表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/32

東京メトロの格式

ようやく物語っぽくなってきました。

2人の関係性と会話を楽しんで頂けたらと幸いです。




食事を終え、かーくんの家に着いた。

まずは駐車場に車を停め我が家まで歩く。

お互いの家は近所で歩いて10分程度のところにある。

特別な理由はなかったが、いつのまにか2人で飲む時は我が家が決まりになっていた。


「ちょっと遠回りしていこうよ。」と、どちらかが言ってコンビニでお酒を買い、飲みながら川沿いを歩いた。

夜風が気持ちよく潮の匂いがほのかに香っていた。

明日の事を考えると楽しみで仕方がない。

心地よく酔えているせいか、つい表情が緩んでしまう。

ふと隣を見ると月に向かってグイッとお酒を飲んだかーくんがニヤニヤしていた。


はたから見たらさぞ不気味だっただろう。

見知らぬ30代の男性2人が闇夜の川沿いをお酒の缶を持ちながら街灯に照らされ10代と20代の女の子のグループの事を考えながらニヤニヤして歩いているのだから。不気味極まりない。

その光景とは反して我々の心はとても晴れやかだったのは言うまでもない。


そうこうしているうちに我が家に着いた。

コンビニで買ったお酒は既に飲み終えている。

外から帰ってきたのでまずは手洗いうがいをして早速会議の準備をする。

グラスに氷をいれ、角ウイスキーを入れようとするとかーくんが止めにかかった。

「すとっーぷ!今日、俺ストレートで!」

これはこれはだ。

かーくんは機嫌がいい時や楽しい事があると強いお酒を欲するようになる。

この行為をしたとゆうことは飲んでる相手に警戒心を解き、今とても楽しんでますよ、嬉しいですよの合図である。

犬でいうところの嬉ションのようなものだ。

「遠藤さん、だいぶテンションあがっとりますなぁ。」

そう言って別のグラスをかーくん用に準備して角ウイスキーを注ぐ。


昔、周りの楽しいと自分の楽しいには距離があった。

子供の頃から変わっているものに興味が向いていた。

みんなが興味を持つものへは疎かった。

みんなが好きなモノはあまり理解できなくて、自分の好きなモノは説明してもあまり理解されなかった。

中には無理に理解しようとしてくれた人もいたが、理解してもらえる喜びより無理に理解させてしまって申し訳ない気持ちや本質のずれで共有できない辛さが先行した。

最初から理解されないのは案外平気だったが、ある時何かをきっかけに興味を向けてくれた人に自分の好きなもの良さを説明して理解されなかった事があった。

それがこたえて次第に好きである事を隠したり、人に伝えるのを遠慮するようになった。

こうした経験もあり、誰かが自分の好きなモノを自分以上に楽しそうにしてくれることが単純に嬉しい。

好きなものに遠慮する必要はない。そんな環境や価値観を作ってくれたのは紛れもなくかーくんだった。

人生で何人会えるかわからない貴重な縁だと思う。


そんな事を考えながら自分の分の角ハイボールを用意して乾杯の準備をする。

出来上がったお酒を確認し、かーくんが乾杯の音頭をとる。

「準備はいいですか?それではご唱和ください。」

互いのグラスを高らかに揚げ、2人で巻き舌で叫ぶ。

「オールハイールブリターニアー!」

これが僕らの乾杯のスタイルだ。ブリタニア帝国万歳。

こうして明日に向けての会議が始まった。


「さてさて、明日どうするかね?そもそも乃木坂ってどうやって行くのよ。」

ストレートの角ウイスキーをグイッと飲み一息おいてかーくんが尋ねる。

「えーっと。今調べるわ。」

スマホのナビタイムで乃木坂駅までの電車を調べる。

「東京方面に向かって途中メトロっすね。俺ら東京メトロに乗るらしいですぞ。」



『東京メトロ』

正式名称は東京地下鉄株式会社。帝都高速度交通営団の民営化により2004年に発足した特殊会社であり、日本の大手私鉄の一つ。東京の中心街のJRでは行ききれない細かいところを走るとても便利な私鉄である。

副都心線を合わせた合計9路線を運営しており、その路線それぞれにロゴや色分けされており、とてもユニークかつオシャレな鉄道である。愛称はメトロ。ちなみに乃木坂駅は緑色の千代田線である。

郊外に住む我々にはなかなか無縁の鉄道である。



東京メトロ…どこを通っているのか、どこに続いているのか検討もつかない。そもそも東京メトロが通るようなオシャレ街に降りる予定が入らない。

田舎者の完全な偏見だが、メトロを使いこなしてこそTHE東京人だと思っていた為勝手に格式の高いものだと感じていた。


そんなメトロに明日乗る。あの都会のオシャレさん達が乗る鉄道に乗ってしまう。

しみじみ物思いにふけていると、静かにかーくんが口を開いた。

「俺らも東京メトロデビューですか…俺達も随分東京に染まっちまったなぁ。明日は東京人らしい格好してかなきゃならねぇなぁ。」

そう呟き、かーくんは右手に持っていたグラスに残った角ウイスキーを一気に飲み干し、目をキリとさせいい顔になった。

こんなに恥ずかしい台詞を恥ずかしげもなく言い、わかりやすく格好つけるなんてなんて格好いいんだ。

言っている事が田舎者丸出しの台詞だった。さすがかーくんだ。

この男のポテンシャルは底しれないと改めて思わされる。


その後もネットで乃木坂周辺を調べた。その結果、ジャーニーズ事務所や東京ミッドタウンが近くにある事がわかった。少し歩くと赤坂があり、その反対方向を歩くと六本木がある事もわかった。

どれもこれもテレビで見るような場所で各々が乃木坂から近い。名のある地区が近い事を知る度に2人は歓喜していた。

ここまで色んなものが近いとなると乃木坂以外にも行きたくなる。問題はどれも魅力的で選びきれない。

だが、時間は限られている。


「うーん。マジで悩むな。とりあえず乃木坂に来た際にメンバーが立ち寄るってゆうラーメン屋さんがあるみたいだからそこは寄りたいかな。かーくんは?」

「そうだなぁ。ようちゃん都市伝説好きじゃん?あのへんなんか無いの?」


突然かーくんが変化球な質問をしてきた。持っていたグラスの氷をカラカラ回しながら考えて返答した。

「そうだなぁ。あぁ、1個思い出したわ。六本木の6−6に六本木ヒルズオーナーの森さんの所有してるビルがあるって聞いた事あるわ。ピラミデビルっていうらしんだけどね。」

「なにそれ?めっちゃ面白いじゃん。よくそんなん知ってたね。」

「6本木の6の6って悪魔の数字の666じゃん?やけに6絡んでんなぁっていうのとトドメのピラミッドみたいな名前だったから覚えてた。」

「いいね。そしたら乃木坂とそのピラミデビル予定で!気が変わったら予定変更すればいいしね!」

「OK。じゃあ、今日はそろそろ解散しますか。」

「あいよ。まずは明日お互い夜勤頑張りましょう!それじゃ、おやすみー。」


そう言い残してかーくんは家路についた。

いい酒だった。予定があるってのは素晴らしい。楽しみがあるなんて久しぶりで、遠足前のようで今日寝れるかが心配だ。その日はソワソワして眠りが浅かった。


だが、この数時間後予定を変更することとなる。

行く場所も決めたはずだったのだが、夜勤の休憩中に乃木坂周辺を調べていると妙な住所の場所を見つけてしまった。

急いでかーくんに報告したところ気に入り、急遽予定を変更しピラミデビルからその場所に向かうこととなる。




最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回、初めての東京メトロ。千代田線でのあの男の行動。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ