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体調の異変 5

 グイニスはセリナを待っている間、ハオサンセに今までの礼を言う。さらに、これからどうするかも話す。

 部屋で待っている間、グイニスはハオサンセに世話になった礼を言った。

 セリナが言い張ったから折れたが、本当は彼女を侍女として紹介したくなかった。隠したっていつかは、バレるものだ。大体、なんとなく雰囲気でそういうのは分かってしまうだろう。しかも、伊達に大貴族の当主をしているわけではないのだ。そういうことには、鼻がきく人が多い。

「それで、殿下。これから、どうなさるのですか?よろしければ、当家にまたいらしても構わないのですが。」

「いや、遠慮しよう。刺客は私の動きを確かめている。カートン家にも見張りを立てているほどだから、私がハオサンセの屋敷にいたことは、もう分かったはず。私がまた、あなたの屋敷に戻ったら、あなた方に迷惑をかけるだろう。」

「ですが、我々も警備を万全に致します。安全の心配なら…。」

 ハオサンセの言葉をグイニスは手で(さえぎ)った。

「そう言ってくれるのはありがたい。でも、考えてみてくれ。カートン家がニピ族と契約しているのは、国中の者が知っている。そのカートン家を出し抜き、さらに、私の護衛のニピ族も出し抜こうとしているのだ。相当な手練れのくせ者だと思わないか?」

「……それは。」

「大貴族だからといって油断はできない。これからおそらく、この謎の者達がこの国の脅威となるだろう。どういう者達かはまだ分からないが、心にとめておいて欲しい。」

 ハオサンセは(うなず)いた。

「王太子殿下はご存じで?」

「謎の者達がいることはご存じだ。」

「そうしましたら、しばらくカートン家にいらっしゃるということですか?」

 ハオサンセは心配そうに尋ねる。

「彼女の体調次第だ。きっと、慣れないことをしたから、疲れがたまっているんだろう。先生方のご判断次第ということだ。」

「もし、医者の許可が出たら、どちらへ行かれるので?」

 ハオサンセは、何がなんでも次の行き先を聞いておきたいらしい。確かに貴族同士のつながりで、その方が良い場合もある。

「…そうだな。セリナが心配だから、カートン家から近いところにしようと思う。」

「ですが、近すぎれば敵も把握しやすくなります。」

 グイニスは苦笑した。

「そうだな。だから、ちょうどいい距離といったら、モディーミマあたりかなと思っている。」

「…モディーミマですか。確かに距離的にはちょうどいいかと。カートン家から遠すぎず、近すぎもしないので。」

 ハオサンセの言葉に釈然(しゃくぜん)としないものを感じたので、グイニスは聞いてみる。

「何か問題があるか?」

「…いえ。大丈夫かと思います。セルゲス公に何かするというような男ではありません。ただ、殿下のお気持ちを理解できるかどうか。強く王位に就かれるべきだと主張しておりますから。」

 グイニスは頷いた。内心、もっと別の問題があるのかと心配したが、そうではなかったので少しほっとした。

「それについては、知っている。だから、話をしようと思っている。」

「理解できればいいのですが。なんせ、意固地なところがありますから。時々、私も辟易(へきえき)とします。」

「人にはそれぞれ考えがあるから、仕方ないことだ。ただ、どこかで折れて貰わないと、内戦だけは避けなければならないのだから。そのためにも、必ずいつかは話をしなければならない相手に違いない。」

 グイニスの言葉にハオサンセが苦笑した。

「それは、確かに一理ありますな。もし、モディーミマの考えが変われば、情勢も大きく変わってきましょう。なんせ、武闘派の中の武闘派を仕切っておりますから。」

 ちょうど話が終わったところで、ベリー医師が入ってきた。様子を(うかが)っていたに違いない。

「失礼します。若様。セリナと会えます。」

 グイニスはセリナと会えるので、かなりほっとした。本当に苦しそうにしていたから、心配した。自分のせいで相当負担をかけていたのだろう。

 立ち上がってハオサンセに挨拶をする。

「本当に世話になった。我がままばかりを言って申し訳ない。奥方にも世話になったと、くれぐれも礼を伝えて欲しい。きちんと挨拶にも行けず申し訳ない。」

「いいえ、そう言って頂けるだけで、十分にお気持ちは伝わります。難しい状況なのですから、どうかお気になさらず。私の方こそいろんな話ができて、楽しい時を過ごさせて頂きました。」

 さすがに大貴族だった。いや、ハオサンセが器の大きい人間なのだろう。ベリー医師はハオサンセに話があるので、待っていて欲しいと伝え、外に出ると言った。

「…若様。セリナはしばらく療養が必要です。無理は禁物ですから。」

 そう言われると心配になった。

「大丈夫なのか?私が無理をさせてしまったから。貴族の屋敷に隠れようというのが間違いだっただろうか。」

 思わずそう言うと、ベリー医師は首をふった。

「それについては、いいご判断だったかと。ハオサンセの屋敷にいたからこそ、今まで何事もなく無事にいられたのです。」

「…そうか。みんなは無事か?」

「さあ。私もしばらくここにいましたから、会っていません。でも、たぶん元気でしょう。今頃、内通者は誰なのか調べている所でしょう。」

 ベリー医師は面白い。普通は多少なりとも取り繕うが、彼はそういったことをしない。だから、平気でさあ、という返事が出て来る。子供の頃からの付き合いだ。子供の頃はちょっと変わったお兄さんのお医者さん、という印象だった。


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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