例の森からさらに西の方角に位置するという国に進出したいと思っている。その国の名は『桜色の都』。天界とは違い、人間が築き上げた国家らしいわ」

マヤリィは新たに書庫で発見した大きな地図を広げる。

「そこで、次の会議までに、この『桜色の都』がどのような国なのか、皆に調べてもらいたい。城の書庫には歴史書が数多く存在するから、この城から出なくとも一定の情報は得られるはずよ」

「…では、その結果次第で、『桜色の都』とやらに進出するかどうかを判断なさるということにございますね?」

ルーリが確認する。

「ええ。いくら人間の国家とはいえ、私達の話が通じない可能性もあるから、事前の情報収集は念入りに行いたいと思っているわ。出来れば危険を冒さずにその国と交流したいものね」

『桜色の都』。現段階では、未知の国だ。

「では、ミノリを筆頭に歴史書の解読を始めて頂戴。しかし、書物の解析に適性がないと自覚している者はここに残りなさい。私が直々に違う仕事を与えるわ」

「はっ!」

「畏まりました、ご主人様!」

皆は次々に玉座の間を退出して書庫に向かう。

そこに残ったのは、主ともう一人だけ。

「意外だったわね…。貴女に苦手分野なんて存在するの?」

「はっ。恥ずかしながら、書物の解読は苦手でございます。皆の足手まといになることだけは避けたいと思い、ここに残らせて頂きました」

彼女はそう言って跪くと、頭を下げる。

「ご主人様、私は何を致せばよろしいでしょうか…?どうか、ご命令下さいませ」

「…分かった。では、貴女のもう一つの魔術をこの身で体感することにしましょう」

主はそう言うと、指を鳴らし、彼女とともに『転移』したのだった…。


ご主人様、誰とどこへ『転移』したの…?


読んで下さり、感謝致します!

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