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ザムセー・カートン 1

 フォーリはセリナが助けを求めて自分を呼んでいるような気がした。だが、今は先にモディーミマの屋敷に向かう方が先決だ。若様が無事でいることを願って馬を走らせる。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 フォーリは馬上ではっとした。セリナが助けを呼んでいる気がした。彼女は聞き分けの悪い妹のような存在だ。カートン家で話を聞いて、彼女が若様の子を身ごもっていることが分かった。それを聞いた時は、思わず額に手を当てて、声を出しながら長いため息をついてしまった。

 とうとうそうなったか、というのが感想だった。嬉しくないような嬉しいような、非常に言葉に表しにくい複雑な気持ちだ。

 若様はとてもお喜びになるだろう。しかし、その後の苦難の道を考えれば、それが本当に若様のためになるのかは分からない。

 とにかく、今はモディーミマの屋敷に一刻でも早く到達することが先決だ。カートン家の一行と共に走っている。カートン家の犯罪者を取り締まる秘密部隊と一緒に先に馬で走っていた。ランゲル医師達は後から馬車で来る。さすがに馬で夜中に乗り付けるわけにもいかず、それに馬車が必要な時に備えるためでもあった。

 カートン家の秘密部隊は優秀だ。ニピ族に訓練を受けているらしいし、隊長自身もニピ族らしかった。カートン家の犯罪と言えば、当然、医師が犯す犯罪となる。カートン家しか分からないものもあるらしく、国で裁けない者はカートン家が自分達で裁く。それが、彼らの掟だ。

 モディーミマの屋敷にはじきに着いた。秘密部隊の隊長が門番に夜中にやってきた理由を説明する。しばし、口論になったがやがて門が開かれた。主がいないのか、家令の判断のようだ。カートン家と夜中に揉めるのは良くないと判断したからだろう。

 一緒に中に入ると、フォーリは家令に詰め寄った。

「セルゲス公はどこにいらっしゃる?」

「……セルゲス公は…。」

「私はセルゲス公の護衛だ。」

 いないと否定しようとした家令に鉄扇を見せつける。すると、家令はぎょっとしたように身を震わせた。

「どこにいらっしゃる?」

「……。それは…。」

「素直に案内すれば、命まではとらない。」

 とりあえず、埒があかないのでフォーリが言うと、家令はようやく(うなず)いた。

「こちらです。」

 屋敷内に入る。中心となる建物が有り、その周りに主だった別の建物があるという構造になっているらしい。

 客間などのある棟は一歩入るなり、豪華に作られている。だが、それにふさわしくないほどの警備の兵がずらりと立ち並んでいる。

 フォーリはすぐに異変に気がついた。

(…これは、あの組織の兵士か?)

「お前達、下がれ。セルゲス公の護衛じゃ。通さぬか。」

 しかし、兵士達は動こうとしない。家令はかなり高齢だ。先代の頃から仕えているのだろう。

「お前達…!」

 家令は声を張り上げて、杖をどん、と床に叩きつけて大きな音をたてた。それでも、誰一人動かない。家令がさらに大声を出そうとしているので、フォーリは止めた。

「お待ちを。様子が変です。この者達は、以前からこの屋敷に仕えている者達ですか?」

 フォーリはあの謎の組織の者達だと思っていた。

「ええ、そうです。なぜ、今日はみな、言うことを聞かんのか。おかしいのう。」

 フォーリは驚愕(きょうがく)した。目つきといい、あの謎の組織の構成員となんら変わらない。

「これは。ランゲル先生を待ちましょう。」

 カートン家の秘密部隊の隊長が言った。

「なぜですか?」

「おそらく、催眠術などで洗脳状態にあるのだと思います。」

「…それは、どういうことですか?」

「私達が来たのは、ある人間を捕らえるため。ただの内通者ではありません。」

「ランゲル先生の叔父君のようでしたが。」

 秘密部隊の隊長は頷いた。

「薬学において天才的である上、催眠術などにも一歩先んじた研究をし、カートン家でも多大な功績を残しています。非常に優秀ですが、良い薬を作るにはより多く、早い段階から人での試験を繰り返すべきだと主張していまして、少し危険な思想を持ち合わせている方です。」

 フォーリはその説明を聞いて、ベリー医師もそうしたら、その洗脳の可能性に気がついていたはずだな、と思った。だが、確証がなければ指摘することはできないのだろう。

「……これが、少し危険ですか?」

 そういえば、とフォーリは思い出した。コニュータにいた時、ランゲル医師はベリー医師と、どうやったら手を失っても本当に死ぬまで戦わせられるのか、と疑問に思っていた。もしかすれば、二人とも本当は可能性に気がついていたのでは?ランゲル医師の叔父が関わっていると。

 フォーリは待つかどうか考えた。洗脳されているのなら、殺してしまうのは可哀想ではある。しかし、若様のことが非常に気がかりだった。セリナのことも気になる。


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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