セリナの救出 2
ノエラのおかげで、セリナはフォーリ達の救出が間に合った。しかし、若様のことについて妙に勘も鋭く追及しようとして……。
ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。
意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。
転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)
「だめよ、むやみに走っては!運河に落ちるわ!」
女が誰かに注意している声がした。女がおそらくモディーミマの娘で、誰かはおそらくセリナだろう。さらに続く剣戟の音。フォーリは馬から跳躍すると、女性達の前に着地した。振り下ろされる剣を鉄扇ではじき返した。その瞬間に火花が散る。
後ろからはシャルブが攻めている。
「…ふぉ、フォーリさん!」
セリナの声が涙で湿った。
「遅くなった。待っていろ。すぐに片付ける。」
少しだけ振り返ると、モディーミマの娘がセリナを支えていた。一人抜け駆けしてきても、彼女が阻止するだろう。セリナを彼女に任せ、踏み出した。攻撃の舞である鳶の舞だ。あっという間に、モディーミマ一人になる。
さすがにモディーミマも呆然としていた。
その間にフォーリはセリナの前にしゃがんだ。
「フォーリさん、遅いじゃないですか、怖かったんだからぁ!」
セリナはおいおい泣き出した。
「…悪かった。」
やはり、できの悪い妹のようだ。思わず頭をぽんと撫でてやる。
「…もう、子供扱いしてぇ!…えーん、若様は無事ですかぁ?」
泣きながら聞いてくる。それにはすぐに答えられなかった。さすがに何といえばいいのか言葉が見つからない。それに、モディーミマにも言いたいことがあったが、セリナがいるうちは言えない。
「…とりあえず、ご無事だ。」
セリナは息を呑んだ。
「嘘よ!今の沈黙はなに!?」
セリナが興奮しだしたので、これは良くない。彼女は妊婦だ。子供に影響する。
「カートン家の先生方が治療されている。」
嘘ではない事実を伝えると、セリナは少し安心したようだった。
「…良かった。ひどく具合が悪そうで。」
セリナも少し具合が悪そうだ。緊張がずっと続いているのだから、当然だろう。
「セリナ、ゆっくり呼吸をしろ。」
セリナに深呼吸をさせる。しっかり呼吸できた所で気絶させた。モディーミマの娘が驚いている。
「妊婦が聞いたら良くない話をする。」
短い説明に彼女は納得したようだ。
「シャルブ、先にセリナをカートン家に連れて行け。絶対に落とすなよ。」
すると、モディーミマの娘が立ち上がった。
「うちの馬車を使ってください。」
「その必要はないかと。」
シャルブは向こう側を見つめた。馬車が走ってくる。すぐに近くまで来て止まった。カートン家の馬車だ。
「ようやく探しました。遅くなり申し訳ありません。」
御者席から降りてきたのは、ランゲル医師の護衛のミンスだ。
「ちょうど良かった。助かります。」
フォーリが頷くと、シャルブはセリナを抱えて馬車に乗り込んだ。馬車が元来た道を走っていく。
後にはモディーミマの親子と、気絶したモディーミマの配下達だけが残った。
「…モディーミマ。貴様は今すぐにでも殺したいが、我慢するとしよう。だが、許したわけではないから、覚えておけ。」
フォーリは殺気もあらわにモディーミマを睨みつけた。
「なぜだ?私はセルゲス公の御ためを思ってやっているだけだ。なぜ、そんなに怒りも殺意もあらわにする?」
本当に不思議そうで、おそらく自分が何をしたのか理解していないのだろうとフォーリは思った。
「貴様は何をしたのか、分かっていないようだな。貴様のせいで、若様は瀕死の重傷だ。お命だって危ない状態だ。」
フォーリの言葉にさすがにモディーミマが驚いたように、フォーリを見返した。
「…なんですって!?」
娘の方が慌てている。
「やはり、あれはよくないものだったんですね…。お父様、騙されたのですよ。そもそもあのお医者様は、どこか信用できませんでした。どうするんですか…!」
娘も何か事情を知っているらしい。
「まさか、そんなわけはない。だが…。」
モディーミマは言って黙り込んだ。フォーリは気絶しているモディーミマの配下から、服の帯を取り上げるとモディーミマを縛り上げた。娘は何も言わないで黙って見ている。モディーミマを馬車に乗せると、娘に手綱を取らせる。自分は馬に乗り、シャルブが乗ってきた馬も一緒に引いていく。
「どちらへ?」
「カートン家だ。とりあえず、そこで話を聞かせて貰う。」
フォーリは怒りをなんとか抑えて馬を走らせた。
星河語
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