再開できる喜び 3
ベリー医師が若様とセリナの様子を見に行くと、フォーリとシャルブが部屋の前でうろついているのを見つけた。
ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。
意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。
転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)
ベリー医師はセリナと話した後、きっとセリナは若様の所に行ったに違いないと思い、様子を見に行くことにした。たぶん、セリナには若様が感染させられた病はうつらないだろうと思ったので、セリナに釘を刺さなかった。
若様が療養中の部屋の前にやってくると、フォーリとシャルブが部屋の前で何か、苦悩しながら葛藤している。カートン家の見張りのニピ族二人は、黙って様子を見守っている。フォーリとシャルブは、扉に手をかけて開けるか開けないか、考え込んでいる様子だ。
ベリー医師はカートン家のニピ族二人を呼んだ。
「あの二人、どうしたんだ?てっきり、セリナがやってきたんだと思ったんだが。」
一人が困ったように説明した。セリナがやってきて子供を身ごもったと、きちんと若様に説明すべきだと言い、納得した二人だったが、二人っきりにして欲しいと言われ、仕方なくそうした。しかし、あんまりにも静かであるため、様子を見に行くべきかどうかで悩んでいるという。
「……ああ、なるほど。」
ベリー医師は話が分かって納得した。様子を見に行って、若様にいいところだったのにと叱られるのが嫌なので、見に行けないでいるのだ。いつもならいいが、若様の精神状態はいつもより過敏になっている。
ベリー医師は二人に近づいた。
「何やってるんだ、二人とも。」
「……ベリー先生。」
「……。」
二人は物凄く決まり悪そうに振り返った。目を合わせようとしない。ニピ族の“習性”をよく分かっているので、それ以上は何も言わなかった。
ベリー医師は扉を軽く叩き、何も返事がなかったので中に入った。決まり悪そうな二人も付いてきた。奥の寝室にまっすぐ進む。すると、寝台の上で二人が抱き合ったまま眠っていた。
「…これじゃあ、返事がないわけだ。」
ベリー医師が二人を振り返ると、兄弟は揃って涙を堪えて拭いていた。そうだ、若様は久しぶりに悪夢をみていない。薬も飲まずに眠っている。
ベリー医師はそっと若様の額に手を当てた。熱はない。脈も安定している。セリナも同じように診察した。それが終わるとフォーリは静かに二人に布団をかけた。シャルブは部屋の窓を閉めて回り、小さく明かりをつける。
三人は静かに寝室を出た。フォーリとシャルブは嬉しそうに寝室に繋がる、手前の部屋の椅子にそれぞれ座った。
ニピ族の性格はよく分かっている。犬と表現する人もいるが、ベリー医師は猫だと思う。猫は自分で家に居着く。飼い主を選んでいるのだ。そして、心配性で義理堅い。飼い主がいなければ餌だって食べないことがある。
それとそっくりだ。二人は若様が起きるまでずっと待っているつもりだ。こっちが何もしてやらなければ、きっと、若様が起きるまで何も食べないだろう。若様が食べる物は、カートン家が用意すると分かっているから何もしないでいるが、そうでなければ、自分達で若様が召し上がるものを用意する。そして、自分達は食べない。
そんなことをしていれば体を壊すので、カートン家にいるニピ族達には、そんなことをしないように教育してきた。そのかいがあって、飼い主…もとい、主がいない時でも食事や便所に行くなど必要なことはするようになった。
しかし、フォーリもシャルブもそんなことをしない、古い生粋のニピ族だから、無理をしてしまう。
ベリー医師はこっそり笑って部屋を出た。
若様はこんな調子じゃ、セリナと別れることはないだろうな、とベリー医師は思った。
星河語
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