体調の異変 10
遅くなって申し訳ありません。
この話、本当は「体調の異変 9」の後に続きで入れようと思ったのですが、いきなり千字近く増えて話ぶっとんでしまうため、10を作ることにしました。ちょっと短いので、もう一話、投稿いたします。
若様が目を覚ました。
「…セリナ?」
若様はぼんやりとセリナを見つめていたが、やがてはっとする。なんとなく髭が生えているのがおかしいが、笑うのは我慢した。以前、コニュータにいた頃、若様が髭を剃っているのを偶然目にした。思わず笑ってしまい、若様は珍しく怒ってすねた。しばらく口をきいてくれなかったので、これはまずかったと思い、こっそり、ヴァドサ隊長に相談してみた。
すると、彼は教えてくれたのだ。
「セリナ、それはまずかったな。それは若様の男性としての心を傷つける。若様はあのご容姿だから、女性のように見られ、そのような態度をとられることが多い。だが、男として生まれた以上、そういう生理現象は必ず起こる。それを否定するようなものだ。」
「そんなつもりじゃなかったのに。」
そういうことがあったので、後で若様のご機嫌を直すのに苦労した。だから、同じ失敗をしないようにしている。
「セリナ、また、泣いているの?大丈夫?先生を呼んでこようか?」
心配して言ってくれる。
「ううん。違うの、幸せな夢を見たの。」
セリナは聞いてみようと思った。
「ねえ、若様は夢をみた?」
「…夢?」
若様は悪夢を見ることが多い。少し沈黙があったので、セリナは慌てた。
「覚えていないならいいの。ただ、聞いてみただけ…。」
「夢っていうか…。」
若様は言葉を選んでいるようだ。
「声が聞こえた。」
「…え?」
セリナは心臓がドクリと跳ねるのを感じた。
「まだ、幼い子供の声で、今から行くから待っててねって。そう聞こえた。なんだか、無視できなくて、待っているよって答えた。」
「!」
思わず鳥肌が立った。
「それがどうかした?」
「ううん。もし、話せる時が来たら、その時に教えてあげる。」
「本当に?でも、その時までは秘密なの?」
「そうねえ、そうなるわね。」
あまり喋れば若様に勘づかれる。でも、おそらくこういうことには鈍感だから、大丈夫だろう。一時の幸せな時間をセリナは味わった。
星河語
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