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内通者 1

 フォーリとシークは、内通者を炙り出すために行動を起こす。

 その頃、フォーリ達は裏切り者を探していた。隠れ家という隠れ家に見張りがついている。その上、カートン家も全てその周辺に見張りがあった。

 そのため、若様とセリナの痕跡(こんせき)は一切途絶えてしまった。ヴァドサ・シークには上手く訓練しすぎだ、と苦情を言われた。そう、フォーリが徹底的に若様とセリナを(きた)えたため、人にあまり見られずに上手く姿を隠してしまったのだ。

 内心、困ったなと思ったが、逆に考えれば今は裏切り者を探すいい機会だと捉えた。このまま若様とセリナを探し出しても、元の木阿弥だ。また、内通されて教えられてしまう。

 完全に信頼できるのは、シャルブだけだ。シャルブはフォーリにいくつか、気になることを伝えてきた。誰か、元親衛隊の中に裏切り者がいる。疑わしい人間は幾人かいる。だが、元隊長のシークは違うだろう。フォーリが捕まったとき、シークも同じように()められたのだから。

 そこで、フォーリとシャルブは罠をしかけることにした。これで、動いた者が内通者ということになる。


 シャルブは出て行ってから、戻ってきた。そして、深刻な表情で告げる。一時、空き家に潜んでいたらしいが、今はいなくなっていること、そして、そこで戦闘があったらしく、血のついた手巾が落ちていたということだった。

「これです。」

 シャルブは若様の血のついた手巾を広げて見せた。若様の頭文字を刺繍(ししゅう)してあるため、誰の物かすぐに分かる。さらに、若様の美しい朱色がかった赤い夕日色の髪の毛も二本拾ってきていたので、間違いない。

 みんな、顔を見合わせた。

「例の男か?」

「そこまでは分かりません。あの男だけではなく、様々な刺客がいます。もしかしたら、そういった者に(おそ)われたのかもしれません。」

「カートン家に連絡は?」

「来ていないそうです。ベリー先生はそれで、来たらすぐに分かるようにずっとサプリュの本家の方にいるそうです。そこにいれば、サプリュ中の診療所からの連絡が入るそうですから。その空き家に至るまでは、カートン家に出入りがあったようですが、それ以後の足取りは全くつかめません。」

「それで、カートン家の方で見張りの対策は取られたのか?」

「一応は。そのせいで、若様達が連絡を取りづらくなっていますから。遊撃隊のような組を作り、交代で見回りに回らせるそうです。」

「……深手でなければいいのだが。」

 シークが(つぶや)いた。

「おそらく、違うでしょう。深手であれば遠くへは行けません。それに、カートン家に必ずどこかで引っかかるはずです。カートン家は診療所だけではなく、関連する商いもしていますから、その連絡網は広大です。仮に若様でなくセリナが怪我をしたのだとしても、同じでしょう。」

 シャルブが話している間、フォーリはじっと難しい顔で考え込んでいる。シークは気になり聞いてみた。

「どうした、フォーリ?」

「…いや、ただの推測に過ぎないのだが、あの謎の組織が遺体まで全て回収していくのは、カートン家に回収されたくないから、ということではないのかと思っただけだ。

 つまり、カートン家に回収されてしまえば、なんらかの秘密が明らかになってしまう可能性がある。だから、カートン家は避けるのではないのか、そして、逆にカートン家は警戒する対象として、見張りを立てるのではないか。だから、できるだけ動きも把握しておきたいのではないか。そう、思えてな。」

「なるほど。確かに一理ある。だから、カートン家の周りに見張りをつけた。若様達を見つけるだけにとどまらず、そういう目的があるとすれば、大規模にサプリュ中にそんな事をした理由も説明がつく。」

 シークは納得した。

「今度戦闘があったら、謎の戦闘員の一人か二人をどうにかして、生け捕りにしたらいいだろう。」

 フォーリは言った。フォーリだからあれを生け捕りにする、などと言えるのだとシークは思った。

「それこそ、カートン家に協力して(もら)い、眠り薬かなんかが必要なのではないか?」

「…確かにその方が確実だ。そして、そのままカートン家に運んで調べて貰えばいい。たとえ、遺体でも何らかの情報を得られるだろう。」

 カートン家は身元不明の遺体を回収し、解剖して良い許可を得ている。だから、人体の構造をくまなく知っている。嫌いな人はこういうこともあってカートン家を嫌うのだ。

「結局、成果はないから、今までどおり地道に探していくしかない、ということだな。」

 フォーリは頷いた。ただ、実際の所それは難しかった。シーク達はいかにも元軍人で、そういった人間が何かしら人捜しでもしていれば、すぐにばれてしまう。逆にそれを利用されて、若様達を見つけられてしまう可能性もあるのだ。

「ただ、あまり、大々的にすれば…。」

「分かっている、フォーリ。我々はいかにも元軍人。積極的に聞き込みはできまいよ。幸いなことに容姿の目立つ二人だ。要所、要所で目を光らせつつ、人々の話に聞き耳をたてるしかない。」

 シークはさすがによく分かっている。

「確認したいことがある。後で二人で話せるか?」

 シークも内通者の存在を疑っている。だから、二人でと言っているわけだ。フォーリは頷いた。

 とりあえず、今日の話し合いは解散となり、組に分かれて街に出、若様達の行方を追うことになった。


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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