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命を狙われてばかりの王子と田舎の村娘の危険な恋 ~けっこう命がけの恋の行方~  作者: 星河語
第15章

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王太子の来村 2

 その日、夕方になる前にフォーリとジリナがやってきた。きっと、王太子に会う件だとセリナは直感した。

「セリナ。午前中に若様が言われていたことだが、どんなに若様がお前に頼んでも、決して殿下に会ってはならない。」

「はい。そうだろうと思っていました。わたしもその方が安心ですし。殿下の前で何か粗相しないかと心配なんです。」

 セリナの答えにフォーリは(うなず)いた。

「やっぱりそこまで馬鹿じゃなかったね。」

 ジリナも隣で頷く。

「一応、殿下の事を伝えておくが、殿下は若様にとっては、とても優しい従兄でいらっしゃる。若様をお助けするためだけに、王太子になられた方だ。

 お一人で若様をお助けするための計画を立て、できる限りの準備もされていた。わずか、十三歳になるかならないかの頃からだ。若様の救出が速やかにできたのは、ひとえに殿下の計画と綿密な準備があったからにほかならない。あの時、お助けできなければ、間に合わなかっただろう。言っている意味が分かるか?」

 セリナは首を(かし)げつつも頷いた。

「王太子殿下がとても賢い上に、実行力とご両親に刃向かうことのできる心の強さがおありなんだとは、分かります。」

 フォーリは頷いた。

「やはり、お前の頭は悪くない。それだけの器の方だ。つまり、王としての才と器量をお持ちだ。若くとも政治を行う能力に長けておられる。この間、若様のことを見て、分かっただろう。ベブフフの使者のことだ。」

 セリナは頷いた。

「殿下はそれ以上だ。若様よりその能力に長けておられる。もし、お前が若様を危うくさせる…つまり、お前の存在が若様を危険にさらすとお考えになれば、殿下は容赦なくお前を殺す。だから、決してお会いしてはならない。」

「ご心配なく。わたしも若様には優しくても、わたしには優しい方なのかどうか、分からないと思っていましたから。」

「だから、わたしは当日、この子を休みにして家にいさせようと思っていますが、どうしますか?」

 ジリナの質問にフォーリは首を振った。

「先ほど、若様が護衛兵達を使い、あなた達の家はどこか、村娘達から聞き出させていました。」

「…随分手回しのよいことで。その様子じゃ仕事場にも来るかもしれないし。」

 結局、セリナは休みになり、若様から逃げているように命じられた。

「ああ、それと。」

 フォーリは行きかけて、ジリナとセリナの親子を振り返った。

「二人には話しておこう。おそらく、一月後に若様はこの村を立たれる。」

「それは、つまり…。」

 分かった様子のジリナにフォーリは頷いた。セリナも遅れて勘づいた。

「一月後、殿下がここに来られる。あまり、長くはご滞在されないだろう。他の地域への行幸も兼ねておられるからだ。そして、殿下は若様を一緒に連れて行かれるだろう。」

 セリナは胸を突かれた。こんなにも突然、別れがやってくるとは思っていなかった。いつかは必ずやってくると分かっていても。それでも、早いと思う。

「殿下には先日の事件をご報告しないわけにはいかない。お伝えすれば必ず、若様を案じられる。」

 セリナは声も出せなかった。だから、余計にフォーリは若様がどんなに言っても、王太子殿下に会ってはならないと言っているのだ。セリナが焼いたパンに毒が付けられていた。王太子殿下はきっと、セリナを危険人物だと判断するだろう。

「セリナ、あんた分かったね?」

 ジリナの声にセリナは顔を上げた。勝手に涙が流れそうだ。胸がきゅっと締め付けられるような、切ない痛みだ。

「…分かってる…ます。」

「セリナ、大丈夫じゃないね。だけど、しっかりしなさい。仕事の手を抜くんじゃないよ。」

「分かってるけど、悲しいもん。」

 とうとうセリナは言った。フォーリがまだいるが、口は止まらなかった。

「お別れがあるのは分かってたけど、なんか急に目の前に迫って来ちゃって、悲しいんだもん、しょうがないじゃない。だけど…王太子様がまっとうな人で良かった。わたしだって、ロナとは喧嘩(けんか)ばかりだけど、危ない目にあったって聞いたら、そんなところに置いておかないもん。だから…若様にはそれがいいんだと思う。」

 セリナは勝手に退室した。涙が出てきて止まらない。泣きたくないのに、若様とお別れすると思うと、勝手に流れてきてしまう。

 フォーリもジリナもセリナを引き留めなかった。

「まったく、あの子は。すみませんね、後できちんと叱っておきます。」

「いや、構わない。それより、あなたには世話になった。おそらく、礼を言う(ひま)がないだろうから、今、伝えておく。」

「いいえ、こちらこそ、いろいろと不手際があったのに、穏便に済ませて頂いて感謝しています。」

 ジリナは挨拶をして部屋を出ようとしたが、振り返った。フォーリは黙ってジリナを見ている。

「ところで…事件の犯人の目星はついたのかい?」

 口調がくだけているので、屋敷で働いているジリナではなく、村人のジリナの立場で話しているということだ。

「……。」

 フォーリが黙っているとジリナはふっと力を抜いたように微かに笑った。

「遠慮なんていらないよ。遠慮なんてしてたら、あんたでも危ないかもしれないよ。」

 ジリナはそれだけ言って立ち去った。

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