二人を探すタルナス 1
タルナスは父のボルピスが病で倒れ、一時意識を失った時、さすがに少し動揺した。卒中で倒れたというが、このまま引き継ぎをされずに死なれるのは困ると思ったのだ。とりあえず、グイニスが戻ってくるまでの間、繋ぎで王位に就くとしても、グイニスに伝えなくてはならないことも聞けないままになるのは困る。
それに、やはり不仲ではあっても、父親は父親だった。だから、少し気の毒に思ったのだ。早く目覚めて欲しかった。
だが、父が一時的に目覚めたとき、医師も母も自分も呼ばず、ただ、親衛隊の中の藍色部隊の隊長と書記官達だけを呼び、グイニスとフォーリに死を与える勅旨を作っていたことが分かり、怒りに燃えた。
ボルピスは一ヶ月ほど意識を失っていたが、奇跡的に意識を取り戻したのだ。
しかし、後になって考えてみれば、少しおかしな所もある。なぜなら、藍色部隊の隊長も書記官も言葉を濁してはっきりしない所もあった。その上、その勅旨は本当にその時に作ったのかも、怪しかった。そもそも、医師がその場にいなかった、というのが一番解せない。そうは言っても、実際にその謎の勅旨が使われたのは事実だった。
だが、タルナスは怒りを隠し、今のうちに引き継げる事は引き継いで貰うことにした。息子が素直に王位に就くための準備を進めることに気分を良くしたボルピスは、タルナスに王位以外の全てを譲った。
そして、藍色部隊の権限も全てタルナスの元に移ったのである。一時的にクグン家が預かっていた藍色部隊であるが、母のカルーラも息子に権限があると分かってそれなりに上機嫌だった。
タルナスはこうして、父からも母からも必要なものを譲り受けた。ここからが本番である。
さっそく、グイニスとフォーリの件について調べ始めた。だが、二人の行方は分からない。ようやく戻ってきた藍色部隊の隊長を捕まえると、呼び出した。
王以外には答えないとか言っていたが、王太子のタルナスに全てが委譲されたと知ると、いきさつを話した。
フォーリはパルージャ二の村で毒を賜り、死亡。グイニスはフォーリの遺体を抱えて痛哭の涙を流していたが、悲しみのあまり具合が悪くなり、眠っている間に出発した。フォーリの遺体は村に埋葬して貰うことにし、屋敷の管理をしてきた村人の家にフォーリの遺体を預けて、その晩のうちに村を出立した。
グイニスはティールまで連行された。ティール宮の一室に監禁された後、埋葬の準備が整ってから、毒を賜った。埋葬の準備には一ヶ月以上かかっている。王族の埋葬であるし、王子である上に王族中で最高位の位を持っている。ないがしろにはできなかった。
グイニス担当のカートン家の医師が、こちらが管理していた毒は効能が落ちていると指摘。そのため、グイニスにはカートン家の医師が新しく毒薬を作り、その毒薬を賜ったという。そして、グイニスは眠るように息を引き取った。側にはカートン家の医師と藍色部隊の隊長しかいなかった。ずっとグイニスを護衛してきた親衛隊は、ティールで交代させた上、グイニスが毒を賜るまで全員を牢に監禁していたという。特に隊長と副隊長は別々の独房に監禁した。
「とても穏やかな死に顔でした。まだ、生きているのではないかと思うほどで、眠っているようにしか見えず、何度も脈を確認し、部下の数人にも確認させました。」
そして、棺に納め霊廟に安置した。
「しばらく、担当をしていたのでセルゲス公とゆっくりお別れしたい、というカートン家の医師のため、その晩は誰も見張りをつけませんでした。」
ところが、次の日、カートン家の医師と棺に納めたはずのグイニスの遺体は消え去っていた。すぐさま、カートン家に人をやったが、当然そんなことはしていないと言い張り、のらりくらりと躱されて、探すことができない。
すぐさま、パルージャ二の村にも人をやり、フォーリの遺体を探させたが、案の定なかったのである。これが藍色部隊の隊長の説明だった。
内心、タルナスはグイニス担当のカートン家の医師である、ベリー医師に喝采を送っていた。命令を遂行できなかったことを謝罪する藍色部隊の隊長の手前、笑うことは我慢した。
「何もそなたが責任を感じる必要もないだろう。そなたは確かに毒を飲ませたのだ。だが、飲んだのに生きた。それだけのことだ。」
タルナスの言い分に相手が目を丸くした。
「…しかし、それでは…!」
「カートン家はニピ族との契約がある。それをないがしろにはできまい。フォーリは生粋のニピ族。仕方あるまい。確かに二人とも死んだのだろう?」
「それは、確かに。脈はありませんでした。」
藍色部隊の隊長は頷いた。フォーリの時も脈は確認していた。筋肉が弛緩したため、排泄物が出てしまっているのだって臭いで分かっていた。死後硬直までは確認しなかったが、確かに死んだ時の状況だった。ただ、セルゲス公の時は分からない。本当に綺麗だったのだ。まだ、二十歳前だとはいえ少年ではなく、乙女が眠っているように見えた。脈を確認させた部下達が、柔らかな美貌に気圧されていたほどである。
「確認していたのなら、それでいい。カートン家の医術で生き返ったのだろう。」




