知ってます?神社って幾つか作法があることを。
傾斜するって曲が好きなんですけど、この曲って乃木坂46名義なんですけど、元AKB48小嶋陽菜がメインボーカルなんですよね。
「着いたよ…ここが俺たちの乃木坂駅なのだな。」
「あぁ。だが、一つ間違えているのが俺たちのではなくみんなの乃木坂駅だがな。」
『乃木坂駅』
東京都港区南青山一丁目にある東京地下鉄[メトロ]千代田線の一駅。駅番号はC 05。駅名の由来は赤坂八・九丁目に存在する東京都道416号戦の「乃木坂」からである。
乃木坂46のファンには特別な場所である。
グループ名もそうだがここは乃木坂46の1stアルバム「透明な色」のジャケット写真の撮影に使われた場所である。
この1stアルバムは、1stシングルから10thシングルの表題曲全て+新曲のDISK1とファン投票で選ばれたカップリング曲TOP10+新曲のベストアルバムのような内容。また、アルバム名「透明な色」はメンバーの投票で決定している。
当時のファンの方々とメンバーで作り上げた乃木坂46を語る上でも避けて通る事はできない最重要アルバムである。
発駅構内では乃木坂46のパネル展も行われたりもし、まさに乃木坂46の聖地である。
電車を降り、ホームにある柱に目をやると乃木坂駅の文字が入ってきた。
電車が去った後も2人は柱の文字を見つめその場にいた。
「乃木坂だな。」
「あぁ、間違いなく乃木坂だ。」
2人は冷静な会話をしたが、顔は浮かれた気持ちの抑えつけ方を間違ってニヒリな笑い方をしていた。
それもそのはずである。このホームこそが1stアルバムのジャケットになった場所なのだ。
ホームの1番線も2番線も改札もジャケットに使われていて、歩いてるだけでテンションが上がる。
電車降りて一歩でロケ地に辿り着くなんて日本でも乃木坂ぐらじゃなかろうかと思う。ファン歓喜スポットである。
「ここにまいやん[白石麻衣]達が立っていたのだなっは。」
「いや、待て待て。こっちにはなぁちゃん[西野七瀬]達が立っていたんじゃぞよ。」
もはや興奮して語尾がおかしい。
はしゃぎたいのは山々だが、ここは公共の場故にこれから会社に行く人もいるんだ。はしゃぐ訳にもいかない。
そこはぐっとこらえ改札に向かう。
改札に向かったら向かったで興奮させようと乃木坂駅が誘う。
「この場所ってよ、いくちゃん[生田絵梨花]達が立ってたとこでねぇべや。」
「んだんだ。ここでずんらーっとみんなで並んで写真さ撮ってたんだべな。」
押し殺していた感情が一周して田舎者である本来の姿が顔を表し始めてしまった。
「いんやだよぉ、もうどこさ行ってもドッキンドキしっちまうわ。こごは心臓に触るとこばっかだぁ。」
「萩原さん、我慢だ我慢。もうちっと言ったら地上さ出っからそれまで我慢してくんねぇと。」
「遠藤さんがそこまで言うんだがら、わしも我慢すっからよ。でも、はやくこごから出ねぇとわし溢れっちまうかんね。」
田舎者達は乃木坂駅の誘いをなんとかその場を乗り切り、当初のニヒリな顔に戻り、その顔のまま2人は地上へ向かって行った。
改札を出て1番出口を出るとおまちかねの場所に出る。
2個目の聖地、乃木神社である。
『乃木神社』
東京メトロ「乃木坂駅」1番出口より徒歩15m。東京都港区赤坂にある明治期の乃木希典命とその妻、静子命を祀った緑豊かな神社である。
隣地には乃木夫婦の邸宅であった旧乃木邸がある。
前述の透明な色に封入されたフォトブックの撮影場所でもある。メンバーによって撮影場所が違う為、境内でお気に入りのメンバーが撮影した場所を探し撮影をするのがファンのしきたりである。またメンバーの成人式を挙げる場所でもあり、こちらも紛れもなく聖地である。
当然ながら一般の方はもちろん、ジャニーズ事務所も近いのでジャニーズのファンの方も参拝されるので乃木坂ファンとしてご迷惑をかけぬよう撮影を心掛けなければならない。
駅を出て徒歩数歩で入口の鳥居に到着する。
早る気持ちを抑え、鳥居前で一緒に一礼する。その後かーくんがそのまま鳥居をくぐろうとしたので止めた。
「待てぃ。言いたい事が2つある。1つ目は、鳥居前はフォトブックに載っていた場所故に撮影を忘れておる。2つ目は、鳥居の正しいくぐり方が出来てない。」
「ほほぅ。詳しく聞こうではないか。1つ目は問題無い。もう1つのはどうゆう意味かね?」
たまたま深夜番組にて正しい鳥居のくぐり方を知っていたのでかーくんに伝える。
「鳥居の真ん中は神様が通る道で、そこを通るのが失礼にあたる。ちなみに正中と言うらしい。なので、我々は右か左に寄って歩かなきゃならん。その際、右側を歩くときは右足からで左側を歩く時は左足で歩くのだ。江原啓之さんが言っていたから間違いはない。」
「おぉ。江原さんが言っていたなら信用しよう。では早速。」
鳥居の前で伊藤万理華さんのポーズをしてかーくんに写真を撮ってもらい、正しい鳥居のくぐり方をして境内へ入る。
境内に入って気づいたが、敷地のあらゆる場所がフォトブックの撮影に使われていた。
はしゃがないようにするで必死だった。
ここ、〇〇がいたとこだよね!ここは〇〇がこうやってポーズしてた!うわぁ、ここもフォトブックのとこじゃん!そんなとこよく見つけたね!この感じだとたぶんここそうじゃないかな?そんな会話で盛り上がる。
うむ、はっきり言おう。はしゃいでいた。
だが言い訳をさせてほしい。宝探しをしているようで本当に楽しいのだ。
手がかりはフォトブックのみ。このフォトブックを頼りにメンバーがいた場所を探す。背景がぼやけたものもあるので難解なものもある。そこをなんとか風景と照らし合わせ見つけ出す。難しいところほど見つけた時の達成感がある。
発見すると、どちらかがメンバーと同じポーズを全力でする。そして、もう1人がもうちょっと右かななどと指示をして全力でカメラマンをする。
メンバー役は順番で行ったが、譲れない場所も存在する。それが推しの場所だ。
かーくんは生駒ちゃんがいた神社横のモデルを。僕は深川麻衣さんがいた勝守の看板前でモデルを務めた。
だいたいの撮影が終わると参拝をしようとなったので手水舎で手を水で流していた時だった。
「おっと、ようちゃん手水の作法って知ってるかい?」
「いや、知らん。初めて聞いた。」
参拝前に水で流すのは知っていたが、作法があることは知らなかった。
もしかしたら子供の頃聞いていたのかも知れないが記憶にない。
「手水の作法ってのがあるんだよ。おじさんが教えてあげようじゃないか。1、まずは手水舎に礼をする。2、右手で柄杓を持って水をすくって左手に水をかける。3、柄杓を左手に持ち替えて右手に水をかける。4、また右手に持ち替えて左手に水を受ける。5、その水で口をすすぐ。飲まないでね。6、最後は次の人の為に残った水で柄杓の持ち手部分を水で流したら完了。どう?簡単でしょ?」
「なるほど。そうやって参拝前に清めるのか。」
慣れない手つきで言われた通りに行う。水が冷たくて気持ちが良かった。
手水舎を抜けると鳥居がもう一つあったので正しい作法でくぐる。
鳥居付近に沢山の絵馬がかけられている場所があったので拝見してみた。
よく見ると乃木坂ファンで溢れている。絵馬にはメンバーの幸せを願っていたり、どうにかこうにかメンバーと会えることを願うものもある。
なかにはこんな強者もいる。
「単位すべてが取れますように。あと、エロい女が近寄ってきますように。乃木がんば。」
もはや乃木坂はおまけになっている。ここまで自分の欲望を書きながら乃木坂を応援している事も書くとは…。
ここの絵馬のすごいところが乃木坂46のメンバー本人が書いたものや、ジャニーズのタレントさん本人が書いたであろう絵馬も一般の方の絵馬に紛れている。
その絵馬が立ち並ぶ中でエロい女が近寄ってくることを願える者もいる…その勇気が恐ろしい、そして羨ましい。
もしかしたら大物になるのではなかろうかと錯覚させる。この絵馬を書いた本人に一度会って話を聞いてみたいものだ。
絵馬をあとにし、拝殿にて二礼二拍手一礼にて参拝。
その後、授与所にてお守りを一体受けた。選んだのは勿論、勝守だ。それと御朱印帳と福繭みくじを購入。
福繭みくじとは、小さな瓢箪のような形をした繭の中におみくじが入った珍しいおみくじである。
是非、近くに寄った際は引いてほしいおすすめおみくじだ。
ちなみに中吉で、かーくんは大吉であった。
「俺、おみくじ引くと大体大吉なんだよね。」
神をも味方にするこの男は一体何者なのだろうか。
だが、のちにこの男が本当に強運の持ち主だった事に驚かされる事になる。それはまた別のお話で。
一通り乃木神社を堪能した我々は向かいにあるグループの由来となった坂「乃木坂」に向かう。
乃木坂46メンバーが幾度となく登った坂。
この乃木坂を登った先にはSME乃木坂ビル[現在はジャニーズ事務所]がある。
男たちは襟を正し、背筋を伸ばし歩き出す。
なぜならここは乃木坂46を産んだ場所だからだ。
こんな逸話がある。
元々AKB48はSONYからデビューをした。だが、思ったほどの業績があがらずそのままキングレコードに移籍した。
移籍してから人気に火が着き、国民的なアイドルになった。
そうなると悔しいのがSONY。
SONYはその悔しさのあまりAKB48がSONY在籍時のミュージックビデオ集のタイトルに思いを込めた。
『逃した魚たち』
その後、秋元康先生にもう一度アイドルグループを作るチャンスを頂き出来たのがAKB48公式ライバル乃木坂46だったとのことだ。
色々あったとは思うが、我々にとって感謝しかない。
乃木坂を一歩一歩噛み締めるように歩く。
SME乃木坂ビルを見上げる。
ここから乃木坂46の企画やCDが生まれてる。
乃木坂46だけではない。ここからアジカンやamazarashiもCDを出している。
男達はビル前ではしゃぐのは大人としてやってはいけないと思い、気持ちを抑え込みただただニヒリな顔でビルを見つめ続けその傾斜を登っていった。
坂を登りきり、一度振り返りSME乃木坂ビルを見つめる。
東京の空は晴れていた。微かに秋が溢れようとしていたがまだ残暑が残るその日。
季節外れのニット帽を被った男達がこぼした言葉。
「ありがとう。」
そう男たちは言い残し、SME乃木坂ビルを後にした。
颯爽と歩く男たちに変化があった。
男たちの腹部から音が鳴った。
男たちはお腹が空いていた。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
次回、ご飯食べてあの場所へ。