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僕がもう一度、きみの名前を呼んだら  作者: あびくらむげ
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第二章-1



「き...ろ...吉塚っ!」



ーバシッ。

何かで頭を叩かれ、ハッと目が覚める。



自分の目の前には先生がいて、先生の手には教科書が丸まっていた。

教科書で叩かれたんだと理解する。



きょうか、しょ?

せん、せい?


....おかしい。



ばっと勢いよく自分の今着ている服を確認する。

先程まで来ていた服とは全く違う服を着ていた。

今着ている服は――10年前に俺が来ていた制服だった。



うそ、だろ。

僕、本当に戻った?

いや、戻れた、のか?



〝きみ〟の席は、僕の席の斜め前だったはず。



ゆっくりと〝きみ〟が座っているであろう席に視線を向ける。



......あ、いた。

〝きみ〟がいる。



〝きみ〟は僕の視線に気付いたのか。



『バカ』



と、声は出さず、口の形だけで伝えてきた。



.....嬉しい。



口角は自然とあがるの自分でわかる。



「こら、聞いてるのか!」



先生にまた怒られ、すみませんとだけ謝った。



「放課後、職員室にくるように」



僕の謝り方が気に入らなかったのか、そう言われて、何事もなかったかのように授業を再開した。



ああ。

懐かしい。


そういえば、今日はいつなんだろうか。



黒板の文字を確認する。



黒板には〖10月5日(木)〗と書かれていた。

ちなみにカレンダーを確認すると、20××年と書かれていた。

ちゃんと高校2年生に戻れたみたいだ。



そうなると、〝きみ〟と知り合って2ヵ月ほど経っているのか。



10月だったら、遊馬の朱音と〝きみ〟と一緒に行動しているはず。



よかった。

これならまだ〝きみ〟を守ることができる。



彼女が亡くなったのは、11月5日。

丁度今から1ヶ月後。



今回は、〝きみ〟を死なせないようにしないと。

....今度こそ〝きみ〟を守るんだ。



それに、今回は〝きみ〟が亡くなる日を知っている。

だからその日は一緒に過ごせば大丈夫なはず...



....大丈夫。

10年前を思い出して行動すればいいだけ。



僕はぎゅっと自分の手を拳に握り、自分自身を落ち着かせる。



あとは....あれだな。

僕が10年後から来た人ってことを内緒にしなと。

仮にバレたとしても誰も信じなりだろうけど、いろいろ説明するのが面倒だからな。

高校生として振るわないと。



僕は、〝きみ〟を盗み見ながら、残りの時間の授業を受けた。







「….ろ….だ…」



ん、

もう少し、寝かせてほしい…



「起きろっ!」



はっきりと聞こえた声と同時に、僕の頭がジンジンと痛み出す。



「い…てえ…」



ジンジンする痛みから頭を何かで叩かれたのだと理解する。



「何するんだよ、遊馬」



叩いたのは僕の目の前にいる遊馬で間違いないだろう。

だって、手に丸まったノートが持たれていたから。

さっきも、叩かれたんだよな… なんて思う。



「もう、放課後だぞ?」



「は!?」



教室を見渡すと、何人かしかいないクラスメイトたち。



そんなに寝てたっけ?

いつもなら寝ないはずなんだけど…いや、でも僕は今高校生に戻っているわけで、成長期で眠たくなるのは当然なわけで…

と色々考えていたら。



「お前、何ひとりで百面相してんだよ?」



パンッとデコピンを遊馬からくらう。



「いってえ…」



おでこがヒリヒリとする。



「いうほど強くやってないだろ」



ゲラゲラ笑う遊馬に、僕にとっては違うんだよなって言ってやりたかったけど、それを口にすると後々面倒になるのが目に見えたので言うのを止めた。



「樹、今日、図書室の仕事があるんじゃないの?」



最後に、行かなくていいの?と聞いてきた朱音。



図書室の仕事?

なんだ、それ?

そんなものあったっけ?



「なんのこと?」



僕のその言葉に大きく目を開けた二人。



「お前、大丈夫か?」

「どこか頭でも打った?」



二人で僕の頭をあちらこちらと触り、確認をする。



….いやいや。

僕が二人を確認したいくらいだ。



僕が送ってきた高校時代では、図書室の仕事は夏休み限定だったはず。

僕が忘れているだけ、か?

それとも、過去が変わっている…?


いや、そんなはずない。

過去が変わっているなんて信じ難い話だ。

もし過去が変わっているのなら、僕の過ごしていた高校時代はなんだって話になる。



きっと僕が、忘れているだけ、か。



僕は二人に怪しまれないように「悪い、寝ぼけてた。図書室に行ってくる」と言って、図書室に向かった。




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