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流転の國 vol.1 〜突如として世界を統べる大魔術師になった主人公と、忠実で最強な配下達の物語〜  作者: 川口冬至夜


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第十話 『星の刻印』消失

臨時会議。新しいマジックアイテム。

これで一件落着かと思いきや…

主は雷の魔術師に命じる。

『流転の閃光』を発動して頂戴。

「…というわけで、此度の一件は決着した。この決定に満足出来ない者もいるとは思うけれど、これは私の命令よ。皆、この現実を受け入れ、私の言葉に従いなさい」

「はっ!」

「畏まりました、ご主人様!」

皆は跪いて、頭を下げる。

それを確認すると、マヤリィは話を続ける。

「今伝えた通り、現在のユキは魔術を使うことが出来ない。…そこで、私は考えた。ユキには新しく魔術を習得してもらうわ」

そう言って、主はユキを呼び寄せ、首に何かを装着した。

「これは『悪魔のチョーカー』と呼ばれるマジックアイテム。毒系統魔術の習得に役立ってくれるでしょう」

「はっ。有り難く頂戴致します。ご主人様のお役に立つ為にも、必ずや新たな魔術を習得することをお約束致します」

ユキは再び魔術を使うチャンスを与えられて嬉しく思ったが、そのアイテムの詳細を知っている者は激しく動揺していた。

『悪魔のチョーカー』。それは、主にしか外すことが出来ないアイテムで、一定期間内に魔術を習得出来なければ、チョーカーを着けている者に『毒』が回る(=即死する)という諸刃の剣である。

「それから、貴女にはこれを」

主はネクロにもマジックアイテムを渡す。

手渡されたのはいかにも黒魔術師が持っていそうな禍々しい雰囲気の黒い鎌。

「これは『悪神の化身』と呼ばれる鎌。『流転』と名の付くマジックアイテムに匹敵するほどの力を持っているわ」

「有り難く頂戴致します、ご主人様」

ネクロの手には、前に渡したレースの手袋がはめられている。

「本当に必要になる時まで、アイテムボックスにしまっておきなさい。とても危険な物だけれど、貴女なら使いこなせるはずよ」

「はっ。勿体ないお言葉にございます。ご主人様のご期待に応えられますよう精進致します」

ネクロは深く頭を下げる。

「それから、ルーリ」

「はっ」

「今すぐ『流転の閃光』を発動して頂戴。そして、私に向けて雷魔術を放つのよ」

「っ!?」

「大丈夫だから。…皆は離れていて」

マヤリィはそう言うと、右手を上げる。

「的はここよ。貴女の最高火力を見せなさい」

「畏まりました、ご主人様」

ルーリは難しい顔をしながら頭を下げると、意を決して立ち上がる。

「『流転の閃光』よ、我が身体に宿りし全ての魔力を雷に変換し顕現させよ」

彼女の指先から表れた雷は腕に絡み付き、やがて身体全体を包み込むように光を放つ。

「それでは参ります。『流転の迅雷』…!」

ルーリは命じられた通り、主に向けて魔術を放ち、それは確かに命中した。

これがルーリの実力…!?

離れていても魔力の波動を痛いほど感じる。

皆は彼女の持つ魔力の凄まじさを見せ付けられ、思わず後ずさる者もいた。

(ご主人様の御手は…ご無事だろうか…?)

雷魔術の残滓である光に包まれて主の姿は見えない。ルーリはゆっくりと光の中に入ろうとした。

その時、

「シロマ…来て頂戴……」

いまだ消えぬ光の中からマヤリィの声がする。

「只今参ります!」

素早く光をくぐり抜け、主の姿を見つけたシロマは言葉を失った。

「『再生魔法』を、頼むわ…」

「はっ!」

シロマはその場に立ったまま詠唱を始める。

『再生魔法』。それは高度な白魔術。

(ご主人様…なぜ…)

ルーリは自分の雷魔法によってマヤリィが大怪我を負ったことを悟る。

しかし、その後すぐに主は姿を現した。

「ルーリ、シロマ、ご苦労だったわ」

「ご主人様……!」

ルーリは今にも泣き出しそうな顔で主を呼ぶ。

「い、今…何が起こったのでございますか?」

とてつもない魔力を肌で感じて、今も震えが収まらない様子のランジュが訊ねる。

「『星の刻印』を消失させたのよ」

主が右手の甲を見せる。確かに、タトゥーのようだった星の刻印が消えている。

「『星の刻印』は天界の者が水晶球に仕込んだ、言わば時限爆弾のようなものだったのよ」

「時限爆弾、ですと…?」

ネクロは理解が追い付かない。

「これは推測ですが、ご主人様と『流転の國』及びミノリ達配下が顕現した後、すぐに天界の者が仕込んだと思われます」

ミノリが説明する。その手には一冊の本がある。

「どうやら、天使達はこの國に密偵を送り込んだだけではなく、最高権力者である私にダメージを与える為に、なんらかの手段を用いて水晶球を操作したみたいね」

マヤリィは右手を確認しながら言う。

「このことが判明したのは、ミノリが書庫でその本の解析を行ってくれたお陰なの。…改めて礼を言うわ。ミノリ、ありがとう」

あの魔力爆発の前からミノリがご主人様に報告したかった件とは、『星の刻印』の正体についてだった。

「ご主人様からそのようなお言葉を賜るとは…ミノリは幸せにございます!ミノリにとって最上の喜びとは、ご主人様のお役に立つことなのですから!!これからも、ご主人様の御為、あらゆる書物の解析をさせて頂きます!!」

ミノリは嬉しさのあまり頬を染める。

「やったぁ〜〜!!遂にご主人様のお役に立つことが出来たわ!!!ミノリはこれからもご主人様の側近として、書物の魔術師として、ご主人様に褒めて頂く為に……うふふっ♪」

ミノリは歓喜する。ほぼ独り言だが。

皆は聞かなかったことにした。

「あの…ご主人様、本当に御手は大丈夫なのでしょうか」

皆がミノリの独り言に気を取られている間に、ルーリが主の傍に寄って右手を確認する。

『星の刻印』は消失し、手も大丈夫そうだ。

「ルーリ、貴女の強力な魔術のお陰で救われたわ。心配かけてごめんなさいね」

「滅相もございません。私は…ご主人様に傷を負わせてしまったことが気がかりで…」

「貴女は私の命令を完璧にこなしてくれた。それに、シロマがいてくれたから」

マヤリィはそう言うと、今も心配そうな顔をしているシロマに、

「素晴らしい回復魔法だったわね。貴女がいてくれて助かったわ」

「勿体ないお言葉にございます。ご主人様のお役に立てましたこと、大変嬉しく思います」

シロマはそう言って頭を下げた。

その時、突然ネクロが言う。

「そういえば、ジェイ殿の姿が見えませんな」

今頃になって思い出されるジェイ。

皆、ルーリの凄まじい魔術に気を取られて、臨時会議の意味を忘れかけていた。

「ああ、彼なら、今回の計画において独断で行動し、ユキに重傷を負わせた罪で謹慎処分とした」

マヤリィは出来る限り威厳に満ちた声で話す。

「この城に地下牢はございましたかな」

ネクロが首を傾げる。

「放っておきなさい。私が毎日欠かさずに説教をしに行くことになっている」

マヤリィは出来る限り怖い顔を作って話す。

「さ、さようでございますか」

「やはり、ジェイには相応の罰が必要だと思っておりました」

皆はとりあえず納得してくれたらしい。

その空気を逃さず、主は宣言する。

「では、臨時会議はこれにて終了とする。皆、下がりなさい」

「はっ!」

こうして臨時会議は幕を閉じた。


「今、帰ったわ」

宣言通り、姫がジェイの部屋に現れる。

「お、お帰りなさい…!ご飯にしますか?お風呂にしますか?それとも……」

「決まっているでしょう。貴方を食べに来たのだから」

ドキドキしながら新婚ごっこの口上を述べていたジェイにキスをする。

「それとも…私が貴方に食べられるのかしら…」

そう耳許でささやいたかと思うと、姫は急に脱力する。

「ジェイ、ベッドまで連れてって頂戴。疲れたわ…」

「はい!」

ジェイは嬉しそうに返事をすると、姫を軽々と抱き上げ、そのままベッドへ直行した。

そこから先はお愉しみの時間。

「ジェイ…私、朝までここにいるわ…」

「はい。一晩中、離れませんよ」

こうして、恋人達の夜は更けていく。


その頃の天界。

「まさか『星の刻印』が消されるとは…」

天使の一人が刻印の消失に気付く。

「No.5には刻印の存在を知らせていませんでしたから、『流転の國』には、刻印について解析出来る者がいるということでしょう」

別の天使が言う。

「事実、あの國の主の魔力量は底が知れないしな。今だから言えるが、刻印が発動したところで、宙色の大魔術師にダメージを与えることは不可能だったかもしれない」

天使達の会話は重々しい雰囲気に満ちている。

「いずれにせよ、『流転の國』にこれ以上手を出すのはやめた方が良いだろう」

「ああ。賛成だ」

密かに刻印を仕込んだり密偵を送り込んだり、そういったことには長けているようだが、天使達の魔力はたかがしれている。

「No.5も殺されただろうし、あの國を探る計画は終わりにしよう」

天使達は誰一人として、No.5=ユキの身を案じてなどいなかった。


『星の刻印』の正体は時限爆弾でした。

それにしても、天使達はろくでもない奴らだな…。

この先、ユキは無事に魔術を習得しますのでご心配なく。


お読み下さり、ありがとうございます!

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