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厳しい野戦実習-4-

 演習場東方の空白地帯を北に進む第1分隊の俺たち三人は、塹壕から死角になっている岩場に隠れ、塹壕突破の打ち合わせをしていた。岩場付近には樹木が立ち並び、通り抜けるのは容易ではなさそうだ。しかし、それがかえって塹壕の死角となり、突入経路に最適であったのだ。


「ここが死角になっている通り道か。でも、狭いな。リリー、アイザック、気をつけて進もう。リリーは兎も角、大柄のアイザックは苦労しそうだな」


「了解ですわ。あなたこそ気をつけて、アシュモア卿」


「俺は、大丈夫だ。この筋肉がいざとなれば火を噴くぜ」


 リリーは兎も角、アイザックの返事は冗談に聞こえない。この筋肉ダルマは普通に崖でもよじ登って突破しそうなだけに心配するだけ無駄だったかも知れない。


 俺たちは獣道よりも酷い実質崖っぷちの犬走りをなんとかすり抜けると塹壕の一角に飛び込んだ。リリーが通った後に俺が通過した際に風化していた部分が崩れてしまった時は焦ったが、アイザックはその崩れた場所を更に崩して歩きやすいように足場を作り出してしまったことには唖然とした。


――そんなのアリなのか?


 ひょっとしたら、アイザックを先頭に進ませて足場作らせたら良かったんじゃないかとそのときに本気で思った。


 とはいえ、そんなこんなで塹壕の一角に踏み込んだ俺たちは未知の存在が居る可能性を前提として慎重に塹壕内を探索していく。一塊ではなく、先頭を行くアイザックを支援出来る場所に俺が隠れ、後方を警戒するためにリリーが俺から少し離れた場所にいる。常にどこからでも襲われるという緊張感を持ちつつ監視哨に向かった。


 結果から言えば、この砦には未知の敵勢力は存在せず、時間を無駄に消費しただけであった。だが、収穫がなかったわけではなく、監視哨を確保したことで視界が確保され、情報不足であった演習場東部地区の地形が把握出来たのだ。


 砦の裏手に小川が流れ、そこに橋が架かっていた。これで小川を安全に渡ることが出来、中央地区への進軍ルートを確保出来たのである。また、これ以上の北上は実質無意味であることも同時把握出来たのだ。


 地図上では簡単に岩場に間道があり中央監視哨へとつながっていることが示されていたが、この間道は通常の軍装ではなく、山岳縦走でもやるような装備でないと通過するのは相当に困難であり、実質無謀の領域だと双眼鏡での観察によって判明したのである。


「ヴィクトリアたちはこの北の間道は通過していない。いや、出来ないから西の森か沼地を通過するしか方法がない。これで意識は例の橋と中央監視哨の塹壕群にだけ集中すれば良くなったと言えるだろう」


 俺は隣で同じように双眼鏡で周囲を観察しているリリーに判断を伝えるとリリーも頷いた。


「ええ、問題は第2分隊が橋を渡った後、どこに布陣しているかです。距離的には彼らの方が中央監視哨に最も近いはずですから待ち伏せの可能性があると思うべきですわね」


「おーい、様子はどうだ?」


 アイザックが下から声を掛けてくる。彼には万が一のために歩哨に立っていてもらったが、実際は手持ち無沙汰だったのだろう。


「降りたら説明する。動く前に腹ごしらえしておこうか」


「おう、そうか、じゃあ湯でも沸かしておく」


「頼んだ」


 返事代わりに親指を立ててアイザックが応じたのを見ていたリリーはふぅと息を吐いてから言った。


「降りたらお二人にコーヒーでも入れましょう」


「それは嬉しいね。級友の中じゃリリーのコーヒーはとびきり美味いから期待している」


「戦場ですからいつもみたくはならないですよ」


 恥ずかしそうに笑みを浮かべるリリーへ先に降りるように促してから、もう一度周囲を確認してから俺は監視哨を降りていった。

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