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二人を探すタルナス 2

「殿下…。しかし。陛下のご意向はどうなるので?」

 タルナスは藍色部隊の隊長を振り返った。相手が一瞬たじろぐ。

「父上の意向ではなく、私の意向を気にするべきではないのか?父上は病で私に全てを託されたのだ。その意味が分からないわけではあるまい?」

「申し訳ありませんでした、殿下。…では、私は責任を持ってセルゲス公をお探し致します。」

「いらぬ。お前達には別のことを命じる。父上と母上をしっかりお守りせよ。父上と母上は国王と王妃でありながら、ニピ族の護衛がついておらぬ。そのため、お前達が代わりにしっかり守るのだ。」

「…親衛隊がおりますが?」

 藍色部隊は親衛隊の中でも、選りすぐりの特別な任務を行う者達である。その自負が暗にそのことを伝える。

「分かっておらぬな。お前達は私の信を失ったのだ。お前はまだ、委譲された私にではなく、父上の意向を伺おうとしている。私の命ではなく父上の命を聞くだろう。私に権威がうつったのに、それを認めようとしていない。」

 隊長ははっとして、その場に平伏した。セルゲス公は優しい王子だった。多少、無礼な行為があってもとがめ立てしなかった。だが、目の前の王太子にはそんな甘さは通用しない。ビリビリとした権威者が(まと)う空気を漂わせ、誤った一言と行動で命を失うという緊張感を漂わせている。

「申し訳ございません。私が至らぬばかりに、殿下のご気分を害してしまいました。」

「良い。面を上げよ。父上と母上をお守りし、何かあったら全て知らせるのだ。どういう意味かは分かるな?」

「はっ。承知致しました。」

 藍色部隊の隊長は確信した。この王太子はすでに、父のボルピス王を凌駕(りょうが)している。そして、ボルピス王の危惧はただの杞憂(きゆう)であっただろう。あの優しい王子がこの従兄を追い落とせる訳がない。最初からそういう気が無い。黙って静かにセルゲス公の位を与えて暮らさせてやっていれば、こうはならなかっただろうに。

 両親の行動が、この王太子の眠れる才能を引き出したのだ。

 そんなことを考えながら、藍色部隊の隊長は部屋を辞した。

 藍色部隊の隊長が行ってしまってから、タルナスは考え込んだ。

「グイニス、フォーリ、二人とも無事なんだな?」

 一人で窓辺に立って、遠くを眺めながら答えのない質問をする。カートン家が関わっているなら、助かるだろう。

 それにしても、カートン家はある意味、自由な人達だと思う。誰がカートン家が、処刑するはずの人達を助けると思うだろうか。王に対する反抗であり、不敬罪で処断されてなんらおかしくないのに、そういうことを平気でやってのける。恐れを知らない不遜(ふそん)な一門だと、しばらく前まで言われていたのをすっかり忘れていた。確かにこれでは、不遜だと言われて仕方ない。その不遜だという理由が明らかでなかったのも、こういうことであるなら、公にできないから納得できた。

 タルナスはポウトを呼んだ。

「ポウト、二人は生きていると思うか?」

 ポウトは少し考えてから答えを口にした。

「おそらくは、生きているかと思います。カートン家ならば、その可能性は高いかと。」

 ポウトの答えにタルナスは(うなず)いた。

「私もそう思う。だから、ポウト、頼みがある。ニピ族のつてを使って、グイニスとフォーリの行方を捜してくれ。藍色部隊が探すとか言っていたが、断った。彼らは信用できない。母上に報告されそうでな。」

「承知致しました。少し、王宮を離れなくてはなりませんが、よろしいでしょうか。」

 ポウトの申し出をタルナスは快諾した。ポウトがほかの交代の護衛を呼んだ。プダスという。

「とにかく、母上やほかの者らが手を回す前に探し出さなければ。」

 タルナスは口で言うほど焦ってはいなかったが、ゆっくりしている場合でもない。ポウトはしっかり主の心情を理解して、退室した。まず、行くべき所は分かっている。口では王宮を離れると言ったが、まだ、出ない。宮廷医師団長の部屋に行ったのだった。カートン家がしきっているのだから。


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