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厳しい野戦実習-9-

「エドウィン、信号弾赤白1発ずつ上がった。塹壕の第一層の端だな。どうやら、あそこに第2分隊が隠れているみたいだ。手旗信号ではなく、わざと信号弾で知らせたと言うことは急いで合流させたいということなんだろう」


 軽傷判定のリリーが周辺警戒、重傷判定のアイザックは主に信号手として第3分隊との通信を担当している。


 無人銃座はなかなか俺たちを逃がしてくれないためにジリジリとした後退を余儀なくされている。そのため、適宜第3分隊へ手旗信号を送って情勢を伝えているのである。その過程でアイザックが信号弾に気付いたのであった。


「リリー、どうだい、今なら塹壕第二層から抜け出して第一層の端の方まで行けそうかな?」


「そうですね、ここから、こう抜ければ・・・・・・なんとかいけると思います。斥候してきた際にはそのあたりには無人銃座はいませんでしたから」


「そうか。じゃあ、急いで第2分隊に合流しよう。アイザック、第3分隊に第2分隊と合流すると通信して欲しい」


「了解したぜ大将」


 親指を立てるとニカッと白い歯を見せてアイザックは応じる。


「リリー、先行してくれるかな?」


「承りました、アシュモア卿」


 リリーが先行し、手旗信号を送ったアイザックととも俺はリリーの後を追う。少し余裕が出来たことからアイザックが軽口を叩いてきた。


「なぁ、大将?」


「なんだい、アイザック」


「リリーって、お前さんの忠犬っぽくなってきたよな」


「ちゅ、忠犬って」


 思わず吹き出してしまった。リリーの頭をつけた白い犬が必死に尻尾を振っているそんな絵面が頭に浮かんでしまったのだ。


「いや、だってよ、他の級友たちより一番お前さんに懐いているし、他の女たちとじゃなく、俺たちと組んだのもお前さんと一緒にいたいからみたいに思えてきたんだよな」


「そうか? たまたまじゃないのか?」


「だってよ、俺が重傷判定になってから斥候に出掛けるリリーはどうみてもフリスビー投げたら追いかける子犬みたいでな」


 確かにアイザックの言う通りかも知れない。そんな感じがしないでもない。


「でも、彼女は前に”同年代の仲間たちと戦える機会がなかった”だから皆と交流して一緒に精進出来るのが楽しく嬉しいと言っていたよ。だから、今回の演習でもそうなんじゃないかな、仲間と一緒に何かをなすのが楽しくて、同時に新鮮なんだと思う。そして、その機会を大事にしたいと思っているんだよ」


「そうなのか、それは知らなかったな。まぁ、今はそれでもいいけどよ、ちゃんとリリーのことは見てやれよ。一番、あいつを理解してやっているのは今のところは、大将、お前さんだけなんだからな」


「わかっているよ。あんなまっすぐな女の子だからな、大事にしてやりたいと思っている」


「あぁ、そうかい」


 アイザックはそういうとぶつぶつと呟いていたが聞き取れなかった。


 そうこうしているうちに先行していたリリーが戻ってきた。


「リリー、どうした? 無人銃座にでも遭遇した?」


「第2分隊のすぐ近くまではいけたのですが、どうも無人銃座を一つ潰さないと辿り着けない感じで、第2分隊と共同で対処することになったのでお知らせするため戻ってきたのです」


「合図は?」


 アイザックが尋ねる。共同で攻撃するにも信号弾などいくらでも方法はあるが、先の信号弾のせいで恐らくは無人銃座が第2分隊付近に出張ってきたのだろうから、今度も信号弾でというわけにはいかない。


「実は第2分隊は手旗を掲げていて、場所はわかるのですが、門扉装甲板が邪魔をして通行出来ないのです。門扉は嵌め殺しになっているのですが、スリットがあって、そこで対話は出来たのです」


「それなら、そこで打ち合わせは出来るんだね」


「ええ、ですので、大まかな打ち合わせをしてきました。フェリクスの話では、恐らく別の場所に誘導出来れば戦闘を回避して通行出来るかも知れないとのことで、無人銃座をおびき寄せてから合流することを彼らは提案してきていました」


「なるほど」


 フェリクスの提案に乗れば、確かにこれ以上の被害を出さずに合流出来る可能性は高い。だが、残念ながら塹壕第二層についてはリリーが斥候に出ていた分しか把握が出来ていない。そして、その経路上に誘導するのは自滅するだけだ。


「今、フェリクスに手榴弾を時限爆発するように改造させるので、まずは門扉まで来て欲しいとウィンザービル卿はそう仰っていました。そこまでの安全は確保出来ていますので、参りましょう」


「ここは第2分隊に頼るしかないな」


 アイザックが頷く。俺も無言で頷くとリリーは再び俺たちを先導して門扉へと案内する。安全だとリリーは言ってはいた、しかし、それでも彼女は気を抜くことなく慎重に周囲を警戒しつつ進んでいく。


「やっぱりエドウィンの忠犬だな」


「とても頼もしい忠犬だな」


 アイザックと再び先の冗談を繰り返すが、今は笑えなかった。彼の表現がどうしても正しく見えてくるからだ。

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