表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

233/248

セリナの予感 2

 こんばんは。更新が遅くなって申し訳ありません。パソコンが不調で遅くなっています。


 セリナはベリー医師から、若様の状態を聞くことができた。あまりにひどいことで、涙を堪えきれない。ベリー医師も一緒に泣いていた。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

「……先生。大丈夫ですか?」

 セリナは持っていた手巾を手渡した。

「ありがとう。すまないね、取り乱してしまって。」

 気分を落ち着かせてから、ベリー医師は切り出した。

「セリナ。覚悟して聞いて欲しい。話を聞かなくても不安だと思う。でも、現実を知ったところで、その不安が消えるわけでもない。むしろ、逆に大きくなることもある。それでも、若様に何があったか聞くか?」

 セリナは少し考えた。

「つまり、それだけ覚悟がいるってことは、最悪の状況だってことですよね?」

「…そうだ。君が考え得る限りの、最悪の状況を思い浮かべて欲しい。」

 考え得る限りの最悪の状況。セリナはため息をついた。

「…わたしの思うに、まず、過去の記憶を取り戻してしまったんですね。つまり、そのザムセーとかいう人が、無理矢理若様の記憶を思い出させた。……最悪っていうなら、さらに…現実にも…(おそ)わせたってことですか?」

 ベリー医師は静かに頷いた。セリナはなんてひどいことを、と言おうとして唇が震えていることに気がついた。ベリー医師も涙で両目が潤んでいる。

「私は若様が幼い時から治療に当たってきた。だから、それを聞いたとき、耳を疑った。怒りよりも先に、若様が壊れてしまうんじゃないかと心配した。なぜ、あんなに素直で純粋な子にそんな非道な事ができるのか、理解に苦しむ。

 だから、私も(すご)く胸が痛い。引き裂かれるかと思うほど胸が痛くて、久しぶりに泣いた。」

 声も出せずに泣くセリナの手を、ベリー医師が握ってくれた。

「悲しい時は泣くといい。でもね、セリナ、あんまり悲しむとお腹の赤ちゃんも悲しむよ。親を心配するんだ。だから、あんまり悲しんだらいけない。」

 セリナは(うなず)いた。

「ゆっくり呼吸してごらん。」

 セリナの手を握ったまま、脈を測っていたベリー医師はセリナに言った。自分が休まなくてはいけない時でも、お医者さんを始めたベリー医師がおかしくて、思わず小さく笑ってしまった。

「どうしたんだ、笑ったりして?」

「凄いなあって感心してしまったんです。先生はご自分も休まないといけないのに、わたしの診察を始めるから。」

 するとベリー医師も苦笑いした。

「本当はここの所、診察されるばかりで誰も診察していないから、落ち着かなくてね。医師は私にとって天職だから仕方ない。」

「天職ですか?」

「そうだね。医者以外はできない。それしかやってこなかったから。」

 あぁ、とセリナは思わず納得してしまう。

「確かにそうですね。…でも、みんなそうですよ。フォーリさんみたいになんでもできて、他に転職できそうな人ってそうはいませんよ。」

「…フォーリは若様の護衛以外、やるつもりはないと思うけど。」

 思わずセリナは笑った。

「そうでしょうね、きっと。」

「セリナ、君は覚悟している?若様と別れることを。」

 少しの間の後、ベリー医師が聞いた。

「……凄く悲しいけど、そうなるかのもしれないって、思ってました。だって、母さんが若様に言った言いつけだから。きっと、若様はそれを守ります。わたしを危険にさらしたと思っているでしょうから。二人の命を守るためなら、いつでも別れなさいって。」

 話している間にも涙が勝手に落ちていく。

「…でも、その前に若様に会いたい。この目で無事を確認したいんです。会いたくてたまらないんです。」

 しばらく、二人は何も言わなかった。

「セリナ。今は無理かもしれない。まだ、記憶を取り戻したばかりで、冷静に話ができる状況じゃないと思う。病もようやく治った所みたいだし。」

「……。」

「昨日だったか、シャルブでさえ若様に拒絶されて、シャルブは泣いたそうだ。」

「…シャルブが。きっと、凄く落ち込んでますね。」

 ニピ族は主に拒絶されたり、怒ったりされると本当に落ち込む。しょげてるという表現がふさわしいかもしれない。よく見ればフォーリも、ちょくちょく落ち込んでいたと思う。

「そうだろうね。本当なら、君の護衛をするようにとフォーリに言われてそうなっているはずなんだが、君がここにいるってことは、していないということになるからね。」

 それは…相当、効いたんだな、とセリナは思う。

「シャルブは若様と年齢が近い。だから、若様も見せたくないものもあるんだろう。若様だって年頃の普通の青年だ。悪夢を見た直後だったとはいえ、嫌だったんだろうと思う。」

 ベリー医師はセリナを見つめた。

「セリナ。だから、君なら尚更だ。愛している女性に、他の男に襲われたってどうやって言える?今までは悪夢の内容を覚えていなかったから、君とも一緒にいられた。

 でも、そんなことがあった直後に、一緒にいて欲しいと言える度胸は、私にもない。君との思い出もあるだろうから、それだけは汚したくないだろうし。」

 セリナは涙が流れるままにしていた。涙を拭うことさえ今はできなかった。

「無事かどうかその確認はしたいと思う。でも、君と会う勇気が出るかどうかは分からないよ。あまりにも傷が深いから。」

 セリナは頷いた。分かっている。それだけのことをされたのだから。なんてひどい人達。王位継承がかかっているからって、どうして人の人生をここまで踏みにじることができるのだろう。

「ただね、セリナ。若様は知ったそうだ。」

「…え?」

 涙声で聞き返した。

「君が若様の子を身ごもったことを。」

 セリナは衝撃(しょうげき)を受けた。どういう状況で知ったのだろう。後で落ち着いてから言おうと、モディーミマの屋敷に行く前は思っていた。でも、こうなってからはいつ、言えるのかそれが心配だったのだ。

「状況としては最悪の状況で知ってしまった。でも、そのことが若様をつなぎ止めたんだ。身近な人達との絆が、若様の心が壊れるのをなんとか止めたんだと思う。フォーリの声で目覚めたんだろうね。最初は抜け殻のようになっていたそうだから。その後で、君の話を聞いた。若様は泣いて喜んだそうだ。」

 セリナは号泣した。もう、我慢できなくて声を上げて泣いた。


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ