とゆうか、リアルに乃木坂ってどこ?
乃木坂とハンバーグが好きな男達の会話の回です。
びっくりドンキーでレギュラーバーグデッシュにヨーデルを頼み、食を満喫していた。
かーくんはびっくりエビフライ&ハンバーグにご飯大盛りにびっくりコーラを飲んでいる。
バスケ後もあって山賊のような豪快な食べっぷりを見せていた。
「めっちゃ食うな。」
「仕事してバスケしてですからね。お腹減ってたんだぁ。」
「いや、いいこといいこと。んでさ、乃木どこ観てたんだけどさ…」
「おぉ、いつものことね!」
すかさずかーくんの合いの手が入る。
「結局、乃木坂ってどこ?」
少しの沈黙が起き、左手にフォークを持ったきょとんとしたかーくんが尋ねる。
「…え?…場所?」
「そう、場所。」
「え…知らない。」
お互い地方出身だが関東に住んで10年以上になる。もちろん東京には何度も遊びに行った。
渋谷、原宿、新宿は勿論、浅草やお台場のような観光地でも遊んだ事がある。
だが、それだけだ。そこぐらいしか知らない。
しかも遊んだといっても東京に憧れて来たはいいものの、何をしていいのかわからずちょろっと食べ歩きして有名な場所に行って満足したぐらいだ。なんなら人混みの多さと個性の強い人達に圧倒され予定よりも早めに帰ってきた事もある。
なのにも関わらず地元の友達には東京を知っているような口ぶりで自慢した事がある…。
たまたま友達の家でみんなでテレビを見ていたら竹下通りが映り、この先にクレープ屋あるよと言ったらたまたまその店が紹介された。
するとみんなが「マジで!?洋介、東京めちゃくちゃ詳しいじゃん!しかも東京のうまい店知ってんじゃん!すげぇ!」とキラキラした目で僕を見てきた。
あまりにももてはやすものだから調子に乗って
「竹下通りの近くにはavexがあって、もう少し行くと東急プラザってゆう鏡づくしの門構えのビルがあるんだよ。こうゆうのって行かないとわからないからねぇ。」
などと口走ってしまったのだ。
実際はクレープを買おうとしたがあまりの人の流れに抗う事が出来ず、そのまま流されて迷子になり、前の人についていったらたまたま東急プラザに着き、鏡づくしの門構えをみて「なんかトンボになった気持ちだ。」などと呟き、その鏡に映る人達に人酔いし、道端で休憩していただけだった。
avexに関しては別のテレビで紹介したのをたまたま見て、その情報を横流ししただけであった。
あの時はみんなごめんなさい。
僕は今でも東京をそんなに知りません。
そして、これが乃木坂にも当てはまる。
真夏の全国ツアーの初日の公演終了後、家に帰る為信濃町駅まで歩いていた。歩いている間もその日の公演の衝撃を何度も回想していた。
あまりにも感動したので、その感動を誰かに伝えたかった。それに色んな感情が入り混じって気持ちの処理の仕方が自分でもわからず、誰かに聞いてもらいたかった。
そうなると自ずとかーくんが思い浮かぶ。
なので思い立って即電話した。
電話越しでかーくんにはいかに乃木坂46のライブが素晴らしいかや、とてつもなく衝撃だったがあの場所にあった事や、あの景色をもう一度見たいこと、そしてあの感動をかーくんにも体験して欲しいことを伝えた。
追撃で「花火も観れるから一夏の思い出になるよ。」
と、誘い水も含ませ誘った。
かーくんはその日夜勤明けで次の日休みだったのを知っていたので参戦するだろうと踏んでいた。
案の定快諾してくれたので帰りの電車の中でSNSでチケットの譲渡スレッドでチケットを手配し、無事に翌日の千秋楽を共に参加した。そして、かーくんをどっぷり乃木坂漬けにすることに成功した。
あの日以降の日常は、かーくんと共に酒を飲みながらテレビでは乃木坂工事中を、youtubeでは乃木坂ってどこを観覧して乃木坂を勉強した。
最初は一部のメンバーしか顔と名前が一致しなかったが、毎日番組を目にする事で自然とメンバー全員の顔と名前を言えるようになり、次第に自分達の推しメンが増えていった。
まだまだ古参ファンの方々には及ばないものの、乃木坂をあまり知らない方に対して魅力やエピソードを伝えられるまでになっていた。まさにそこが穴だった。
東京と一緒でメジャーどこを知っただけで知った気になっていた。そもそも原点となっている場所に行ったこともなければ調べもしていなかった。
よし!バスケしよう!となり、ユニフォームと場所を準備したのに試合直前に球がない事に気がついたような気分だった。
迂闊だった。
「どうするよ?俺らこんなに乃木坂のこと語ってるのに乃木坂の原点に行ったことないなんてファンとしていかがなもんかね?遠藤氏?」
「確かにようちゃんの言う通りかもしれんな。地方に住んでいたり、事情があって行けないのはわかる。しかし、俺らはどうだろう?住んでいる場所から都内は快速乗れば乗り換え無しで行ける。日帰りも余裕で出来る。なのに行っていない。行かない理由が全くない。むしろ行ってみたい。」
「行きたくてもすぐ行けない人達が世の中には沢山いるはずだよ。この恵まれた環境下で行かないのは行きたくても行けないファンの方々に申し訳ないぞ。何より真のファンになる為にも乃木坂に行くべきだと思う。これは提案だが、夜勤明けで向かってはみないかね?」
「もしやそれは、噂の聖地巡礼ってやつかね萩原氏?」
「そうだよ遠藤氏。行かない手はないでござるよ。」
「乃木坂といえば、駅自体が1stアルバムの撮影場所で既に聖地。もう一つ外せないのは駅を出てすぐの乃木神社よ。1stアルバムの撮影場所であり、メンバーが成人式を行う場所。まさに聖地よ。」
「なんだろう。すげぇワクワクしてきたぞ。今ならドラゴンボールの悟空の気持ちがわかる気がするぞ。」
「じゃあ、行ってみますか!?乃木坂聖地巡礼!」
「おう!決まりだな!」
今でも覚えてる。
あの時の何気無い会話から徐々に身体の内から何かが込み上がってくるような感覚。
何か凄いことがこれから起きるんじゃないかと予感する感覚。
大人になって忘れていた新しいものに出会えるんじゃないかと思う感覚。
憧れや好きなものを知るのってこんなにワクワクするんだっけか。忘れていた。
平たくいえばただの観光地巡りなのだが、その時すごく興奮したのを今でも覚えている。
「こうしちゃいられん。ようちゃん家で酒飲みながら明日の作戦会議しようぜ。まずはご飯食べちゃおう。」
「承知した!それにしても相変わらずびっくりドンキーのハンバーグうまいな。」
びっくりドンキーのボックス席で男2人がニコニコしながらハンバーグをリスのようにパンパンに頬張っていた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回、聖地巡礼が決定。計画を練っていきます。