サプリュで 2
王宮を出ようとしたところで、頭の固い兵士が邪魔をして……。実はすべて罠だった!?
ただ、王族を護衛するニピ族には、特別な手形が渡されている。フォーリもシャルブも持っている。それで、入るときも問題にならず入れた。出るときもそれで出られる。
「通行証を見せろ。」
検問の国王軍の兵士が命じる。シャルブが手形を見せた。
「…これは?通行証ではないぞ。」
なんということか新人だったらしく、ニピ族の手形を知らないらしい。
「これはニピ族の手形だ。通してやればいい。」
もう一人に言われ、通そうとするが、首を捻った。
「でも、誰の護衛か確認しなくてはならなかったはずだが。いいのか?」
「王族のニピ族の護衛にいちいち確認したりしない。一応そんな規則になっているが、ニピ族に勝てやしないし慣例上通すことになっている。今までそれで、問題になったこともない。早くお通ししろ。」
「お通しって…。」
新人の兵士は、マントを頭から目深に被った四人組を疑わしそうに眺めた。
「だが、手形を偽装されたりすることはないのか?本当にニピ族だとどうして分かる?」
「お前、それを言い出せば、通行証を持っている奴を全員を疑うことになる。通行証が全て本物かどうか、確認しなくてはならなくなるぞ。ニピ族が護衛に付いているということは、今、お待たせしているのは王族のどなたかということだ。」
もう一人の同僚の方がよく分かっている。だが、押し問答は面倒なので、シャルブは鉄扇を出して見せた。
「この通りだ。偽装などしていない。通してくれ。」
「…本当に鉄扇なのか?仮にそうだとして、カートン家のニピ族ではないとどうして言えるんだ?」
もう一人の同僚はさすがに頭にきたらしく、ため息をついた。
「もういい、お前は下がってろ。」
同僚を後ろに押しのけ、自分が通そうとした。
「お待たせ致しました。申し訳ありません。」
「そういうわけにはいかないだろう。疑わしいのに、なぜ、通すんだ?王族の方なら姿を隠さなくてもいいはずだ。」
さっきの兵士が道を塞いだ。
「そんな訳ないだろうが。とにかく、さがってろ…!」
もう一人は通そうとする。あまり、事を荒立てたくないが、仕方なくシャルブが鉄扇でその問題の兵士を気絶させようとした時、
「何事だ…!何を騒いでいる!」
間の悪いことに、彼らの上司がやってきてしまった。
「それが、王族の護衛をしているニピ族の手形を持っているというのですが、本当にニピ族の手形なのか分からず…。」
「いえ、間違いありません。それなのに、こいつは通そうとせず、かなり長い間お待たせしてしまっています。めったにこのような所にお出ましにならないので、手形が分からなかったらしく、こいつはこのような世迷い言を申しておりまして。」
あまり目立たないようにと、普段とは違う所から出入りしようとしたのが、徒になったらしい。二人の部下の報告に上司は、ふむ、と言うとシャルブにもう一度手形を見せるように頼んだ。一目見るなり、息を呑んだ。
「馬鹿者…!さっさとお通しせんか!」
「で、では…。」
「本物だ…!」
上司は部下を叱りつけた。
「大変、申し訳ありませんでした、セルゲス公…!」
セリナも含め、四人全員がはっと息を呑んだ。上司の顔が不気味ににやりと笑う。手形で護衛する対象が誰なのか分かるわけではない。嵌められたのだ。セルゲス公という名に、その場にいた人々が振り返った。多くは王宮内の使用人達だ。内部の事情はある程度分かっている。
「セルゲス公?」
「どこに?」
たちまち、小声の噂のさざ波が立つ。
フォーリがセリナの腕をつかみ、若様の背中を守るようにして押した。シャルブが素早く前方の道を確保する。二人の兵士は、なぜか行くのを阻止しようとしたのだ。シャルブが素早く二人を気絶させる。つまり、あの上司も含めて三人は仲間だった。国王軍の兵士ならそんなことはしない。
大急ぎで門をくぐる。必死で走った。あの男達はおそらく、ニピ族らしい男がまとめている謎の組織の一団だ。
「セルゲス公を名乗る怪しげな四人組だ、すぐに追捕せよ…!」
嫌な命令を出している。
「あの男は…?」
「例の男です。間違いありません。兜を被り、頬に綿を詰め、顔にクルミか何かの汁を塗って黒くしていますが、間違いないでしょう。」
若様の疑問にフォーリが走りながら答える。シャルブがヴァドサ隊長達に笛を吹いて、緊急事態を伝える。
「ばらけましょう。落ち合う場所は、決めておいた通り、二番です。」
若様は頷いた。フォーリが一人、別の方向に走っていく。途中でヴァドサ隊長達が合流し、フォーリの指示に従って四人組をそれぞれ作る。セリナは若様、シャルブと走っていたがベイルが合流した。
星河語
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